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Daft Punk

Discovery (Virgin 8496062)

松本零士を愛するフランス2人組の新譜である。MadonnaをプロデュースしたMirways同様、フランスではフィルターで強調されたハウスサウンドが人気のようだが、これが世界のマーケットにも浸透しつつあるようだ。今回の彼らのサウンドはクラブ系と言っていいと思うが、近未来的、ただしまさに「銀河鉄道999」や「宇宙戦艦ヤマト」と同様にどこかノスタルジックな雰囲気が漂っている。この場合、ノスタルジックな雰囲気というのが70年代後半から80年代のサウンドを大胆に引用していることから生まれている。
大ヒットシングルの#1、「One More Time」って、これAverage White Bandの「Let's Go Round Again」ですよね。#2はディスコかと思えばいきなり、タッピング奏法を模したサウンドがかぶさってくる。つまりDisco+Heavy Metal?#5なんかいかにもLinn Drumって感じですよね。と思えば#6は10CCだし。#9のAORなんかよくできてるなあ。#12は「Rock It」ですか?と、まあこんな感じで80年代ネタの山である。当然のことながらこういうことを指摘して「パクリ云々」ということが言いたいわけではない。むしろこの徹底的に現代的なサウンドはどこから来るのか本当に不思議である。
僕が高校生くらいのとき、恥ずかしながら70年代の音楽を馬鹿にしていたのと同様に、グランジが席巻した90年代にあって80年代のサウンドは嘲笑の対象であった。当時は新しく聴こえたサウンドもやはり今、聴くと正直言ってイマイチの感は僕でも免れない。元JapanのD. Sylvianが言っていたが「当時の音源はリヴァーブとエコーをかけ過ぎ」なんだそうだ。そうだよな。ま、当時はあれが格好良かったんだけど。ビッグなスネアの音とか。しかし去年のBeckの「Midnight Vultures」くらいからいよいよ本格的に80年代の再評価が始まっているのだろうか?でもということはもしかしたら、当時の音源をリミックスするだけで、今でも通用するサウンドに生まれ変わるのかな?ともかくこのCDは80年代を愛した僕と同年代の人にお薦め。中でも「One More Time」が最高です。

The Doobie Brothers

Sibling Rivalry (VICP-60732)

70年代を代表するバンドというとThe Eagles、Steely DanそしてThe Doobie Brothers。どれも80年代に入って一度解散して、再び復活したバンドである。The Eaglesはバンドが背負っていた時代背景みたいなものが大き過ぎたために今でもいい意味でナツメロバンドとして通用する。Steely Danは昔から先鋭的過ぎたためか、昔のままでも現代で十分通用する。しかし前期は豪快なロック、後期はAORと音楽性を変化させたためなのか、あるいは特にメッセージを打ち出したわけでもなくバイク好きのための「マリファナ兄弟」なる名前をつけてしまったためなのか、Doobiesが先の2バンドと比べて「現代的」であるわけもなく過小評価されているような気がするのは僕だけだろうか?
「Sibling Rivalry」、日本語では「競い合う兄弟」というタイトルのこのCDは再結成後3枚目、しかしながらほぼ10年ぶりのアルバムである。今回のアルバムの特徴はこのタイトルに集約されている。Doobiesのように時代の最先端をもはや走ることのない(走るべきでもない?)ベテランバンドはいかにして音楽活動を続けていくべきだろうか?ライブで昔のヒット曲をやればファンは喜ぶ。しかしそれだけではただのナツメロバンドである。それとも流行に乗ってテクノっぽいサウンドにしてみるか?考えるだけ馬鹿馬鹿しい。Doobiesの(前期の)魅力はツイン・ドラムスによる強固なリズム隊、トリプル・ギター、そして絶妙のコーラスなのだ。ではどうしたらバンドは進化できるだろうか?
その答の一つは今までメンバーがやったことない役割を新たに担わせることである。このアルバムではギターのJ. McFeeがリードヴォーカルを、またドラムスのK. Knudsenが3曲も書いているだけでなく、2曲でやはりリードヴォーカルを勤めている。これまではギターのT. JohnstonとP. Simmonsがずっとフロントマンであったことを考えれば、このアルバムではメンバーが従来の役割を越えて様々な形でアルバム製作に貢献していることになる。だから「Sibling Rivalry」なんだろう。結論から言うとこの試みは結構、いいんじゃないだろうか。サウンドは伝統的なDoobies流だがヴォーカリストが変わったり、新たなソングライターが加わることで雰囲気が違ってくるような気がする。もしそのことがわかるまで10年かかったとすれば、バンドを持続させるのも大変である。いかにもシングル向きの曲は少ないのでどちらかというとDoobiesの歴史の中では渋いアルバムになるかもしれない。個人的には12曲目の「Rocking Horse」が好きだ。リフに乗ってギターソロのハーモニーが聴けるなんてトリプルギターバンドの特権だがもうこれだけで最高。

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