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Radiohead

Kid A (Parlophone/ EMI)

おそらく2000年1番の話題作・問題作であると多くの人が認めるのはこのアルバムであろう。ロックバンドのフォーマットから離れてテクノの手法を全面的に取り入れたこのサウンドにコマーシャルな要素はほとんどない。しかし多くの人が指摘するように、1曲目の「Everything in Its Right Place」のイントロが鳴った瞬間にこのアルバムが只者ではないことがわかる。ロックの創世記においてまだロックが一般的ではなかった時、そしてオリジナルなサウンドが次々生まれていた時、一言で言えば刺激的な、あるいはリスナーが心地よさではなくむしろ神経を逆なでするような感覚を味わっていたとしたら、それはきっとこんな感覚だったのだろうと思わせる音である。そしてこのアルバムの楽曲はリスナーに特定の感情やメッセージを訴えない。無機質と言えば無機質だが、そのぶんリスナーの感情を増幅させる役割を果たしているような気がする。怒っている時に聴けばその怒りはさらに増幅し、悲しいときに聴けば一層、落ち込むだろう。少なくともリラックスしたい時に聴くもんじゃないですね(笑)。
ところで指摘しておきたいポイントの一つはこのアルバムが全世界的に売れているという事実である。本国イギリスは言うまでもなく、ほとんどプロモーションが行われなかったアメリカでもチャートで1位になっているし、もっと驚いたのは日本でも邦楽に混じって3位になったらしい。世界的に音楽市場はアイドルやhip hopが席巻していて、しかも国によってセールス状況が異なるのが普通の現状にあって、なぜここまで全くポップではない(当然カラオケ仕様であるはずもない)このアルバムが売れるのか、その答えはわかりそうでわからない。
それと気になるのはRadioheadの今後である。Thom Yorkeは「ロックなんてゴミだ」とか言ってこのようなサウンドにたどり着いたらしいが、ぜひともU2のようにいつか再びロックの王道を極めてほしい。このままロックがつまらないからと言ってバンドを解散してソロなんかになってもらっては困るのだ。彼らはきっと単なる原点回帰ではない王道のロックを作れる能力があるのだから、陳腐な言い方ではあるがぜひ頑張ってほしい。

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