2000年は辰年

今年の干支は辰即ち竜で,竜だけが十二支の中で唯一架空の聖獣であります。
 
20世紀最大の発見であった高松塚古墳で、四方の壁に描かれていたのは、東に青竜、
南に朱雀、西に白虎、北に玄武で、中国の陰陽五行説の四神であります。天平時代創建
の薬師寺の本尊薬師如来像の台座には金銅製の見事な青竜がありますが、少し見辛いの
が残念です。


 中国では聖獣である竜は、天に昇りつめていくので天子に結びつけ、皇帝(天子=竜王)の象徴とされるのは当然であります。ですから、竜の紋章は皇帝以外は用いること
が出来ませんでした。しかし、わが国にはない思想で、皇帝即如来という考えがありま
したので、寺院は仏法興隆の本尊として竜を用いることが出来ました。

 韓国は中国とは陸続きですから、中国皇帝の象徴たる竜を使うことを控え、もっぱら
鳳凰を用いました。ところが、わが国では寺院で用いることが出来たのになぜか余り使
用されませんでした。しかし、法隆寺の玉虫厨子には、白鳳時代の貴重な絵画の一つで
ある壁画に、仏さまの世界である須弥山をガードする昇り竜、下り竜の二竜王があります。また、昨年、台風のため、五重塔に大きな被害を受けた室生寺の守護神は竜王(竜神)で、平安時代にはその竜王は破格の待遇である貴族の五位に叙され、寺は朝廷によ
って竜王寺と名づけられました。

 しかし、中国においても時代を降ると、皇帝の象徴である竜は二つの角と五つの爪を
持ったものだけで、四つの爪以下の竜はうわばみとされ、庶民でも使用出来るようにな
りました。


 私の子供時代には、烏が鳴くと死人が出るといって忌み嫌われたものでした。最近でも、烏が貪食さからゴミ袋をあさって破り、ゴミを散らかして不潔極まりないことをす
るので悪鳥とされております。
  ところが熊野那智大社拝殿前には、神のお使いをする霊鳥、3本足の烏、即ち八咫
烏が飾ってあります。
この八咫烏が神武天皇の軍が東征の際、熊野から大和へ導いたと
いわれております。
今でも中国ではおめでたい鳥として3本足の烏が敬われております。その言い伝えを取り入れたのが日本サッカー連盟で、日本代表選手の胸に、連盟のシン
ボルマークの3本足の烏が付いておりますのは、みなさんご存知の通りであります。
 伝説によれば、3本足の烏は太陽の象徴で、先ほどの玉虫厨子の壁画には太陽の中に
3本足の烏が描かれております。

 縁起のよい3本足の烏と高貴でおめでたい竜が合わさったお茶が烏龍茶(皇帝用のお茶)でありその烏龍茶の烏は三本足の烏のことです。ですから、烏龍茶を飲めば、幸せ
が訪れますので大いに飲用されますことをお勧めいたします。ただし、自動販売機での
一本120円の缶入りは駄目で、烏龍茶(皇帝用のお茶)でなければなりません。

 余談ですが、中国では、小さな茶器で暖かい烏龍茶を飲むのであって、寒い冬でも冷
たい烏龍茶を飲む習慣は我が国独特のものです。しかし、この習慣もすでに中国に輸出
されているかも知れません。

 それでは、烏龍茶(皇帝用のお茶)はどの位するのかいいますと、中国では全て国賓
用としてのみ使用されているので推測できませんでした。ところが、一昨年、僅かが民
間に放出され入札された結果は、たった20g、小さな急須に4杯分が、皆さんが想像
できないような高額の値が付きました。

 どうも、烏龍茶(皇帝用のお茶)は一昨年の20gのみの放出では飲み続けることも
適わぬようですので、烏龍茶で幸せを呼び込むことを諦めて、今年は昇り竜にお祈りし
景気上昇を願いながら、元気一杯働くことにいたしましょう。