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Jeff Beck

You Had It Coming (ESCA 8232)

Jeff Beckはヴォーカリストを含むグループを結成していたこともあったが、特に「Blow by Blow」以後、一貫してギターによるロック・インストゥルメンタルに拘り続けているギタリストである。ギタリストのソロアルバムというと早弾きとかテクニック重視になりがちである。個人的にはそれも嫌いではないが、やはりそれでCD1枚だとさすがにつらいものがある。しかしJeff Beckのアルバムはそういったギタリストの自己満足的な作品とは程遠い所にある。ロックというフォーマットに基づきながらJeffでしか成しえないギターによる音楽表現に成功しているからである。
さて1999年に10年振りの復活作「Who Else !」を発表して以来、なんと今作はわずか1年ちょっとのインターバルである。御大のテンションの高さは推して知るべしであろう。前作で導入したテクノを今回は前面に押し出し、Simply Redでも活躍したA. Wrightをプロデューサーに迎え、バックのサウンドは基本的にプログラムによるものである。ヘヴィなリフが曲を引っ張っていく1曲目の「Earthquake」、ジャングル・ビートに合わせて早弾きまくる「Left Hook」などそのテンションの高さを反映した曲があれば、「Nadia」のようにインド・テイストをギター1本で弾ききる表現豊かな曲もあって全く飽きない。
それにしてもどうだろう。Beck、既に56歳である。ルックスも昔とはほとんど変わらないのは驚きであるが、この音楽的な柔軟さが若さの秘訣であろう。しかしながら同時にBeckは極めて頑固である。Claptonのように売れることで自分の音楽マーケットを広げて行くやり方もあるだろうが、売れなくてもあくまでギター1本の表現に拘り続ける。確かにポップ音楽市場においてロックは、またその音楽的な中心であるはずのギターの存在感は、どんどん無くなってきている。しかしBeckのこの絶妙な音楽に対するアプローチのバランスが今も革新的ギター音楽を産み出す源であるならば、Becはこれからもすばらしい作品を作るだろうしまだまだロックは死なないだろう。

Stephen Bishop

Bish (MVCM 21038)

Stephen Bishopと言っても知っている人は少ないかもしれない。もともとはArt Garfunkelに曲を提供するなどソングライターだったのだが、1970年代後半には「On and On」でデビューしている。こっちは「Save It for a Rainy Day」なんかが好きな曲である。で、この「Bish」は1978年に発表された2枚目のソロアルバムである。僕も昔からこの人の名前は知っていたのだが、つい最近までCDを聴いたことがなかった。しかし知人に強く勧められ、実際に梅田の某ソウルバーでマスターにリクエストして聴かせてもらってすっかりはまってしまった。
この人の魅力は声の切なさとその声にマッチした歌詞だろう。このアルバム全体にいい曲が多いのだが、個人的なお気に入りは最後の「When I Was in Love」である。彼自身のギターとMarty Paich(TOTOのD. Paichの父親)がアレンジしたstringsだけで歌われる曲はあまりにも切ない。
単に失恋しただけではない。恋すらできなくなると人生は余計につらいものに感じられる。そして「恋をしていた時、僕はまだ初心者だったんだな」と歌ってこの曲は終わる。この曲を聴いて切なくなるには僕はまだ早いのかもしれないけど、またこれを聴いて真剣に涙してしまう時がいつか来るのだろう。でもこういう男の切ない曲ってもっとあってもいいと思うけどね。

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