メグレ警視の事件簿
Aug.5th.2001
書籍名 | 時期・天候 | 事件内容 | 備考 | 書籍情報 |
メグレと殺人者たち (メグレ警視シリーズ1) Maigret et son mort |
2月中旬 コンドルド広場 |
チビのアルベール・ロシャン殺害事件 メグレのところにある男から電話がかかる。自分は狙われているというのだ。電話は度々かかり、保護を求めていた。メグレは気ががりになり、手配をするが間に合わず、男は死体で見つかる。 |
1953年作 メグレ50歳 |
河出書房新社版 長島良三訳(1976) |
メグレ間違う (メグレ警視シリーズ2) Maigret se trompe |
11月中旬朝8時 カルノー街、雨 |
ルイーズ・フィロン殺害事件 高級住宅街のアパルトマンで通称リュリュが至近距離から頭を撃たれて死んだ。調べて行くと被害者はこのアパルトマンには相応しくない元娼婦であることやピエロというバンドマンの恋人がいたとわかる。やがて、上の階に住む医学部のグーアン教授の愛人であったことがわかり、事件は混迷してゆく。そんな時メグレにポール医師から、娘が妊娠していたとの連絡が入る。 |
1953年作 メグレが何を間違ったのか不明だが、身分の違いから来る人間の生活への執着が見事に描かれた傑作 メグレ54歳 |
河出書房新社版 萩野弘巳訳 (1976) |
メグレと火曜の朝の訪問者 (メグレ警視シリーズ3) Les Scrupules de Maigret |
1月10日の朝 シャーティヨン通り 雪 |
グザヴィエ・マルトン事件 ルーブル百貨店の玩具売り場主任がメグレのオフィスに面会にきた。妻に命を狙われていると言い残し、立ち去った。どことなく不安を感じるメグレ。その翌日、メグレに面会を求めてやってきたのは、なんとその男の妻だった。メグレは事件になる前から、捜査に着手するのだった。 |
事件が起こる前から捜査をするという、例外的なストーリー メグレ50歳+ |
河出書房新社版 谷亀利一訳 (1976) |
メグレの途中下車 (メグレ警視シリーズ4) Maigret a peur |
冬、もうすぐ春になる ボルドー近くの田舎町フォントネイ=ル=コント 雨 |
フォントネイ=ル=コント連続殺人事件 ボルドーでの国際会議に出席したメグレは、旧友の予審判事ジュリアン・シャボを30年ぶりに訪ねるのだが、なんとその田舎町では連続殺人事件が起きていたのだった。町の人々はメグレが事件解決のために来たのだと勘違いする。 |
1953年作 旧家クルソン一族をめぐる事件の顛末 メグレ50歳 |
河出書房新社版 榊原晃三訳 (1976) |
メグレと幽霊 (メグレ警視シリーズ5) Maigret et Le Fantome |
11月中旬 ジュノー通り 雨 |
ロニョン刑事銃撃事件 18区街警察署刑事のロニョンが深夜のジュノー並木通で何者かに撃たれた。ロニョンはそこで何をしていたのか同僚の刑事たちも知らない。参考人と思われる若い女性も失踪していた。ロニョンは撃たれた直後に「幽霊」とだけ言ったのだという。果たしてその幽霊とは? |
1963年作 ミステリーとしても面白い作品。オランダ人と絵画をめぐる事件。 メグレ48歳 |
河出書房新社版 佐宗鈴夫訳 (1976) |
メグレと口の固い証人たち (メグレ警視シリーズ6) Maigret et les temoins recalcitrants |
11月3日 イヴリのガール河岸 陰鬱な雨 |
レオナール・ラショーム殺害事件 ラショーム・ビスケットの当主レオナールが深夜に自宅で何者かに銃で撃たれて死んだ。しかし、家族の者は誰も何の音も聞かなかったと言い張るのだった。不信に思うメグレ。この一族には複雑な内部事情があると感じたメグレは、捜査の矛先を変えてみるのだった。 |
1958年作 予審判事のコメリオは引退し、若いアンジェロ判事が事件を取り仕切ろうとする。 メグレ53歳 |
河出書房新社版 長島良三訳 (1973.12.25) |
モンマルトルのメグレ (メグレ警視シリーズ7) Maigret au ”Picratt's” |
冬 ノートルダム・ド・ロレット街 霙(みぞれ) |
踊り子アルレット殺害事件 月曜日の明け方、酔ったピクラッツの踊り子がサン・ジョルジュ署に出頭し、オスカルという男が伯爵夫人の殺害を計画していると密告したが、あまり相手にされず帰宅させられた。そして、その直後、この踊り子は絞殺死体で発見され、やがて伯爵夫人も絞殺されてしまう。果たしてオスカルとは何者か?メグレはピクラッツに陣取り捜査を開始する。モンマルトルを舞台に徐々に捜査網は狭められて行くのだった。。 |
1950年作 アルレットに恋していたラポワント(24歳)。メグレはまたしてもロニョンの手柄を奪う事に。 メグレ?歳 |
河出書房新社版 矢野浩三郎訳 (1983.9.25) |
メグレと首無し死体 (メグレ警視シリーズ8) Maigret et le corps sans tete |
3月23日朝 サン・マルタン運河、ヴァルミイ河岸 霙(みぞれ) |
オメール・カラ殺害事件 明け方、サン・マルタン運河で男のバラバラ死体が発見された。メグレは現場に急行するが、ついに男の首は見つからない。検事局へ電話をするため居酒屋に入ったメグレは、そこでまるで何事にも無関心な女主人アリーヌと出会う。事件とは関係無くメグレは妙にこの女主人が気にかかるのだった。一方、運河に張込んでいたラポワントは不審な若者アントワーヌを発見する。そして、若者はこの居酒屋の常連だった。犯人はこの若者か?メグレは女主人と常連客の周辺を捜査する。だが、やがて、カノンジュと名乗るサン・タンドレの公証人がメグレの前に姿を現わすのだった。。 |
1955年作 居酒屋夫婦の生涯が数世代に渡って描かれ、それが事件の背景として見事に反映している。メグレシリーズの中でも特筆すべき名作のひとつ。 メグレ?歳 |
河出書房新社版 長島良三訳 (1977.2) |
メグレ氏ニューヨークへ行く (メグレ警視シリーズ10) Maigret a New York |
冬 ニューヨーク 嵐 |
ジーン・モーラ失踪事件 引退後の別荘にジーン・モーラと名乗る青年が訪ねてきた。父親に危機が迫っているという。説得に負けてメグレはニューヨークへ発つが、アメリカへ着いた途端に青年は失踪していまう。果たして父親に迫る危機とは?そして、青年はどこへ消えたのか? |
1946年作 警察を離れて個人として捜査するメグレ。最後の場面が素晴らしい。 メグレ56歳 |
河出書房新社版 長島良三訳 (1977) |
メグレの初捜査 (メグレ警視シリーズ11) La premiere enquete de Maigret |
1913年4月15日午前1時30分 シャプタル通 |
バルタザール家殺人事件 サンジョルジュ署勤務だった青年メグレのもとにフルート奏者が駆け込んで来た。シャプタル通で助けを求める声と銃声を聞いたというのだ。メグレが駆け付けるとそこには死体もなければ事件の痕跡もなかった。しかし、メグレは何かを感じ、署長の許しを得て個人的に捜査を開始する。 |
1948年作 この事件を解決してメグレは5月から司法警察勤務となる。 メグレ26歳 |
河出書房新社版 長島良三訳 (1977) |
メグレ式捜査法 (メグレ警視シリーズ13) Mon ami Maigret |
5月 パリ・秋のような雨、ポルクロール島・暑く晴れ |
マルスラン・パコー殺害事件 ロンドンからメグレの捜査法を学びにパイク刑事が派遣されて来た、その時、ポルクロール島から電話が入る。昔、メグレが逮捕したことのあるチンピラが強いミストラルの吹いた夜に殺されたのだ。その男はメグレの知り合いだと吹聴したことが原因で殺されたのだという。急遽メグレはパイクとともに南仏の島へ向かう。「今はウスノロの振りをしないことが大事なんだ!」 |
1949年2月2日作 リュカが部長となり、ジャンヴィエに子供が生まれる。 メグレ?歳 |
河出書房新社版 谷亀利一訳 (1977) |
メグレと消えた死体 (メグレ警視シリーズ14) Maigert et la Grande Perche |
7月の終わり 暑く晴れた日、ヌイイ・フェルム通り43の乙 |
マリア・セール殺害事件 17年前に逮捕した「のっぽ」のエルネスティーヌの亭主が金庫破りに入った屋敷の中で女の死体に出くわした。彼はすっかり慌てて現場から逃走してしまった。エルネスティーヌの話から割り出した屋敷とはヌイイのセール歯科であることがわかり、メグレはこの歯科を訪問するのだが、肥満した歯科医もその母親も事件の事は一切否定するのだった。エルネスティーヌの話は嘘だったのか?しかし、メグレはこの親子に何かきな臭いものを感じるのだった。 |
1951年5月8日作 ジャンヴィエの上の子の誕生日。めずらしく死体のない事件の捜査で、苦悩するメグレ。 メグレ?歳 |
河出書房新社版 榊原晃三訳 (1984) |
重罪裁判所のメグレ (メグレ警視シリーズ17) Maigret aux assises |
10月 1940年10月、マニュエル通り23番地、雨 |
レオンチーヌ・ファヴェルジュ、セシル・ペラン殺害事件 額縁職人のガストン・ムーランが重罪裁判所で裁かれようとしていた。状況的にはガストン・ムーランの犯行かと思われたが、納得の行かないメグレは事件後も内密に捜査を続け、法廷でガストン・ムーランの妻ジネットに関し、意外な発言をするのだった。法廷は騒然とし、ガストンには無罪の判決が下る。果たしてガストンは本当に無実なのか?そして、無実なら本当の犯人は誰なのか?メグレにはどのような確証があるのか・・・。 |
1959年11月23日作 この9月下旬、ムン・シュール・ロワールに家を買ったところ。 メグレ53歳 |
河出書房新社版 小佐井伸二訳 (1978) |
メグレの打ち明け話 (メグレ警視シリーズ23) une Confidence de Maigret |
4月の終わりか5月のはじめ ロペール通 |
クリスティーヌ・ジョゼ殺害事件 親友パルドンと夕食をしながら、メグレはどうしても忘れられない事件があると語り始める。製薬会社社長アドリアン・ジョゼの妻が自宅の寝室でめった刺しにされて死んだ。夫が有力な容疑者であったが、犯行を否認。メグレも判断できない。犯人は夫のアドリアンか?あるいはアドリアンの愛人アネットの父で自殺したマルタン・デュシェ?はたまたクリスティーヌの愛人だったポポールというやくざ者か?迷宮入りした事件をメグレはしみじみと降り返るのだった。 |
1959年5月3日作 事件は全てメグレの回想という形で語られる。 メグレ45歳 |
河出書房新社版 長島良三訳 (1977) |
メグレと若い女の死 (世界ミステリーシリーズ) Maigret et la jeune morte |
3月、午前3時 ヴァンテミル広場 細かな雨 |
ルイーズ・ラボワーヌ殺害事件 ロニョン刑事の担当地区で若い女の死体が見つかった。何故かメグレは複雑な事件になるような予感がした。この事件には情報がなく、まったく進展がない。メグレは女の身元調べを始めたのだが、調べれば調べるほど、貧しく恵まれないながらも幸せを夢見た女の悲しい人生が浮き彫りになる。一方、メグレの捜査先にはいつもロニョンが先回りしていた。雨に濡れ、ボロボロになり、自分の人生を呪いながらも不眠不休の捜査を継続するロニョン。疎ましく思いながらもそんなロニョンに、どこか死んだ女の人生と通じるものを感じるメグレだった。メグレの底辺に生きる人々に対する深い慈悲と罪を憎んで人を憎まない姿勢が実に味わい深い。 |
1954年作 これは文学としても優れた一作である。 メグレ?歳 |
早川ポケットミステリー版 北村良三訳 (1972.11.30) |
メグレ罠を張る (早川ミステリ文庫) Maigret tend un piege |
8月4日、夕方 モンマルトル地区 蒸暑い |
モンマルトル連続殺人事件 モンマルトルで2月から連続した通り魔事件は発生していた。6ヶ月の間に5人もの女性がナイフで刺殺されたのだ。それも同一の手口で、ナイフの一突き。そして、念入りに引き裂かれた衣服。さらに被害者はすべて小太りの女性であった。メグレは犯人をおびき出すため、新聞記者たちを騙し、犯人が逮捕されたかのような芝居に打って出た。モンマルトル地区は厳重な警戒体制下に置かれ、ついに犯人は罠にかかるのだが、すんでのところで取逃がしてしまう。しかし、現場には引きちぎれたグレーの布地のついたボタンが残されていた。 |
1965年作 パルドン医師との夕食会をはじめて1年目。メグレの心理捜査の代表作。 メグレ?歳 |
早川文庫版 峯岸 久訳 (1976.4.30) |
メグレと老婦人 (早川ミステリ文庫) Maigret et la Vieille dame |
9月3日、日曜の朝 エトルタ地方 小雨 |
ローズ・トロシュ毒殺事件 ノルマンジー地方のエトルタの旧家ラ・ビコック荘で老婦人ヴァランティーヌ・ベッソンの身代わりとなって女中のローズが毒殺されるという事件が起きて、メグレはエトルタへ派遣される。事件の関係者は極めて少なく、それぞれの背後には複雑な事情があるとにらんだメグレは、海の家が閉鎖される15日までには事件を解決しようと一計を案じるのだった。 |
1950年12月8日作 かなり推理小説的な色合いの強い一編。 メグレ?歳 |
早川文庫版 日影 丈吉訳 (1976.11.15) |
第1号水門 (創元推理文庫) L'ecluse No.1 |
4月 シャラトン どんよりした曇り空 |
エミール・デュクロー傷害事件 メグレの退職まであと6日という時、エミール・デュクローが何者かに背中を刺され、運河でおぼれていた。幸い救出されて息を吹き返したが、一体、誰にやられたのかまったく見当がつかないという。エミールはこの運河では顔役であり、多くの者の生活がこのエミールにかかっているのだった。聞き込みを続けるものの大した手がかりもなく、暗澹としていたのだが、やがて、2つの事件が起きてしまう。 |
1932年作 引退直前のメグレがジリジリとした展開で事件を解決する長編。成金の気だるい毎日が見事に描かれている。メグレ夫人が一人で引越しをする。 メグレ54歳 |
創元文庫版 大久保 輝臣訳 (1963.8.16) |
メグレ激怒する (河出文庫) Maigret se fache |
8月 オルセンヌ 真夏の暑いさかり |
モニタ・アモレル水死事件 メグレが退職して2度目の夏、孫娘のモニタが水死したことに疑問を持ち、引退したメグレに捜査を依頼に来る。オルセンヌを訪れたメグレは中学時代の同級生マリクに出会う。彼はアモレル家の婿として一族を支配し大富豪になっていた。マリクはメグレに親しげに接近する。しかし、メグレはこのマリクの態度になにかきな臭いものを感じるのだった。 |
1945年作 引退して2年後のメグレがメグレ夫人や久しぶりにリュカの協力を得て事件に当たる。税金屋の息子だったマリクが成り上がる過程を通して事件が徐々に理解され解明される。 メグレ56歳 |
河出文庫版 長島 良三訳 (1988.7.25) |
メグレたてつく (河出文庫) Maigret se defend |
6月28日 アカシア通り 暑い日 |
ジュール・メグレ(フランソワ・メラン)事件 メグレの元に深夜、若い女から電話があり、メグレはその女を保護してやった。ところが、その後、メグレは警視総監に突然の出頭を命じられる。なんと女からの呼び出しはメグレを嵌めるための罠だったのだ。メグレは退職に追いやられそうになる。しかし、この謂れのない疑惑はなんとしても晴らせさねばならない。総監からの命令にたてつき、メグレは私人として、捜査を開始する。やがて、メグレはこの事件の意外な真相を突き止めるのだった。 |
1964年7月28日作 定年を3年後に控えたメグレが自分自身の事件の捜査に当たる。意外な結末に至る過程が面白い。推理物として完成度も高い。 メグレ52歳 |
河出文庫版 榊原 晃三訳 (1977.3) |
メグレと老婦人の謎 (河出文庫) La folle de Maigret |
5月の中旬 メジスリー河岸 晴れた気持ちの良い日 |
マダム・アントワーヌ・ド・カメラ殺害事件 メグレの元に一人の年老いた女性が捜査を依頼してくるが、メグレは取り合わず、ラポワントに調べさせた。老女は最近、留守中に誰かが侵入して家具を少しずつ動かしている、命が狙われていると主張。ラポワントはその話をあまり信用せず、帰宅させた。老女は満足せず直接メグレに調べてくれるよう訴え、メグレも調査を約束したが、その直後、老女は自室で何者かに殺害されていまった。もっと早く話を聞いてあげるべきだったと後悔するメグレ。家具が少しずつ動くという不可解な証言を元に捜査を開始する。 |
1970年5月7日作 マルセイユのマレラ警視の協力を得て事件の捜査に当たる。拳銃の取引をめぐる意外な結末。ラストは渋い。 メグレ?歳 |
河出文庫版 長島 良三訳 (1978.7) |