「Who Else !」がアルバムとして10年ぶりくらいだと思うが、来日公演もそれくらい久しぶりではなかったか?とにかく僕にとっては初めて見るJeff Beckである。ツアーのメンバーは、アルバム制作にも関わっていたJennifer Batten(g)、Steve Alexander(ds)、Randy Hope Taylor(b)を含めた4人。
それにしてもJeffってツアーするのも久しぶりだし、年齢も50を超えているというのにguitarのプレーは絶好調。あの歳で、あんな大音量の音楽をバックにアグレッシブに弾きまくるなんて、常人じゃないな。普通、歳とってくると、もっと静かなのをやりたくなるじゃないですか。Claptonみたいに。まあClaptonはそれでいいとしても、音楽のベクトルが全く違う方向に向いてるのがすごい。
セット・リストは、新作からかなり演奏していて、それと割と最近の作品(と言っても10年以上、前)からも積極的に取り上げていた。新作からのナンバーも良かったけど、個人的には「Led Boots」が聴けて幸せ。
昨年の「Who Else !」に伴うツアーは、「ようやくBeckが生で観れる」という思いと、しかしBeckの寡作ぶりを考えれば「次に観れるのはもっと先だろう」という思い両方が交錯していた。しかしその予想はいい意味で裏切られ、わずか1年余りのインターバルで「You Had It Coming」が発売され、日本にもツアーで来てしまうことになった。
CDのコメントでも書いたが「You Had It Coming」は前作「Who Else !」の延長上にあり、ライブのメンバーもドラマーを除いて変わっていないことからライブの内容自体はだいたい予想のつく展開であった。テクノ色の強いサウンドをどうやってライブで再現するかに興味があったが、結構、テープも使っているようで最近の楽曲に関しては意外なアレンジが施されているわけではなかった。そのせいか1曲1曲もアドリブで長々と引き延ばすのではなく、コンパクトにまとめている感じであった。こう書くと予定調和的な演奏でつまらないように思われるかもしれない。実際、プレーヤー同士のケミストリーがあったかと言うと、それもあまりなかったような気がする。だからその点が残念と言えば残念ではある。
しかしライブにおけるBeckのプレイは冴え渡っていたし(ただし最初の数曲はちょっとヤバい感じ(笑))、本人も至ってご機嫌な様子だった。アンコールも含め90分のセットは短めではあるが、そのせいか最後までダレることはなかった。具体的には新作からだと「Nadia」や「Loose Cannon」が良かった。唯一の歌入り「Rolln' And Tumblin'」(ギターのJennifer Battenが歌っていた)はセットの中でいいアクセントになっていた。前作からだと「Brush with The Blues」が一番の拍手を集めていたし、その他にもアンコールの「Blue Wind」は盛り上がっていた。それと僕は本編最後にやったThe Beatlesのカバー「A Day in The Life」も好きである。
ところでInternet上でも議論になっているようだが、実はやはりドラマーの交替はやはり影響を与えている。今回はAndy Gangadeenという人が叩いているが、前回のツアーから1年しか経っていないこともあって、前回に参加していたSteve Alexanderと容易に比較できてしまう。Andyが重めにシンプルに叩くのに対して、Steveは派手だけどバンド全体を引っ張っている感じがした。したがって今回はサウンドの核がどこにあるかよくわからないが、結局、Beckのプレイの出来不出来でサウンドの印象が決定されてしまうのに対して、前回はいい意味で出来上がったサウンドの上でBeckが遊んでいるような気がするのだ。この辺は好みの問題だと思うけど、僕はSteveの方が好きかな。もっとも今回のツアーはまだ始まったばかりだし、Andyが慣れてくればまた印象も変わるのかもしれないが。
近年は新作発表のたびに来日していたのに、なぜか「Jeff」のツアーでは日本に来なかったので、久々の来日。特にそのツアーは「Guitar Shop 」のトリオだけに来日公演がなかったのが残念だった。しかし、今回のツアー・メンバーはdrumsがVinnie Calaiuta、bassがPino Palladino、key.がJason Rebelloと一流揃いじゃないですか(あと、地味にvocalでJimmy Hallがいたけど)。これはやはり観に行かなければ。
とはいえ、このメンバーでのライブはまだ始まったばかりで、全員が息が合った演奏とまでは必ずしもいかないのが残念なところ。1曲のサイズは比較的コンパクトで、ジャムりながら演奏を引き延ばすというシーンはそれ程、多くなかった。それでもやはりVinnieのドラムは凄い。やはり前2回のツアーのドラマーとは格が違う。複雑なリズムを叩きながらバンドをうまく引っ張ってる。それでもJeffは「もっと!」という感じでVinnieを煽っていたシーンが何回かあった。それからアンコールではjenniferが飛び入りしていた。
ところで肝心のJeffのプレイだが、相変わらず独特のトーンで弾きまくっていた。何といっても一番、聴きたかった「Scatterbrain」をやってくれたのが嬉しい。同じく「Blow by Blow」からの「Diamond Dust」も美しい。それからアンコールの「People Get Ready」も泣かせるし、続く「Over the Rainbow」もClaptonとは違う良さがあった。それにしても還暦過ぎたとは思えないルックスとプレイですね。「枯れる」ということを知らないようです。
セットリストはキャリア総括的な内容だった。Beck's Bolero/ Stratus/ You Never Know/ Cause We've Ended as Lovers/ Rollin' And Tamblin'/ Morning Dew/ Behind the Veil/ Two Rivers/ Star Cycle/ Big Block/ Scatterbrain/ Nadia/ Angel (Footsteps)/ Led Boots/ Diamond Dust/ Hey Joe/ Manic Deprssion/ Goodbye Pork Pie Hat/ Brush with The Blues/ Blue Wind/ Earthquake/ Blast from the East /Going Down/ People Get Ready/ Over the Rainbow
Bowieも今までライブをみたことがなかった。特に最近、「Bowie再評価」説が定着しているので、ぜひ観に行かなくてはと思って足を運んだ。しかし再評価って何なんだろう?確かにグラム・ロック時代のBowieは素晴らしいし、その時代にファンだった人からすれば、80年代以降はイマイチなのかもしれないけど、Let's Danceだっていいアルバムじゃないですか。
それはともかく、数年前、TVでやっていたBowieのライブがなかなか良くて、今回も基本的にそのバンドでやってくるということだったから、かなり期待して行ったのだった。TVの印象と同様、ドラムのS. Campbellがバンドを引っ張っている。ただ、S. Campbellがタイトな演奏をしても80年代とは様相が違うようで、China GirlなんかもCDとはかなり違ったアレンジになっていた。Bowieもあまりシアトリカルになり過ぎずに、適度に余裕を持たせてステージを展開していたように思われる。
最近のアルバムからもたくさんの曲をやっていたが、それらの曲は確かに昔の曲とは趣が異なる。しかしどちらがいいとは言えない辺りが、Bowieが現役であることを意味しているわけで、50代後半とは思えない、活気に溢れたショウだった。StonesやClaptonなど、ベテランのミュージシャンもなかなか元気ですね。
セットリストは以下の通り。Rebel Rebel/ Hang On To Yourself/ New Killer Star/ Fame/ Cactus/ All The Young Dudes / China Girl/ Reality/ 5:15 The Angels Have Gone/ The Man Who Sold The World/ Hallo Spaceboy/ Sunday/ Heathen (The Rays)/ Under Pressure/ Slip Away/ Looking For Water/ Quicksand/ The Loneliest Guy / Be My Wife/ Sound And Vision/ Ashes To Ashes/ I'm Afraid of Americans/ Heroes/ Bring Me The Disco King/ A New Career In A New Town/ Five Years/ Suffragette City/ Ziggy Stardust
JBはデビュー50周年だそうである。ということは、諸説あるがほぼ70歳であることになる。70歳過ぎてツアーやり続けているのもあまりに超人的である。とはいえ、CDやビデオで見た、往年の迫力あるライブの再現というわけにはさすがにいかない。強烈なシャウトもなければダンスもわずか。マントショウも本当に一瞬であった。今回は2階席後方で見ていたのでよくわからなかったが、ネット上の情報によれば、JBは激ヤセしていたという話もある。もしかしたら体調も万全ではなかったのかもしれない。
しかしやはり見るべきものはあった。まず第1に「これはR&Bの伝統的スタイルなのだなあ」と感じさせるライブであった。ホーンセクションやら女性コーラスはもちろん、ダンサーまでいて(しかもこの女性ダンサーがちょっとかわいいかもしれないが踊りはそれ程うまくなくてB級っぽいのが最高!)、まさにビッグバンド。メンバーは年々変わっているのだろうけど、ずっとツアーで演奏してますみたいなつわもの揃いであるのが頼もしい。セットリストなどあってないようなもので、JBの指図一つで次々と曲が変わっていく様子は、普通のロックのライブとはまた違って、R&Bの歴史を感じさせるスタイルだった。
また第2に、JB自身もR&Bの歴史をライブで観客に伝えていこうという意図的な姿勢が感じられて感動的だった。JBといえばファンクだが、ライブで演奏された曲にはジャズ風もあったし、一方でラップもちょっと入ったりと言う具合で、R&Bの様々なスタイルをJB自ら紹介するという趣向だったのだ。もちろん上にも書いてあるとおり、年齢が年齢なだけに、ファンク一筋で2時間のショウをやるのは無理があるからかもしれない。でも、ライブの途中で「Ray CharlesもWillson Picketもいなくなっちゃたけど...」みたいなことを言っていたが、この世代で(というかR&Bの創始者世代で)未だに現役でツアーをやっているのはJBしかいないのだ。
とかそのような感慨を抱きつつも、最後の20分にわたるSex Machineは単純にその迫力で圧倒された。JB万歳。