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Eric Clapton
August (Waner Bros. 7599-25476-2)
Claptonがなぜここまで人気があるかと言うと、その理由の一つとして彼の劇的な人生に共感する人が多いからという説があるが、もう一つは彼が持つ音楽的資質としてのポップさも無視できない。Claptonがブルースから最も強く影響を受けていることは自他ともに認めるところではあるが、それでは純粋なBlues
Musicianかというとそうでもない。基本的にブルースは商業的には売れないのである。しかし例えばあの「Tears
in Heaven」だってブルース的な悲嘆と言うより、息子の死でさえ一歩引いて客観的に見ているというか、どこか乾いたニュアンスがある。あるいはsoloはブルース調だけど曲自体はポップという「Change
The World」で、他人が作曲したにも関わらず両方の要素を無理なく調和させているのはClaptonのなせる業だろう。
1986年に発表したこの「August」は、彼のキャリアの中で最もポップ色を前面に打ち出したアルバムである。プロデューサーにPhil
Collinsを起用したのも正に適役である。しかもただポップなだけでなく、デュエットの相手がTina
Turnerだったり、MotownのソングライターであるL.
Dozierの曲を2曲取り上げたり、あるいはその後、数年に渡ってバンド活動を共にするN.
EastやG. Phillinganesなど黒人ミュージシャンの起用など、かってないほどR&B的なブラックミュージックへの積極的なアプローチが見られるのもこのアルバムの特徴である。
その意味で象徴的なのが12曲目の「Behind The
Mask」。もちろん、YMOの「あれ」である。興味深いのは作曲・作詞のクレジットに「Jackson」という名前があることであるが、何を隠そうこの「Jackson」はMichael
Jacksonである。実はMichaelはYMOのこの曲が気に入って、オリジナルの歌詞を自ら書き直した上で「Bad」に収録することを計画していたらしい。だが、それは実現しなかった。代わりに当時、Michaelのレコードでkeybordsを担当していたG.
Phillinganesが自分のアルバムに収録したのだが、このPhillinganesつながりでClaptonが自ら歌うことになったと想像される。一般的にこのアルバムも決して評価が高いわけではないが、Claptonのポップ色全開という点で僕は無視できないと思う。それにしても坂本龍一、M.
Jackson、P. CollinsにECと豪華な組み合わせじゃないですか。
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