介護・保育 100万人整備?

福祉削って何が「総活躍」

 安倍政権が掲げる「1億総活躍社会」に向けた政府の緊急対策が26日、まとまりました。「介護・保育 100万人分整備」などと報じられていますが、その中身は―

 首相は「GDP(国内総生産)600兆円」「希望出生率1.8」「介護離職ゼロ」という「新3本の矢」を掲げて、具体策を検討してきました。

 「介護離職ゼロ」では整備目標を、現在の「38万人分」から「50万人分以上」に引き上げました。介護施設ではない「サービス付き高齢者住宅」など8種類の施設・在宅サービスを寄せ集めたものです。しかし、特別養護老人ホームの待機者だけでも50万人を超えており、ニーズには程遠いものです。

 「希望出生率1.8」では、保育の受け皿を40万人分から50万人分に増やしました。

 しかし、出生率1.8になれば保育利用者は100万人以上増えるとみられており、遠く及びません。50万人分は「認可保育所以外の多様な受け皿を整備」として、ニーズが一番多い認可保育所には背を向けています。

 「GDP600兆円」では、最低賃金を年率3%ずつ引き上げて全国平均1000円をめざすとしました。しかし、3%では物価上昇率と同程度で実質賃金の増加にはなりません。ワーキングプア(働く貧困)解消どころか、内需拡大にもならないものです。

 介護職員は全産業平均と比べて賃金が月10万円も低く、職員を確保できないため、高齢者の受け入れを制限している施設も少なくありません。現状でも20年度には20万人も不足する見通しです。保育でも7万人不足します。

 ところが緊急対策には、人材確保に最も効果がある賃金の引き上げが盛り込まれていません。介護福祉士をめざす学生に対する学費貸与制度の拡大などにとどまります。

 保育士でも、最低2人の配置基準を緩和したり、小学校の教諭も保育士として働けるようにするなど、抜本的な増員にはつながりません。

 安倍首相は「安心につながる社会保障」と繰り返しています。しかし、実際にやっているのは社会保障の削減であり、国民をあざむく姿勢が問われます。

 今年度から介護報酬を過去最大規模で削減し、介護事業所の閉鎖やサービス削減など利用者に深刻な影響を広げています。来年度改定の診療報酬も削減をねらっています。

 非正規労働者の「正社員転換」も掲げていますが、実際には、労働者派遣法を改悪し、「生涯ハケン」「正社員ゼロ」をつくりだそうとしています。

 年金では、支給額を毎年抑制し続ける「マクロ経済スライド」を発動したばかりです。

 ところが「低年金者を支援」として1千万人の低年金者に給付金を配ることを検討しています。給付金は一度限りで、貯蓄に回る可能性もあり、マスコミからも「持続的な消費拡大につながらない」「露骨な選挙向けのばらまき」と指摘されています。

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