摂食の障害ではなくて、心の問題、行動の病であることを。摂食障害を知ってもらうために。
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摂食障害(Eating Disorders)□摂食障害(Eating Disorders)1689年 リチャード・モートン「神経性消耗病」 1874年 ウィリアム・ガル「思春期やせ症」 1973年 ヒルデ・ブルック「Eating Disorders」 日本では(厚生省特定疾患)、1960年頃から拒食症、1980年頃から、過食症。 1998年、拒食症は10,000人、過食症は5,000人と推定(5年間で拒食症3倍、過食症5倍)。潜在タイプを合わせると20,000人超えか? T DSM-IV(アメリカの精神障害診断統計マニュアル) ○神経性食欲不振症(Anorexia Nervosa) ●制限型●無茶喰い・排出型 ○神経性過食症(Bulimia Nervosa) ●排出型(Purging Type;自己誘発性嘔吐、下剤、利尿剤、浣腸あり)●非排出型(Nonpurging Type; 代償行為がないか、あっても絶食や過剰な運動など、排出以外の不適切な代償行為だけ) ○特定不能の摂食障害(Eating Disorder Not Otherwise Specified) ●拒食症とも過食症とも決め難い(若年層に多い)●定期的に月経のある拒食症、過食なしの普通食嘔吐、チューイングのみ ○無茶喰い障害(Binge Eating Disorder) ●無茶喰いエピソードを繰返すが、神経性過食症に特徴的な代償行為の定期的使用をしない 一人の患者が病期によって、それぞれの診断に移行する。 神経性食欲不振症は、期待される体重の85%以下、月経周期が連続で3回欠如(今後検討)、規則的な無茶喰い・排出行動。 U 摂食の病ではなく「行動の病気」=パーソナリティ障害=感情コントロールの障害。 ○人からどう見られるかという自尊心の病理、人から見下されるか、見下すか、勝ち負けの2選択の世界、人の顔色を伺う、他人の目が自分を映す鏡。 ○自己評価は体重に左右されるが、ボディイメージの歪み(認知・知覚)ではなく、感情の障害で、自己像の不満とやせ願望(自己愛の病理)がある。 ●自己評価が低い(理想が高い)、理想の自分以外は自分ではない(理想=母親が認める良い子)、0か100(99も65も1もない)、完ぺき主義、ミスは許されない(自己他者ともに)、今すぐ結果を出さないといけない、徹底性、他人の評価を過剰に意識、無力感、アレキシサイミア(自分の気持ちがわからない)、強迫性(こだわり)、不安・緊張。※冊子参照 ●衝動性(自分で自分をコントロールできない)、攻撃性、対人関係の脆さ。 ●倒錯(受け止めずに快楽で消したい=心の中の不安、悲しみ、苦悩、葛藤を行動や行為で、発散し排出する)と嗜癖(反復強迫=慢性化)。 ○乳幼児期に得ることができなかった安心感=見捨てられ抑うつが根底にある=養育早期に甘えの断念を自ら行い、子供のままで次の発達段階へ移行している。 思春期の自己のアイデンティティの確立〜母親との心的分離=反抗期がない。※冊子参照 自信がない、孤独感、無力な絶望感、体の変化(本能の欲動)と環境の変化に対応できない。 母親に執着、依存と攻撃を執着した相手に向ける。 ○過食=転ばぬ先の杖(現実逃避)=口唇期(おっぱい)への退行(赤ちゃんがおっぱいを吸う行為)=無意識の世界に、どっぷり浸る。嘔吐=現実チャラ(なかったことにする)。 ○無知にとどまる、知ろうとしない、真実を隠す偽りの知識でうめる。何でも人のせい、誰かが何とかしてくれるという気持ちが強い。自分を守るために嘘をつく(ドタキャンが多い)。 ○健康をめざす自己と破壊的自己愛的自己が分裂している。 ○過去に執着し未来を不安がる(頭の中が休まることがなく、考え続けるが、行動が伴わない)。 ○食は、生命維持に不可欠、その食にコントロールされた生活。経済問題を抱える。 パーソナリティー障害T パーソナリティは、性格と気質が統合されたもの。 パーソナリティ・スタイル=個性。 偏った考えや行動のパターンのために、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態=幼い。@ 両極端で単純化した認知(自己、他者、出来事を解釈) A 自分と他者の区別があいまいで混同。 B 信頼関係を保ちにくい C プライドと劣等感が同居 D 暴発や行動化(衝動の制御) ●自己愛(自分を大切にする力)が成長していない。親が強力すぎるか、弱すぎる偏り。 ● 環境要因 @ 愛着形成と母子分離 A 発達面(注意欠陥、多動性障害、アスペルガー症候群) B 社会面(核家族、過保護、経済の豊かさ代替物で欲求を満たす、メディア通信手段発達) U 分類 A郡(非現実的) ●妄想性パーソナリティー障害:不信と疑い深い ●ジゾイドパーソナリティー障害:社会的関係からの遊離、感情表現の範囲の限定 ●失調型パーソナリティー障害:認知的または知覚的歪曲、奇妙な行動 B郡(ドラマチック) ●反社会性パーソナリティー障害:他人の権利を無視して、それを侵害する ●境界性パーソナリティー障害:対人関係、自己像、感情の不安定、及び著しい衝動性 ●演技性パーソナリティー障害:過度な情動性と人の注意を引こうとする ●自己愛性パーソナリティー障害:誇大性、賞賛されたいという欲求、共感の欠如 C郡(他者本意) ●回避性パーソナリティー障害:社会的制止、不全感、否定的評価に対する過敏性 ●依存性パーソナリティー障害:世話をされたい過剰な欲求、従属的でしがみつく行動 ●強迫性パーソナリティー障害:秩序、完全主義、統制にとらわれている その他・特定出来ないパーソナリティー障害 V 境界性パーソナリティー障害(B.P.D.)=変動の激しいお天気屋さん 日本では、1980年頃から徐々に目立ち始め、身近な問題となっている(人口の2%)。 ○1歳から3歳ごろの母親との分離に躓き、養育側の一貫性の欠如、過干渉(過保護で支配的)、放任的(不十分さ)、虐待、叱る存在が不在(父親)。 ○自己や他者への感情と評価が非常に不安定(安定している時は冷静で論理的)=その変化は時間・日単位で激しく極端に対極的に変化する、自傷行為、引きこもり、家庭内暴力(行動が他者や動物に向けられる)など。 他者との関係の距離が分からなく、信頼すると執拗に依存し密着する、衝動的な破壊行動、不安定で強烈な人間関係、不適切な激しい怒り、自己同一性の問題(自己イメージの不安定さと社会的役割意識の希薄さ)、感情の不安定性、慢性的な空虚間や退屈感、見捨てられ不安。 いろいろな方法で周囲の人間を操ろうとする傾向があり、周りの人が振り回される=台風の目。自覚的には慢性的な抑うつ感、虚しさや不安、死にたい神様が来た、自殺未遂。周囲からの人物評価が一定していない。 1. 見捨てられることを極端に恐れる。 2. 他人に対する評価が、最高(全て良い)と最低(全て悪い)の間を極端に揺れ動く。 3. 理想的だと思っていた人を、最低の人間として軽蔑・攻撃するようなことが頻繁にある。 4. 自分がどういう人間であり、どのように生きていきたいかが定まらない。 5. 自殺をほのめかす。大量に薬をのんだり手首を切ったりする。これを繰り返す。 6. 衝動的・自己破壊的行為。ドラッグ、無謀な運転、金銭の浪費、過食、普通でない性行為。 7. 感情がひどく不安定。2〜3時間で激変、不安・いらいら・不快感が続く。 8. いつも虚しいと感じている、愛情飢餓。 9. 些細なことに対してひどく怒る。それを自分では抑えられない。 10 .一時的に精神病状態になることがある。妄想が出て来たり、意識がもうろうとなったりする(強いストレスを受けると解離症状を起こす、離人・健忘・同一性障害、脳の海馬の萎縮、記憶器官、妄想観念)。 ○セロトニン系(神経伝達物質)の低下、痛覚閾値(いきち)の上昇、頭部外傷既往など。 ○物が愛情という無意識=万引きの問題 ○治療・経過 ●精神療法、自我の再建、心理教育、行動集団療法、家族介入(家族指導は重要)。 ●薬物療法、抗精神病薬、SSRI、気分調整薬など。 ●年齢が上がると有病率が低下、経過の中で精神症状や問題行動は減少し、社会機能の改善(Sheaらの2002年の報告では、治療経過1年後、診断41%まで減少)。 克服とは?対応は?○対応(パーソナリティ・スタイルとして大人になる・円熟) ※冊子参照(下記は重複)@現実的な課題に目を向ける。心の中で拒否していないか? A一貫した態度。どーんと構えて、のんびりと、愛=信。 B本人の位置に目線を合わせて人生を本人に戻す。いいんですよ。そのままで。自分の時計で。 C大人=自由=責任=選択 D一喜一憂しない。親戚の子を下宿させているつもりの冷静さと消音装置感覚。 Eはっきり、断固と叱る。体を張ってぶつかることも必要。 F行動化には、入院、入所の行動制限、行動の背景を汲み取る姿勢。 ○克服とは?※冊子参照(下記は重複) 本来の自己をそのままで、コントロールとバランスを身に付ける。体調管理に気をつけること(睡眠、疲労、生理)。コツコツと、今することは、今するが、明日でいいことは、今しない。日常の生活を丁寧に=足元の豆を拾う。何事も溜めない、整理整頓は捨てることから始まる。自分が自分の傍にいないから寂しい。一人でのんびりする時間を持つ。考えずに、感じることをしながら、体を動かしていく。母は母。私は私。 ○自分の一部に摂食障害がくっついている。納得するものを食する。意識生活をする。癖から良い習慣へスライドさせる。食費、片付け掃除、料理、買い物など。体重維持の健全な工夫。 |