僕はコアなFloydのファンではない。それどころかコアなFloydのファンが嫌いな「Gilmour-Floyd」が結構、好きだったりする。そういうわけで、このレビューはそういう人間が書いたものであることを初めにお断りしておく。
Roger Watersは「クソ」がつくくらい、まじめな人のような気がする。でなければ今時、レコードの音を再現するために、トリプル・ギター、ツイン・キーボード、女性コーラス3人(あとはドラムスとサックス)などという大所帯を連れてツアーするだろうか(特に彼の現在のレコード・セールスを考えれば)?部分的にはテープなど使っても良さそうなものである。これくらいDJイベントやダンス音楽が普及してくると、「生演奏」=「ライブ」という発想もかえって古臭く感じるくらいである。が、Rogerくらいの人が意味なく生演奏にこだわっているとは思えない。何か意図があるのだろう(それは最後までよくわからなかったが)。
ところでDavid Gilmoreはインタビューなんか読んでいると、割と「いい人」っぽい感じがする。Davidが、Rogerの抜けた「Gilmour-Floyd」のライブで巨大なミラーボールを回したり、ベッドを空中に飛ばしたりするのは、おそらく音楽的な必然性があるからではなく、単に客が喜ぶからであろう。さすがいい人である。だが、いい人が誠実であったり、まじめであるとは限らない。ここら辺が、コアなファンが「Gilmour-Floyd」を嫌う理由ではないか。同じように、まじめな人がいい人とは限らない。したがって必然的にRogerとDavidは仲が悪い(笑)。
さて前置きが長くなったがショウは7時過ぎにスタート。途中20分の休憩を挟んで10時までという長丁場。選曲はThe Best of Pink Floyd and Roger Watersといった感じで、たっぷりとFloydの世界に浸ることができる。会場後方にもPAを設置してサラウンド音響を導入したり、曲間に効果音を流すなど、音的に工夫されたショウである。そして何より音がいい。10人以上の大所帯であるにもかかわらず、極めてクリーンな音だ。ステージは所狭しと楽器が並べてあるが、後方に白いひな壇みたいなものがあって、いきなりRogerがこの上に立ってbassを弾きながら「In The Flesh」を歌う。
しかしだ。トリプル・ギターでしかもS. WhiteやClaptonでおなじみのA. F. Lowなどの名手を揃えてはいるものの、やはりGilmourのギターを越えることはできない。結構、頑張って、フレーズやトーンを再現しているとは思うのだが、やはり本物にはかなわない。「Crazy Diamond」のイントロや「Comfortably Numb」のソロはGilmourでなければ。「Wish You Were Here」は、この時の僕にとってはまさにGilmourその人である。FloydにおいてGilmourがいかにone & onlyであり、完成されたフレーズを弾いていたかを再認識した。ただ「Money」の3人のソロはそれなり良かったけど。
そしてRogerがまじめな人で、そういったメッセージが曲に反映されていることはよくわかったが、同時に「これはロックのショウなのか?」という疑問も残る。「Jap」という歌詞が含まれている点で何かと話題の「It's a Miracle」も、それ以前に、「奇跡」とか「神」とか淡々と歌われてもこちらとしては何も面白くない。少なくとも僕はショウに来たのであって、「Roger牧師」の説教を聞きに来たわけではない。同じテーマを扱ったとしても、例えば、StingやP. Gabrielの方がもっと、entertainmentとして整理されたパフォーマンスをしてくれたのではないかと思う。
つまりは決定的にDavid Gilmourが欠けているのである。また反対に、いくらDavidが優れたguitaristであったとしてもそれだけでFloydが持っていたわけでもないことは、「Gilmour-Floyd」が長続きしなかったことが証明している。Rogerのコンセプトと、Davidの表現力があってこそPink Floydが成立していたことを再確認した夜だった。ちなみにRogerはもうFloydの曲はステージで演奏しないという噂もある。昨年、Greatest Hitsも出して、こうしてツアーをやって、もしかしてFloydは本格的にその歴史にピリオドを打とうとしているのではないだろか?
2004年のRock Odyssey以来、2度目の来日公演、そして初めての単独公演である。前回は短時間ながら充実したショウだったので、今回も期待して観に行った。正直言って、CDなんかで聴くと、The Whoの曲で特に好きな曲は多いわけではないけれど、ライブの演奏自体は楽しめる。1曲の中で緩急のつけ方がうまいからだろう。
それにしても会場を見回すと、僕より若い人が結構多い。どれでもって結構、歌詞とか覚えてきて一緒に歌っている。The Whoがrock legendであることは言うまでもないが、だけど日本であらゆる年代に愛されるようなバンドだったかというと、「?」という感じ。それだけに若い人が盛り上がっているのが結構、不思議である。Oasisとかの影響なのだろうか?それならもっと早く来日しても良かったのに。本人たちも「こんなに盛り上がるのなら、もっと早く来日すべきだった」と言ったとか。Set listは以下の通り。
I Can't Explain/ The Seeker/ Relay/ Fragments/ Who Are You/ Behind Blue Eyes/ Real Good Looking Boy/ Sister Disco/ Baba O'reily/ Eminence Front/ 5:15 / Love Reign Over Me/ Won't Get Fooled Again/ My Generation/ Pinball Wizard/ Amazing Journey/ Sparks/ See Me Feel Me/ Tea & Theatre
The Whoは好きな曲がそんなにあるわけではないのだけれど、ライブは観ていて楽しい。昔のライブはラウドだったり、文字通り破壊的なところが見どころだったのかもしれないけど、今はもちろん、そんなことはなくて、様々なスタイルの音楽を聴かせてくれるところがポイント。"Maximum R&B"と言っていたくらいだから、単純にrock 'n rollなバンドでもないからね。
まあ僕はThe Beach Boysのファンでもない。ここ数年、Brianが出してるアルバムは結構好きだけど、ライブ見に行くほどかなと思っていたので行くのを直前まで迷っていた。とは言え、伝説の天才が伝説のアルバム「Smile」を完全演奏するとあっては、やはり一度は生で見ないとと思って結局行きました。チケットは余ってそうだし、当日券も山ほどあったから客席はガラガラかなと思っていたのだが、1階席は一応、埋まっていたようでした。やっぱり直前まで迷っていた人が多かったんでしょうね。
で、ショウは舞台の中央に焚き火を囲むようにメンバーが集まってアンプラグドでスタート。Brianの曲では不可欠なあのコーラスも完璧に再現されてそれは素晴らしいが、主役のBrianは奥の方に座っていて、声もあんまり出ていない。「大丈夫だろうか?」と思いながら、まあ別にBrianの歌に最初から期待しているわけじゃないから、そんなに気にしないが(でもそれなら、何しに来ているんだ、と言われそうだが)。その後、今度は通常のバンド編成になって、Brianは中央のkey.の前に座って歌う。しかしkey.はほとんど弾いていないし、何のためにいるのかよくわからない(笑)。しかしホーンやストリングスを含む豪華なバンドは演奏も完璧でBrianを盛り立てる。バンドは「あなたがここにいてくれさえすればいいんですよ」という感じでBrianに気を遣っているが、段々、僕もそういう気分になってくるから不思議だ。
で、しばらくの休憩の後、いよいよSmileセクションがスタート。それにしても何だろうこの演奏は。あのCDに刻まれた濃密な音の世界が、ステージでしかも全くのライブで完全に再現されている。ロックとかポップとかではなくてこれは完全にシンフォニーですね。観客もクラシックのコンサートに来ているみたいに固唾を呑んで聞き入ってる感じだ。しかしBrianは40年近くも前にこんなことを頭の中で1人で(2人で?)考えていたのだろうか?それが本当なら天才と言えば天才だし、crazyとも言える。あまりの濃密さに魂が抜かれていくような気になってしまった。そんなSmileセクションも「Good Vibration」で幕。観客も総立ちでBrianに拍手を送る。アンコールはBeach Boysのヒット曲連発で観客も更に盛り上がる。観客の厚い声援を受けて、Brianも調子が良くなってきたようだ。
Brian自身はステージ上ではパフォーマーとしてほとんど機能していないが、それでもこのショウは素晴らしかった。もちろんそれはこのバンドあってのことだけど、ショウの構成がアコースティック、バンド、Smile、ヒット曲という流れで見事だった。Smileセクションがなければちょっと単調だったかもしれない。久々に感動するショウ。Set Listは以下の通り。
Surfer Girl/ Wendy/ Add Some Music To Your Day/ Please Let Me Wonder/ Drive In/ And Your Dreams Come True/ Your're Welcome/ Sloop John B/ Desert Drive/ Dance Dance Dance/ Hawaii/ California Girls/ God Only Knows/ Forever/ Good Timin'/ I Get Around/ Sail On Sailor/ Marcella/ Our Prayer/Gee/ Heroes And Villains/ Roll Plymouth Rock/ Barnyard/ Old Master Painter/You Are My Sunshine/ Cabin Essence/ Wonderful/ Song For Children/ Child Is Father Of The Man/ Surf's Up/ I'm In Great Shape/I Wanna Be Around/Workshop/ Vega-Tables/ On A Holiday/ Wind Chimes/ Mrs. O'Leary's Cow/ In Blue Hawaii/ Good Vibrations/ Do It Again/ Help Me, Rhonda/ Barbara Ann/ Surfin' U.S.A./ Fun Fun Fun/ Love & Mercy
これは確か「Characters」リリース後のツアーである。今回のツアーはアリーナに円形ステージを持ち込んでのショウ。したがって会場のどこからでもStevieを始めとしてプレイヤーがよく見えた。Stevieといえばヒット曲も多いし、演奏も安定感のあるものだという印象があるが、それ以上の印象がないのも事実。