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Madonna

Music (Maverick 9362-47865-2)

今さらMadonnaについて何を言うべきことがあるだろうか?既にMadonnaに関してなら音楽は言うまでもなく社会学では研究の対象になっているだろうし、そう言えば経済学でもA.E.R.に載っていた論文に「Material Girl」の歌詞が引用されていたなあ(笑)。それはともかくMTV世代の僕はデビューした時からMadonnaの曲は意識しなくてもずっと聴き続けているわけだが、ということはMadonnaはずっとヒットを続けていることになる。デビュー時はあのルックスでアイドル的な要素も完璧だったわけだから売れるのは当たり前としてもそれだけで10何年も第一線で活躍しつづけるのは無理である。
さて何枚目になるのかわからないがこの「Music」は僕が初めて買ったMadonnaのオリジナルアルバムである。なぜ今さら買ったかと言うとアルバムの1曲目でタイトル曲の「Music」と、先行発売されていてアルバムの最後の「American Pie」がとても気に入ったからである。「Music」はテクノ、エレクトロのビートがシャープに決まって、特にリズムのブレイクの仕方などめちゃくちゃ絶妙で、しかしMadonnaの声が乗るとやはりポップになってしまうところが凄い。絶対、フロアで受けただろう。一方、「American Pie」は70年代の誰かのヒット曲のカバーである。サウンドはプロデューサーのW. Orbitらしく今風のアンビエントな雰囲気はあっても結果的には正統的なアメリカンポップスの印象である。この曲でMadonnaは声を押さえ気味に、しかし中音域を使って丁寧に歌っているのが印象的なのだが、そこで気がついたことがある。
そう、Madonnaは実に正統的なポップ歌手であることであることに今頃気がついたのである。Madonnaというと音の印象や過激に思える言動で、どちらかと言うと先鋭的な存在であるような気がしていたがどうもそれだけではない。正統的な女性ボーカルというとCarpentersのK. Carpenterが思い浮かぶが、実はMadonnaも彼女に匹敵する存在なのではないか?確かにK. CarpenterとMadonnaでは見た目も家庭環境も言動もかなりの点で正反対だが、しかしあの声の中音域の説得力は両者互角というのが僕の感想である。そういう正統的な部分がなければデビュー以来、売れ続けるという事など有り得ない。そんなことを考えながらもう一度、このアルバムを最初から聴いてみると、最後の「American Pie」が始まる瞬間は実に感動的だ。どんなサウンドでどんな歌を歌おうと彼女の本質は「正統的ポップ歌手」であると主張しているように聴こえるからである。

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