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Boz Scaggs

Dig (Vergin)

Bozというと「Mr. AOR」などと言われるが、実際に僕のFavoritsもグルーヴィーな「Lowdown」とか華麗な「Simone」とか激甘な「We're All Alone」とか、まあよく知られた定番だったりする。こういった名曲は、Bozのsongwritingもさることながら、D. FosterやTOTOなどバックのミュージシャンの貢献が大きいのは言うまでもない。特にJeff Porcaroのドラムス。これも今更ではあるが、Bozの歌を引き立てていたのはJeffの唯一無比のグルーヴであった。
さてBozの4年ぶりのこのアルバム。残念ながらJeffはもういない。しかしこのCDを買うポイントとなったのがプロデューサーとして参加したTOTOのD. Paichの存在である。Bozの全盛期を支えてきたTOTOのメンバーに加えて、さらに名ギタリストにして名プロデューサーのD. Kortchmarの参加はこのCDの出来を保証したも同然、と思って聴き始めたが、実際にその感想は期待を裏切らないものであった。確かにJeffのグルーヴがないのは寂しいし、プログラムされたリズムは斬新なものとは言いがたいが、今日的なテイストを十分感じさせるものである。まあSteely Danのように生ドラムにこだわるというのも立派だが、「過去の人が無理して頑張ってみました」という感じはない。
CDの雰囲気は本人の言葉によると「Dark Beauty」。なるほどここには過去の名曲にあった激甘な感じや華麗でお洒落な雰囲気はない。どちらかと言うと渋い。しかしCDに収録されてる曲はバラエティに富んでいて、地味というわけでもない。個人的には「Miss Riddle」や「Desire」、「Thanks to You」などスローな曲が好きである。この夏、苦い想い出を抱えた人に。避けるのでもなく癒されるのでもなく、そんな心の痛みに正面から向き合うためのBGM。という感じかな。

Steely Dan

Two against Nature (BVCG 21003)

音楽ファンにとって残念なことの一つに、せっかくあるアーティストのファンになったのにそのバンドは既に解散していたとか、メンバーが死んでしまったというのがある。高校生の時に彼らを初めて知った僕にとってSteely Danはそういうバンドだった。バンドは1980年の「Gaucho」を最後に解散していたし、もともとツアーをやらないバンドだからライブを観ることなど当時は夢のまた夢であった。しかし彼らは再結成し、以前は全くやらなかったツアーを積極的に行うようになった。日本にも今年で3回もやってきた。そしていよいよ2000年に20年振りの新譜が出た。それがこれである。大げさだが生きてて良かったと思った。
発表当時、新譜は以前の彼らと同じという声もあれば、全然違うという声もあった。D. FagenとW. BeckerのJazz趣味を反映した複雑なコード進行や綿密なアレンジは確かに以前と変わりない。もともと彼らはソングライターとして出発しているから、自分達で演奏することに拘りはない。したがって解散前の後期の作品では、演奏は一流のスタジオミュージシャンに任せて自分達の理想とする音作りを追求していたのである。今回の作品もバックを固めるのは(特にドラムス)一流のミュージシャンである。
その一方で以前と異なるのはW. Beckerのギターがフューチャーされている点である。Beckerは味のあるギターと言えばその通りだが、テクニック的にはやはり超一流とは言いがたい。しかしツアーをやるとなれば当然、彼もステージに出なければならないし、ライブをやるとなると新曲もそこで演奏されることを前提に書かれることになるのだろう。これは新譜製作前に行った2回のツアーが影響を与えたと思われる。彼らは既に一度、「Aja」、「Gaucho」でピークを迎えている。同じことを繰り返す必要もないだろう。個人的にはバンドの前向きな変化と捉えたい。実際、アメリカでも日本でもそこそこ売れているようである。良質な音楽を求めるファンはまだまだ多いという気にさせられる。

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