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Janet Jackson

All for You Tour 2002@大阪ドーム(Jan./12/02)

例えばUSJは別に「E.T.」や「Back to The Future」を知らなくても誰でも十分楽しめるけど、それはハリウッドの流儀が凝縮された形でテーマーパークになっているからだと思う。そういったハリウッド流のエンターテイメントにはもちろん、賛否両論あるわけだけど、Janetの最新作「All For You」は、前作の内省的な方向から180度方向転換した、エンターテイメント性が前面に打ち出されたアルバムだったので、今回のライブもそういった内容になっているのではないかと予想していた。僕はJanetの特別なファンではないけど、今回のライブはそのような予想があってきっと楽しめると思ったので足を運んでみることにした。そして実際のショウはいい意味でその予想通りだった。

ショウは新譜からの「Come On Get Up」、「You Ain't Right」、「All for You」でスタート。この3曲ではステージにいるのはJanetとダンサー達だけ。バンドはステージ後方のスクリーンの後方に隠れている。おそらくこの3曲に限らず、Janetがヘッド・セット・マイクをつけて踊りながら歌うような曲の多くはバンドではなくテープ演奏ではないか(部分的にはバンドが演奏しているかもしれないけど)。Janetのダンスが主な目的ではない、古典的なロック・ファンとしてはこういうスタイルはちょっと退屈である。古いかもしれないけど、やはりバンドがステージに見えないと、そしてsingerがバンドと一緒に歌っているという雰囲気がないとライブという気がしなくなってしまうのである。

しかし途中からはちゃんとバンドもステージに上がってきて、ようやくライブ演奏らしくなる。ショウはいくつかのセクションに別れていてバラードを歌うコーナーあり、ヒット曲のメドレーがあったりする。Janetはアップ・テンポの曲のイメージが強いかもしれないけど、バラード歌っても上手いですね。またJanetほどシングル・ヒットが多い人も珍しいが、そういった曲(特に昔の)も出し惜しみなくメドレーで聴かせる。1曲をちゃんと聴いてみたいとも思うが、限られた時間の中では仕方ないのだろう。こういったところにJanetのサービス精神を感じさせる。

ところでやはりショウのメインは音楽的な側面よりは舞台の演出である。ミュージカル風のパフォーマンスやおもちゃ箱をひっくり返したような舞台装置など見てるだけで楽しくなってくる演出が次々と披露される。「Would You Mind」では客席から男性をステージに上げてベッドに縛りつけ、Janetがその男性と絡みながら歌うという刺激的なパフォーマンスもある(何かこの演出が一番受けていたような気もするが、まあこの歌の歌詞ってそういう内容だからね)。あるいは「Ryhthm Nation」では、曲の最後に「Prejudice」、「No!」などいくつかの単語がスクリーンに映して観客に叫ばせるという演出もあった。Janetの政治的なメッセージを伝えるのが目的であるが、楽しいステージだけではなくこういった側面もショウに組み込み、またその方法が簡潔でしかも洗練されているところも素晴らしかった。

そんなわけで音楽を聴きに行ったというよりは観て楽しむショウだったので、いつも僕が観に行くライブとは若干、趣が異なっていたんだけど、そういった趣味の問題は別として完成度の高い素晴らしいショウという印象を受けました。しかもJanetの人間性や彼女の持つメッセージをアピールするという、ハリウッド流のノウハウを駆使しながらも楽しいだけではない、深みのあるショウでした。ただ「9/11」の影響でヨーロッパ・ツアーが中止となり久しぶりのライブだったためか、セット・チェンジにもたついてショウの流れが分断されていたのが残念。それとダンスを観るならやはりアリーナではないと無理で、こういったスタジアム規模ではこの演出はちょっと厳しいのではないか。できればスタンドではなく、アリーナで見たかったです。

セット・リストは以下の通り。Come on Get up、You Ain't Right、All for You、Love Will Never Do、Trust A Try、Come Back to Me、Let's Wait A While、Again、Runaway 〜 Miss You Much 〜 When I Think of You 〜 Escapade、Son of A Gun、God 'Til It's Gone、That's The Way Love Goes、What Have You Done for Me Lately 〜 Control 〜 Nasty、Alright、Would You Mind、Rhythm Nation、Doesn't Really Matter、Someone to Call My Lover、Together Again

それと特徴的だったのは女性客の多さ。男女比が1:2くらいじゃないかな。今まで僕が行ったショウはほとんど男性の方が多かったからちょっと圧倒されてしまった。「Janetってこんなに女性に人気があるんだ」と最初は驚いていたけど、ショウを見てその理由がちょっとわかったような気がした。Janetってかわいくて、格好よくて、しかもセクシーでと女の子が欲しいものをみんな持ってるんじゃないかと思った。はっきり言ってJanetってMadonnaやBritney Spearsみたいにわかりやすい美人でもないし、また昔は兄貴に比べれば全然売れてなかったから、現在のポジションにたどり着くまで相当、努力したんじゃないかな。そういう「努力の人」というイメージと現在の姿がきっと女の子の共感を呼ぶんでしょうね。

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Billy Joel

Japan Tour 2006@大阪ドーム(Dec./06/2006)

「Face to Face」のツアーはジョイントで、その前の単独公演は阪神大震災当日だったので中止というわけで、実はBillyの単独公演を観るのは初めてである。しかしまず大阪ドームという会場があまりピアノマン向きではないような気がする。「Face to Face」は、まあイベントだし、ドームでも仕方ないかという気がするが、単独公演ならやはり大阪城ホールくらいが妥当ではないか。客はそこそこ埋まっていたから、興行的な観点からはドームでも良かったのだろうが、音響的にはイマイチ。そもそもこのツアーは他の国ではスタジアム級のショウはあまりやっていないのではないか?

しかも、最近になってベテランのショウを観ることが多いが、かなり現役感は薄い。新譜も出していないし、多くの曲でキーが下げられている。まあキーが下がるのは年齢だから仕方ないか。演奏されない曲が増えるよりはマシと納得するしかない。マイクスタンドを使ったパフオーマンスもおなじみとはいえ、かなり「無理」な感じがする。

しかし、何だかnegativeなことばかり書いてきたが、set listを見ればわかるとおり、名曲の何と多いことか。My LifeもHonestyも割と前半にさらっとやってしまうのだが、だけど後半やアンコールで聴かせる曲がなくなるわけではない。しかもシングルになっていない曲をやったりして、コアのファンへのサービスも忘れない。客が聴きたいと思うヒット曲の多さがBillyの売りだとしたら、この人に右に出る人はそんなにいないでしょうね。そこにショウを観に行く価値があると言えるだろう。まあこれだと新譜を出す理由も確かにないよな...。

Piano Manではしっかり歌わさせてもらいました。それからHighway to Hellのカバーもなかなか良かったですよ。意外だったけど。Set Listは以下の通り。

Angry Young Man/ My Life/ Everybody Loves You Now/ Honesty/ The Entertainer/ Zanzibar/ New York State of Mind/ Don't Ask Me Why/ Allentown/ The Stranger/ Just The Way You Are/ Movin' Out/ Innocent Man/ Miami 2017/ She's Always A Woman/ I Go To Extremes/ Highway to Hell/ River of Dreams/ We Didn't Start The Fire/ Big Shot/ It's Still Rock 'n' Roll to Me/ You May Be Right/ Only the Good Die Young/ Piano Man

In Concert@Safeco Field(May/20/2016)

正直言ってもうBillyがスタジアムでライブをやるのはキツイんじゃないかと思っていた。実際、ショウの本編はほとんどピアノの前に座って歌っていたし、何というか演出としては地味なのだ。KeyArenaくらいならちょうどいいと思うのだが、それでもSafeco Fieldはほぼ満員になっていた。それだけ需要があれば、スタジアムでやるのは当然ということなのだろう。演出が地味でも、ともかくスタジウムでショウが成立するのは、言うまでもなく楽曲の力である。それを(たぶんほとんど)原曲と同じ、アレンジやキーでやっていた。もはやクラシックともいえる昔の楽曲でこれだけお客が来るのだから、新譜を作ろうという動機が湧かないのも仕方ないか。

ところで今日もシアトルならではの演出が。The River of Dreamsの間にJimi HendrixのPurple Hazeをほぼ丸ごと挟み込んでた。もちろんこれも盛り上がる。

僕が一番良かったのは、アメリカで、観客みんなでPiano Manを歌えたことかな。

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Billy Joel & Elton John

Face to Face@大阪ドーム(Mar./28/98)

米英を代表するpiano menがjointするというこのツアー。コアなファンならそれぞれの単独公演を望むかもしれないが、この組み合わせはコンセプトも明快なのでショウの充実度は約束されたも同然。何しろこの2人のjointであるから実際に興行的にも既に大成功を収めていた。そんなツアーが初めて日本に上陸した。実はBillyを生で見るのはこれが初めて、Eltonは2回目だが、初回はEric Claptonのspecial guestとしてだから実質的にはやはり初めてである。

ショウはまず舞台に2人が登場して2人だけで「Your Song」からスタート。次に「Honesty」と2人の曲が交互に演奏される。で、その後、Billyのセットになる。

Billyの曲はどの曲も日本人にはお馴染みだから、まあ盛り上がる。途中で1曲、Eltonと一緒に演奏したり、あるいはBillyがEltonの歌をカバーするという演出もある(もちろんEltonのセットでもその逆が)。この時、Billyは「Candle in the Wind」をカバーしていたが、これはEltonの「もうCandle in the Windは人前では歌わない」という意向を受けてのことだろう(もっとも最近はEltonも再び歌っているようだが)。ところでBillyの演奏は若干、テンポが緩め。「Big Shot」なんかでマイク・スタンドを放り投げる辺り、昔と変わりないパフォーマンスのようだが、それもどこか無理している感じ(笑)。正直言って、全盛期の勢いには及ばないとの印象を受けてしまう。

次にEltonのセット。Eltonというと「Your Song」とか「Candle in the Wind」とかどちらかというとバラード系の楽曲がよく知られている。しかしもともと彼はこのツアーのコンセプトが示す通り、「ピアノを弾くロックンローラー」で、実際の演奏もそういったアグレッシブなものやプログレ風のものなど実に多彩であった。はっきり言って演奏だけ言えばEltonの方が良かった。それにしてもBillyに比べるとEltonは日本では人気がない。Billyの時に総立ちだった観客も、Eltonのセットでは座ったまま。みんなが立ったのがEltonがカバーした「Uptown Girl」の時だけっていうのはちょっとどうかと思うよ。

で、最後は2つのバンドのjoint。そして2人だけになって「Piano Man」でショウは締めくくられる。それにしても当然、歌わされるわけだからChorusの歌詞くらいは予習して来いよな。それとEltonがその日のうちに東京に移動するためか演奏曲が予定より大幅にカットされていたのも不満。本当だった3時間半くらい演奏するところが2時間半か3時間弱くらいじゃなかったかな?まあ大阪ドームという巨大会場でアリーナの前から10列目くらいで観れたので基本的には楽しかったのだけれど。

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