邪悪王の闇の城

高野一巳



18 その後の世界

人々は互いに助け合い、補い合い、譲り合い、支え合い、共に協力しあって、どんどん復興を果たし、より豊かに、より幸福に暮らせるようになっていった。

やがて、時は過ぎ、以前に劣らず、明るく楽しい、豊かで安定した、幸福に満ちた暮しをできるようになっていた。 豊かさに慣れ、安定して幸福に暮らせることが当たり前になってくると、働かず、自分の欲を満たすことに夢中になるものが出てきた。

その男は、食うために働くから、自分が食べることができたら働かない。働かず、怠けて食ってばかりいる。
「こら、働け、働け、誰のおかげで飯が食えると思っているんだ。」 どなられる。
「なんだ、えらそうに。」 つばを地面に吐きつけるが、面と向かって何も言えない。 ぶつぶつ、悪口雑言を吐き出すばかりである。 不平不満を言い、悪態をつくばかりだ。

腹いっぱい食べていながら、他の人のものを見ると欲しくなる。 相手が弱いと見ると、けんかし、奪い合って、自分のものにする。
「ちくしょう。覚えていろよ。借りは返してやるぜ。」 負けたやつは言い捨てて行ってしまった。

奪い取って自分のものにしたものの、すぐに他ものに目移りして、あきてしまって、まだたくさん残っているのにゴミ箱に捨ててしまう。
「あ〜あ、つまらねえな、何かいいことないかなあ」 言いながら、男が去っていく。

誰もいなくなったゴミ箱ががさがさと動いたと思うと、リトルデビルが顔を出して、にやりと笑った。

       (END)


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