斗栱・蟇股・木鼻のお話-2
 

 天平時代の蟇股は、まだ建築の構造物そのものでした。


     扠 首(法隆寺) 

 
      蟇 股(法隆寺) 

 
       蟇 股(唐招提寺)
 板蟇股の上に斗束を乗せた珍しいもの
です。


       蟇 股(法隆寺) 


       蟇 股(東大寺) 


         蟇 股(法隆寺) 

 
       蟇 股(唐招提寺) 

 以上が天平時代の板蟇股ですが平安前期の遺例はありません。


         蟇 股(鳳凰堂) 


       蟇 股(法隆寺)

 上図の鳳凰堂、法隆寺の蟇股は平安時代後期の作品です

 これからは鎌倉時代以降の板蟇股です。    


        蟇 股(法隆寺) 


       蟇 股(東大寺) 


       蟇 股(東大寺)


       蟇 股(東大寺)


     蟇 股(元興寺) 


      蟇 股(鶴林寺)


     蟇 股(般若寺) 


      蟇 股(室生寺) 


        蟇 股(豊楽寺) 


      蟇 股(朝光寺)

 和様の蟇股の上に実肘木が乗っております。


    蟇 股(一乗寺)


      蟇 股(円成寺)  

 「一乗寺」の蟇股は平安後期作で2材が結合されております。これ以外は鎌倉時代以
降の作品です。


      蟇 股(金剛三昧院) 


      蟇 股(十輪院) 


       蟇 股(慈眼院)


        蟇股(大報恩寺) 

 唐草などの透かし彫りとなっております。


   蟇 股(西明寺)


   蟇 股(西明寺)


  蟇 股(西明寺・向拝)

  「西明寺」の蟇股は時代の変遷が見られる貴重なものです。左から右に時代は進みま
す。


     蟇 股(明通寺)  


    蟇 股(明通寺・向拝)  

  先述の「西明寺」、「明通寺」、次の「法隆寺聖霊院」でも言えることですが参詣者がま
ず最初に目に触れる向拝の蟇股は大変装飾性の強いものを持ってきているようであり
ます。


     蟇 股(高山寺)  


       蟇 股(高山寺)

 「高山寺」の蟇股は室内、室外から眺められる珍しいものです。 


     蟇 股(長寿寺) 


       蟇 股(石手寺)

  「長寿寺」の蟇股は鳥が鼠の被害を受けております。「石手寺」には文様の変わった蟇
股が数多くありました。


   蟇 股(法隆寺・聖霊院向拝) 


       蟇 股(常楽寺)


       蟇 股(本山寺)


       蟇 股(太山寺) 


       蟇 股(浄瑠璃寺) 


      蟇 股(霊山寺) 


       蟇 股(長保寺)


        蟇 股(醍醐寺)  


     蟇 股(金剛峯寺) 


          蟇 股(仁和寺)


     蟇 股(瑞巌寺)   


    蟇 股(三十三間堂)  海馬


      蟇 股(長弓寺) 


       蟇 股(浄土寺)


       蟇 股(観音寺)  


        蟇 股(金峯山寺) 


      蟇 股(孝恩寺)   


      蟇 股(明王院)   


       蟇 股(仁和寺)  


       蟇 股(東大寺)  


      蟇 股(太山寺) 

 


     蟇 股(宝厳寺) 

   蟇股の外側には尾長鳥などがおり華
 やかな文様となっております。


      唐 門(宝厳寺)

  「宝厳寺(ほうごんじ)」は琵琶湖に浮かぶ竹生島(ちくぶしま)にあり西国第三十番札
所です。長浜港から30分の船旅でした。竹生島を見て驚きましたのは「かわう」の数の
多いこととかわうの糞の被害で多くの樹木が枯れていることでした。
 「唐門」は国宝指定ですが上部のどっしりとした豪華さに比べ足もとが少し弱いよう
に感じました。桃山時代作だけあって刻まれた彫刻は見ごたえがあるものばかりです
がただ、千社札の多さには少しがっかりしました。信仰とはいえ何とかならないもの
ですかね。


  蟇 股(大崎八幡神社) 虎に竹 


   蟇 股(大崎八幡神社) 獅子に牡丹

  仙台市にある「大崎八幡神社」は一見に値しますのでどうぞ。


     蟇 股(東照宮)  

 東照宮の「五重塔」の初層の蟇股には十二
支の動物が彫刻されています。塔は三間四
方ですから
一面に3個、四面で合計12個の
蟇股となり配置は十二支の方位に合わせて
あります。余談ですが十二神将像でも十二
支の標識を付けることがあります。


       蟇 股(三井寺)


      蟇 股(東照宮)  

  日本各地で蟇股の制作者に左甚五郎がよくでてまいります。「三井寺の龍の彫刻」、
「東照宮の眠猫」は左甚五郎作として著名です。 

  近世になると蟇股の彫刻の題材に説話的ものが出てまいります。そこで東大寺の
二月堂の手水舎のものを挙げておきました。
彫刻は枠(輪郭)からはみ出たり枠(輪郭)
そのものが取り払われたりしてまいります。


     蟇 股(東大寺) 


     蟇 股(東大寺) 

 東大寺の初代別当「良弁僧正」は近江の
国で生まれ2歳の時鷲にさらわれる悲劇
のストーリーです。鷲が2歳の良弁を足
で掴み連れさらう場面です。

 さらわれるという悲劇から33年の月
日が流れたある日、東大寺で無事に親
子の対面が出来たというハッピーな結
末の場面が描かれております。


       蟇 股(閑谷学校)

 岡山の「閑谷学校(しずたにがっこう)」は
国宝指定で屋根の形状などが一風変わって
おり興味深い建物ですが私は訪れてはおり
ません。写真は家内が撮影してきたもので
す。蟇股は白漆喰塗籠(しろしっくいぬり
ごめ)で制作されており風格ある珍しいも
のです。


     蟇 股(興教寺) 

 中国で新しく建築された仏堂で見
つけた「唐風の蟇股」です。

 


     
二重虹梁蟇股(法隆寺) 


      
二重虹梁蟇股(法隆寺)  

  天平時代、切妻造に用いられました「二重虹梁蟇股」です。二重虹梁蟇股とは大虹梁
と上の小虹梁に蟇股が三つ乗っているもので大虹梁の半分の長さが小虹梁の長さであ
ります。


     
二重虹梁蟇股(東大寺)  


 
    二重虹梁蟇股(元興寺) 

 「東大寺」の二重虹梁蟇股は天平後期の造立です。 
 「元興寺禅室」は鎌倉時代の改変ですが創建当初の天平時代に流行した二重虹梁蟇股
式が採用されたのでしょう。 
 

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