解説: 7月23,24日、奈良の各地では地蔵盆が行われる。 この日、奈良町を歩くと、提灯がつり下げられ、人だかりがしている場所 を見付けることが出来る。こんなところにお地蔵さんがあったかな、と思 うような場所にまで..。あらためて見てみると意外とたくさんのお地蔵 さんがあるものだ。 昨年は、7月23日に奈良に入った。 夜、各寺院を回ったが、西光院では、門のところに座っていたお婆さんに 「よかったら、どうぞ中に入ってください。」と声を掛けられ、わざわざ ご住職を呼び出していただいたり、また、十輪院でも門を閉める直前だっ たにも関わらず「どうぞ上がってください。」と、堂内に上げていただく など。 さらにその翌日、高林寺では、境内に提灯がぶら下がっているのを見つけ、 ご住職にその撮影をお願いしたら、快く中に入れていただき、「これをあ なたに差し上げます。」とお守りまでいただいたりした。 地蔵盆という時期だったからかもしれないが、どこの寺も“来る者拒まず” である。どこか心温まるものを感じた。 この写真は、元興寺極楽坊の地蔵盆での様子である。 奈良では、7月23,24日に行われるのが一般的であるが、元興寺の地 蔵盆は8月23,24日に行われる。500余体ある地蔵尊の一つ一つに 灯明が灯される。 ちなみに元興寺とは、東大寺,興福寺とともに、南都七大寺の一つとし て栄えた寺で、創建当時は大伽藍を擁した。しかしながら、度重なる火災 でそのほとんどが失われ、寺は衰退、今では奈良町にその痕跡を残すのみ となっている。 上述した西光院,十輪院,高林寺とも、元は元興寺の一院と伝えられる。 奈良町は、元興寺の寺内町として生まれた町で、元興寺衰退とともに境 内を占めて出来た町である。(実際には奈良町という町名はなく、このあ たりの町をひっくるめた総称である。) 私の常宿が元興寺極楽坊の近くにあるが、そこの女将さんによると、 「うちの庭掘ったら今でも瓦が出るよ。」とのこと。 奈良町は元興寺を封印した町と言えるかもしれない。