いきなりこう言っては何だが、そもそも今のJimmy Pageに何かを期待するというのがもう間違えているのである。結局、Zepが頂点だったのだ、この人達は。というか彼らに好意的な表現をすればそれだけZepは誰も(本人たちも)超えられない金字塔を打ち立てて来たと言えるだろう。しかしそうはわかっていてもこの2人が揃ってライブをするというのであれば、一度は見てみたいと思うのが人情ではないだろうか?何しろ、僕がロックを聴くようになった時点でZepはもうなかったのである。
このツアーはMTVの企画、「No Quarter」をベースにしたものである。したがって通常のロック・バンドのフォーマットではなく、民族楽器やストリングスがバンドに加わっていた。単なるZepナンバーの再現ではなく、アレンジを変えて新機軸を打ち出すという趣向である。このアプローチにも賛否両論あるとおもうが、過去は過去と割り切って見ればなかなか面白いショウであった、はずだったのだが...。
普通ならオープニングは「Immigrant Song〜The Wantong Song」で、これで盛り上がるずなのだが、なぜかこの日はスローなブルースでスタート。「あのリフで大いに盛り上がるぞ」という観客の期待を一気にしぼませてしまった。そのせいか、曲が進行しても一向に盛り上がらない。あまりの盛り上がらなさにRobertがキレて「Wake up!」とか叫んでいたなあ(笑)。結局、盛り上がったのはアンコールの「Rock'n Roll」。drumsのM. Leeとか結構、いいプレイをしていたと思うんだけど...。構成のミスがショウを盛り下げた典型的な例。
昔から、そして今でも男性vocalistで一番好きなのがRobert Palmerだ。経歴は長くても通好みだったRobertを初めて知ったのは、多くの人達と同じくThe Power Stationからである。彼のいわゆるblue eyed soulと呼ばれる声も素晴らしいのだが、更に素晴らしいのが彼のアレンジの能力、すなわちsound createrとしての側面である。長い間、様々な音楽スタイルを試みてきたRobertだが、その成果が大ヒット作「Riptide」、そしてこのツアー前にリリースされた「Heavy Nova」で結実している。そもそも「Heavy Nova」というタイトルが「Heavy Metal + Bosa Nova」の造語であることからわかるように、1枚のアルバムの中でHeavy Metalからstandard風まで、実に幅広い楽曲を歌いこなしている。しかしそれは気まぐれでもお遊びでもなくて、そういうアイデアとサウンドに制約されないvocalの技能を持っていることが素晴らしいのである。
ということで実際のライブもそういったRobertの幅広い音楽性を前面に打ち出したものになっていた。まずはThe Power Stationの「Some Like It Hot」でスタート。いきなりこれですか、という気もしなくはないが、当然、会場は盛り上がる。それから近作のヒット曲が続き、そしてstandardの「It Could Happen to You」やbosa novaの「Between Us」で落ち着いたムードを演出、後半はrock'n rollにheavy metalで盛り上げて、最後は「Addicted to Love」で終わるという理想的なセット・リストだった。
多彩な楽曲を演奏してくれたおかげで2時間弱のショウはあっという間だった。最近、この時のツアーの音源がCDで発売されたが、それを今、聴いてみても当時に受けた印象と変わることはない。幅広い音楽性を背景として、ライブならではのアレンジで楽曲を聴かせることが彼のショウの目的であるように思えるのだが、実際にその目的は十分達せられていたと思う。
遂にThe Policeだ。観客の大半はMTV世代だと思うが、何しろ日本に来なかったので我々はSynchronicityのツアーを見ることが出来なかったのだ。それで後で発売されたこのツアーのビデオを観たらあまりのパフォーマンスの凄さに、何でこれが日本で見れなかったのか、悔やんでも悔やみきれない人はきっと山ほどいると思う。20数年間抱えてきたそんな想いが、今日もしかしたら消えてなくなるかもしれない。みんなそんな期待を持ってここに来たのではないか。
ショウは「Message in a Bottle」でスタート。座席も30列目でStingの前くらいだから肉眼でバンドも、ステージ全体もよく見える。まずは「ああ本当にポリスだ」という感じで嬉しくなってしまう。次にAndyがギターのリフを弾いて「Synchronicity II 」。Stingが「Iyoooo」と歌いだした瞬間にステージのLEDスクリーン全面が赤・青・黄の3色に彩られると、もうここで涙腺が緩んでしまう。何しろこれを見るために20何年も待ったのだ。
そこからも次々に代表曲が3人だけで演奏されていく。リストだけ見ればヒット曲を集めたショウみたいだが、どれもオリジナルとは違うアレンジが施されていて、懐メロ臭さは微塵もない。Andyのソロもこれまでにもなく長いのではないか。昔と同じようなスピード感はないけど、円熟という言葉だけで片付けることが出来ないような激しさは依然としてある。
「King of Pain」でStewartが、パーカッションのブースからドラムキットに戻るときポンとスティックを放り投げる。何てことない仕草だけど、(たぶんみんなも)Synchronicityのツアーのビデオを思い出して歓声をあげてしまう。最後の最後は「Next to You」。あっという間の2時間弱。Stingのソロではこういう終わり方は絶対にないだろうなあ。
インタビューでStewartは「昔は10代の女の子が絶叫しているが、再結成ツアーでは40代の男が泣いている」ということだ。なぜ僕たちはポリスのショウで泣いてしまうのか。昔を懐かしんでいるかもしれないし、やっとポリスを見ることができて感動しているのかもしれないし、(たぶん)2度と見ることもないだろうという想いに寂しくなっているのかもしれない。しかし目の前で繰り広げられているのは50半ばのStingとStewrat、そして65(!!)歳のAndyが、感傷的な演出が一かけらもない、激しいロックのショウである。大げさに思われるかもしれないけど、これは本当に奇跡だと思う。
Stingはソロになってからはアルバム発表毎に日本に来るし、そこでも必ずポリスの曲をやっていた。バンドのメンバーの技術も確かだ。しかしポリスはポリスでもうこれはソロとは全然違う。もちろんAndyもStewartも上手いミュージシャンだがたった3人だけで演奏すれば、時には演奏が乱れて危うい瞬間も出てくる。しかしそんな細かいことは抜きにして、圧倒的なグルーヴで前に進んでいくのがバンドのロックだということが改めてわかった。セット・リストは以下の通り。
Message in a Bottle/ Synchronicity II/ Walking On The Moon/ Voices Inside My Head/ When The World Is Running Down/ Don't Stand So Close To Me/ Driven To Tears/ Hole In My Life/ Every Little Thing She Does Is Magic/ Wrapped Around Your Finger/ De Do Do Do De Da Da Da/ Invisible Sun/ Can't Stand Losing You/ Roxanne/ King Of Pain/ So Lonely / Every Breath You Take/ Next To You
なぜか突然復活して2nd、「Living in Fear」をリリースしてのツアーが今回のツアー。1stの時もアメリカでツアーしたようだが、その時は「Riptide」制作で忙しかったRobert Palmerは参加せず、代わりにM. DesBarresとかいうRobertの面影も何もないsingerが歌っていたので、今回がちゃんとした初のツアーか。と思っていたらアルバム制作時にはJ. Taylorはとっくに脱退していたようで、結局、オリジナル・メンバーでのライブは実現せず。まあ特にJohnのファンというわけでもないのでRobertを観に行くと思えばいいか。
今回のツアーはRobert、Andy Taylor(g)、Tony Thompson(ds)+bassとguitarのサポートの5人編成と聞いていたが、実際のショウはguitarがAndy1人で4人のバンド。それにしてもツアーの初日かもしれないが、Robertは歌詞をちゃんと覚えてないらしく、songbookを見ながら歌っている。曲と曲の間にしゃがみこんでページをめくっているのだが...、そういうのは勘弁していただきたい。それと後でわかったことなのだが、何とbassistが飛行機の都合でこの日のショウに間に合わず、サポートのguitarist(Thunderというバンドの人らしいが僕は詳しくない)が急遽、代役でbassを弾いていたらしい。だから4人だったのか...。とにかくそんなわけでセット・リストから演奏されなかった曲も何曲かあったという、全くトホホなショウであった。ちなみにThe Power Stationの曲だけでなく、「Addicted to Love」などRobert の曲も何曲か演奏していたし、James Brownの曲も1曲カバーしていたなあ。
まああえて拾い物といえばやはりTonyの迫力あるdrumsを生で聴けたこと。食い物が違うのか人種が違うというか...、とにかく日本人じゃちょっとあり得ないパワーとグルーブであった。