Def Leppardは80年代を代表するロックバンドでなおかつ現在も現役である数少ないロックバンドだ。なにしろ4枚目の"Hysteria"は全世界で1000万枚以上売れている。高校時代、彼らの曲をコピーした人間としては見に行かないわけにはいかない。しかし最新作の「Slang」は、グランジの影響を受けたためかこれまでの作風を変更して、もっとライブな音作りになっている。この辺の路線変更がライブにどのような影響を与えているかが興味深いところである。
ライブ開始直前にQueenの「We Will Rock You」がテープで流れてメンバー登場。最初は新作からの「Gift of Flesh」で、この曲は従来の作風に比較的近いことから、今までのファンにも違和感を与えないようにという彼らなりの配慮なのか?実際にセット・リストも新譜に偏ることなく、「Slang」の前にリリースしたGreatest Hitsに沿って昔の曲も出し惜しみなく演奏していた。このツアー以前のショウを見ていないので、断定はできないけど、セット・リストから判断して、ライブ自体は以前とそんなに変わっていないのではないか?
アンコールで演奏した「Love Bites」の演奏と照明の美しさが印象的だった。
今回は「Euphoria」リリース後のツアー。「Euphoria」が「Hysteria」の作風に戻って、つまりLeppsの王道路線に戻ったのでライブの期待も高まる。
前回と同様、Queenの「We Will Rock You」で始まるのももはやおなじみで、当然観客は「ドンドンパン」と足を踏み鳴らし手を叩いて歌う。最初の3曲から新旧のアップテンポな曲で飛ばす。いきなりこれで大丈夫か、と妙な心配をしながら、やはり盛り上がってしまう。結局、2時間弱の中で新譜からの4曲を挟みながら、まさにBest of Def Leppardの選曲でライブを構成した。以前は誰もがやっていた「アンプラグド」なコーナーもなく、ハードロックのお手本のようなライブであった。
おそらくこれは今の彼らにとって的確な選択のような気がする。彼らの魅力は印象的なリフで構成される楽曲、分厚いコーラス、モダンなサウンドである。すなわちいい曲を演奏して、コーラスやサビを観客に歌わせればOKなのである。
彼らはそれぞれに優れたミュージシャンであるが、傑出したテクニシャンかというとそうではないかもしれない。DrummerのRick Allenが片手でドラムを叩いていることもあり(彼は交通事故で左手を失った)、複雑な演奏は難しいのかもしれない。それより彼らほどヒット曲の多いハードロックバンドはないのだから、いい曲をちゃんと演奏すればいいわけで、その意味で的確な選択と思う。
セットに仕掛けがあるわけでもないし、何か革新的な試みや、player同士の激しいアドリブがあるわけでもない。でも他にあんな曲をかける人もいないんだし、ライブをやればちゃんと歌わして盛り上げてくれるから楽しいライブだと思う。
大阪城ホールに着くと、入り口がいつもと違っていて遠回りさせられる。その理由は会場に入るとすぐわかった。ステージの配置がいつもと違っているからだ。大阪城ホールは楕円型をしていて、普通はこれを縦長にして使う。しかし今回は横に広くなるようにステージを配置していた。これだと一番後ろからでも、いやスタンドからでもステージのすぐ近くだ。その代わり、最前列でも端にいる人はステージが見にくいだろう。個人的にはステージが近くなるのでよかったが、これはスタンドの半分以上が空席だから可能なわけであって、つまりチケットが売れていない証拠である。その点がその点が少し寂しい。
さてショウはWhitesnakeからスタート。David Coverdaleの声の調子は良さそうだが、マイクスタンドを振り回しているところなど、少々、「やり過ぎ」な感じがする。ギターも2人いてソロをキメたりするが、これも少し過剰な感じが。つまり80年代のHR全盛期にはこれくらいで良かったが、2000年代の今から見るとちょっと過剰な感じの演出にインパクトを感じた。特に何が悪いというわけではないのだけど、あまりに昭和の香りが強くてクラクラする感じだ。
続いてDef Leppard。こちらは、最近のCDセールスはイマイチなのかもしれないが、ずっと活動を続けているだけあって、ショウはものすごく洗練されていた。例えばツインでギター・ソロなら、Whitesnakeだと2人ともひたすら前に出て客をあおったりするのだが、Def Leppardの場合、PhilもVivianも後ろに下がったり左右入れ替わったりと、サッカーで言う「絶妙のパス回し」で舞台を動いている。Joeの声は高音がちょっとつらそうな感じで、この辺はさすがに年齢か。しかし他のメンバーの体型はスリムで、曲も相変わらず一緒に歌えるし、昔とほぼ変わらずライブを続けていることに脱帽。
観客の大半は女性なので、ショウが始まるまでは何となく心もとない感じがする。メンバーが登場すると「キャー」というもの凄い歓声があがるのだが、この辺も何となく慣れない。それはともかくステージは割とシンプルで、中央に階段があってその上にスクリーンがあるくらい。もっともこの階段状のステージとスクリーンを使って激しいパフォーマンスを見せてくれるのだが。この日のショウはツアー2日目だが、ショウの構成はきっちりと決まっているせいか、それほどぎこちなさも感じさせない。衣装もセクシーな感じでアリーナ級の会場では不可欠な華やかさがあり、曲がそれほどわからなくても観ている者を飽きさせない。
それにしてもこの3人は仲が良さそうに見えない。とにかく色々な意味でBeyonceがメインになってしまうのはもう仕方のないことで、ソロで何曲も歌っていた。これと比べると、残りの2人のソロは1曲ずつなのだが、このソロでここぞとばかり力を入れてアピールしているのが笑える。そしてこのソロのパートもなかなかいい。3人でやっている時は、Beyonce以外の2人はまるっきり仕事モードなのだが。まるで「このグループはBeyonceだけじゃないんだから」とでも言いたげである。で、またBeyonceは自分のソロになると「ま、結局、メインは私よ」とばかり余裕でパフォーマンスしている。こういう仲の悪さというか緊張感をそのままステージに持ち込んで、エンターテーメントにしてしまう辺りが凄い。ロック・バンドの場合、こういう緊張感が演奏に表れて、いい意味でテンションが高くなることはあるけれど、こういうボーカル・グループでは見たことがない。もちろん他のグループでもこういうケースはあるのだろうが、僕が実際にこういうのを見たのは初めてではないかと思う。
ところでCDでは、こういう音楽はプログラム主体だからライブではどうするのだろうと思っていたが、やはりキーボードが2人いて鍵盤主体であることがわかる。ギターはほとんどいてもいなくても変わらない。興味深いのはベース。結構、スラッピングを使っていた。おそらくCDではそういう演奏をすることはないと思うのだが、やはりライブという空間ではスラッピングを使ってサウンドを派手にする必要があるのだろう。ドラムスもプログラムされたリズムに合わせて叩く必要があるせいか、ドラムがリズムを引っ張っている感じはしない。それでもやはりサウンドを派手にする必要があるのか、シンバルやタムを頻繁に叩いている。この辺、CDでは最新のサウンドでもライブでは古典的なスタイルにならざるを得ない点が新しい発見であった。
ま、それとBeyonceのスタイルの良さはさすがです。
「Brotherhood」リリース直後のツアーがなぜか実現せず、このライブはその後のGreatest Hitsを出した時のものであった。演奏曲が「Brotherhood」時のツアーと変わっていたとは思えないが、メンバーにguitarのJohn McFeeが復帰してトリプル・ギターになった点が新機軸だろうか。そのせいか音も厚みを増して期待通りの演奏をしてくれたと思うのだが、どういう訳だかそれ以上の記憶がこのライブにはない。ただそれまでの経験でライブは、2時間だともうちょっと聴きたいと思っていたのだが、この時は2時間の演奏がちょうど良かったという印象がある。言い換えるとそれだけよくできた構成のショウだったということなんだろう。
この時のツアーは新譜をリリースしてのツアーではなかったため、前回と比べてセット・リストに大きな変化はなかったと思う。bassで参加したSkylarkという人の力任せなチョッパー・ソロが印象深かった。でもなぜかそれ以上のことは記憶に残っていない。
またまたUdoお得意のジョイントライブ。しかしながらThe Derek Trucks Bandだけでは観に行かないだろうし、最近はDoobieも単独公演には行ってなかったので、やはりこの企画は当たりかと。それにこの2つのバンドの世代は全く違うが、その音楽性には共通項が多そうで、その意味ではもっと前にこういうショウがあってもおかしくなかったかもしれない。加えて、当然、2つのバンド、というかDerekとDoobieの共演も当然期待される。
さてまずはThe Derek Trucks Bandなのだが、予想通り、音楽的には地味。Derekがギターを弾くと相変わらず凄いのだが、それ以外は何というか、興奮することなくのんびりと観てしまう。しかし限られた時間の中でも「Derek & the Dominos」から2曲もやってしまうのは、やはり避けられない宿命なのか。
そして次にDoobie。久しぶりに見たけどやっぱりいい。The Derek Trucks Bandと共通項も多いのは事実だが、しかし改めて比べてみる曲のポップさが違う。そしてDerekにはあまり感じられない、funkyさが全然違う。TomがいたDoobie初期は、どちらかというと泥くさ目のアメリカンロックと言われがちだが、それでもTomのギターのカッティングからして相当funkyですよ。ま、その辺の違いもあって1曲目から盛り上がる。
Set listもよく考えられている。前期の代表的な曲は全て押えつつ、Michaelがヴォーカルの後期の曲も2曲、それから新曲も1曲という充実振り。それから「Don't Start Me to Talkin'」ではDerekが出てきて、4人がソロを回す。4人並んでソロを弾くなんて、ちょっとold fashionedな感じもするのだが、これはこれで味があって悪くなかった。
それぞれ2つのバンドは、また別の組み合わせのジョイントライブで来てくれないかな...。
Donald Fagen、Boz Scaggs、Michael McDonaldの3人から構成されるバンド。このグループに改めて名前を付けていることからも明らかなように、単なる3人のジョイントコンサートというわけではない。ソウルやロック、ブルースの名曲をカバーしながら自分たちのヒット曲も演奏するという趣向だ。好意的に見れば、過去の様々な名曲の中に自分達のヒット曲を位置付けて音楽的由来を辿る試みとも言えるし、一方でカバーばっかりではそれぞれのヒット曲を期待して来ている観客が盛り上がらないから、自分たちのヒット曲も演奏するというビジネス的な事情もあるだろう。いずれにせよ、これは観客よりも演奏する方が楽しむことを目的としたショウだ。大体、ちょうどDonaldの新作「Sunken Condos」が出たばかりで、日本でも結構、売れているのに、そこから1曲も演らないというのは、自分達の趣味を優先している。
ところでAORという言葉で一括りにされがちな3人だが、Donaldはジャズ、Michaelはソウル、Bozはブルースと、音楽の出自はそれぞれ異なる。そこをDonaldがバンマスを、またバックの演奏もSteely Danのツアーバンドが務めることで、統一感が保たれていたが、この辺は評価が分かれるところかもしれない。例えば、Donaldの最新作ではIssac HayesのOut of the Ghettoをカバーしているが、両方比較して聞いてみるとグルーヴがかなり違う。Slyの曲も今回のショウでは演奏していたが、これがもの凄くファンキーかと言われればちょっと違う。要するに昔の名曲を演奏しても、全てDonald流に再構築されているのだ。オリジナルと比べてその辺をつまらないと思うか、面白いと思うか。まあ僕はやや後者の方ですけど。
それと驚いたのが観客の年齢層の高さ。僕でも平均か少し若いくらい。東京では武道館が売り切れて横浜で追加公演が出たくらいだから、洋楽不況と言ってもこの層を相手にすればまだまだイケるのかも。
ちなみに僕はPegとPretzel Logicがハイライト。この曲をMichaelのコーラスで聴くには、やはりこの2人がジョイントしていないと。この日のsetlistは以下の通り。
People Get Up and Drive Your Funky Soul/ Who's That Lady/ Sweet Soul Music/ I Keep Forgettin' (Every Time You're Near)/ Trouble Man/ Kid Charlemagne/ The Same Thing/ Miss Sun/ I Heard it Through the Grapevine/ You Never Can Tell/ Summer in the City/ If You Don't Know Me By Now/ What a Fool Believes/ Hey Nineteen/ Love T.K.O./ (Take a Little) Piece of My Heart/ Peg/ Lowdown/ Takin' It to the Streets/ Reelin' in the Years/ Lido Shuffle/ Pretzel Logic/ Thank You (Falettinme Be Mice Elf Agin)/ Them Changes/ People Get Up and Drive Your Funky Soul
Duran Duran(笑)。まあMTV世代の僕としてはDuran Duranの曲はほとんど知っているわけで、visualはともかく音楽的にも親しみのあるバンドである。しかし、だからと言ってライブを見に行くかどうかということになると全く別である。だってDuran Duranのライブに何を期待するというのだろうか?もしたまたまラジオを聴いていて、先行予約が行われなければ、そして電話がpiaに繋がらなければ、Duran Duranのライブに行くことはなかっただろう。しかし皮肉なもので無欲の時こそ、案外、繋がるものである。そして幸運にも僕はアリーナほぼ中央の前から9列目という好座席を手に入れた。
そうそう、今回のライブのポイントはメンバーがオリジナルの5人に戻って初めてのライブと言うことである。その前の5人でのショウがLive Aidというのだから僕が高校生の時...、はるか昔である(笑)。メンバーが登場すると女性の歓声が一際、目立つ。まあ、当然であるが。しかし意外に男も多い。さすがにツアーの初日とあって、ミスも多い。Hungry Like The WolfでSimonが歌を間違えたのは笑った。何回歌ってるんだよ、この歌。
とはいえ、意外にバンドの演奏は安定しているように思えた。前に座っているからだろうか?今回のツアーはAndyが頑張っているように思えた。Backing Vo.も積極的にしていたし、演奏もAndyのHard Rockっぽいギターが引っ張っているような感じである。そういう意味では普通のバンドと言えば普通のバンドだし、単なるナツメロ・バンドにならないように新境地を開拓しているように見受けられた。
しかし、しかしである。ずっと演奏を聴いていると一番オイシイのは黙々とKeybordsを弾いているNickではないだろうか?あの80年代的なピロピロしたシンセ音をこんなアリーナで鳴らしているなんて、他のバンドではありえない。懐メロだろうがなんだろうが、他のバンドをやらないことをやっているのが一番、偉いのである。そういう意味では妙に時代に合わせようとするのではなく、ガンガン、シンセ鳴らした方がいいんじゃないか?ショウも後半になってヒット曲連発になると会場も大盛り上がり。Careless Memoryみたいな曲ではシンセもうなるのであるが、あ、Andy。お前、「俺はHard Rockがやりたい」とか言ってバンドを辞めたくせに、そのnew waveっぽいギターのカッティングして、めちゃくちゃ楽しそうじゃないか!
そんなわけで演奏の質や曲よりも、シンセに魅了されたショウでした。ただし、Save A Prayerは相変わらずいい曲ですね。当日のsetlistは以下の通り。
FRIENDS OF MINE/ HUNGRY LIKE THE WOLF/ PLANET EARTH/ COME UNDONE/ WHAT HAPPENS TOMORROW/ NEW RELIGION/ VIRUS/ WHITE LINES/ WAITING FOR THE NIGHT BOAT/ STILL BREATHING/ SAVE A PRAYE/ ORDINARY WORLD/ VIEW TO A KILL/ REACH UP FOR THE SUNRISE/ NOTORIOUS/ WILD BOYS/ CARELESS MEMORIES/ RIO/ REFLEX/ GIRLS ON FILM
アメリカ滞在の間で、最も「アメリカ的な音楽体験」になりそうなのが、今回のBob Dylanのコンサートだ。それはもちろん、Dylanがアメリカを代表するアーティストということもあるのだけれど、今回は特に会場が素晴らしく、Chateau
Ste. Michelle Wineryにある広場で行われるから。
このワイナリーはワシントン州を代表するワイナリーでシアトル観光の一環として来る人も多い。夏の間はサマー・コンサートということで色々なアーティストがショウをやるのだが、今年のブッキングは特に凄い。Dylanの前にはPaul
Simonで、この後にChicago、Don Hanley、Earth, Wind & Fire、Culture Club(!)とかこれはもう只事ではない。
それで広場には予め椅子が置いてある席と、自由に芝生に座る席とがあるのだが、後者の方はだいたい折り畳みの椅子を持ち込んでみんな観ている(僕もこっち)。野外のショウは天候次第ということがあるが、今日のシアトルも昨日に引き続き快晴。Dylanが出てくる頃には陽もだいぶ落ちて、風も涼しくなってくる。ワイナリーだからもちろんワインもみんな飲んでいる(僕は一人で車を運転してきたので、ワインは諦めた。残念)。
こんな環境で、Dylanが目の前で歌ってくれるのだ。これを幸せと言わないで何が幸せだろうか。まあ年齢ということもあるが、Dylanはコンサートではレイドバックした音楽をやっている(でも声は力強い)。これを例えば、ホールなんかで聴いていたら少し退屈してしまうかもしれない。でも今回は椅子に座って、ステージや空を眺めながらDylanの歌を聴いていれば、いいのだ。別に盛り上がるかどうかとか関係ない。今回のショウで演奏した曲は知らないものが多かったが、そんなこと関係なく楽しめた。
さすがにDesert Tripは観にけないのだが、Paul McCartneyとThe Whoは観たから、出演者の半分は自分で観たことになるのでこれでいいことにしよう。