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U2

Pop (PHCR-1835)

U2の代表作と言えば「The Joshua Tree」に相場は決まっている。その「The Joshua Tree」と比べたセールスの低下、そしてこの「Pop」発表後に発売された80年代までのgreatest hits集のヒットという事実からコアなU2のファンのこの「Pop」に対する評価は低いようである。殉教者的な誠実さを彼らに期待するのであれば、まあ1st singleの「Discotheque」のPVはなにしろ「ディスコ」なんだから確かに格好いいとは言えないかもしれない。
この「Pop」を聴いていると確かに1曲目の「Discotheque」のインパクトが強いが、しかしアルバム全体としてはソングライティングのあり方が以前とそう変わった印象は受けない。曲だけ取り出せばU2はあくまでU2のままではないだろうか。それにもともと「The Joshua Tree」やその前の「The Unforgettable Fire」だってプロデューサーにBrian Enoを起用していたように、もともと彼らはただ4人が大きな音でロックを演奏することには否定的で、その時の旬の音で自分達の音楽を聴かせることに自覚的な人達であるような気がする。
そして90年代になって「Achtung Baby」、「Zooropa」では積極的にテクノロジーへ接近し、この「Pop」では90年代後半から明らかにポップミュージックの主流となったテクノとバンドサウンドを試みたというだけのことである。いや、「だけ」と言うより自分達の音楽が「最も音楽的に活気ある場所」=「クラブ」でオーディエンスの耳に届けたいというのはミュージシャンにとって当然の欲求ではないだろうか。その意味で彼らのこのアルバムにおけるアプローチはミュージシャンとして極めて「誠実」じゃないかと思う。まあ傑作とまではいかないかもしれないけど、ロックバンドからテクノへのアプローチとしてはよくできた作品だと思うし、だからこの作品の評価を誤ってはいけないと僕は言いたいのだ。

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