リョウタはブレスレットを腕にはめていましたが、やはり疑心暗鬼でした。
本当に幸運を呼ぶのだろうか。しかし、オサムという実例がある。
自分にも何か幸運が起こるに違いないと思うのでした。
これはオサムのだという後ろめたさもあることにはありましたが、気にしないことにしました。
しばらくたっても、オサムは少しも気づくようすはありません。
リョウタはいつ幸運が舞い降りるのか、今か今かと待ち受けていました。
大金でも拾うのか、大富豪に出会って親切にしてあげて、大金をもらえるのか、宝くじにでも当たるのか、いや、ギャンブルや競馬でもやれば大当たりするのかも知れない。
リョウタは宝くじを買い、ギャンブルや競馬に手を出しました。
どうか頼む。リョウタはブレスレットに念じるのでした。
そんなでしたから、運送の仕事に身が入らないのは変わりませんでした。
大金を手にしたら、こんなしんどい仕事をやめて遊んで暮らしたいと夢見るのでした。
リョウタはブレスレットが幸運をきっと呼んでくれるに違いないと信じました。
上司にしかられても、今に大金持ちになって見返してやるんだと、反抗的な態度でした。
早く大金を手にしてこんな仕事から離れたいとばかり思っているのでした。
こんな境遇から早く救い出してくれる幸運を期待しました。
ブレスレットを手にしても、商品やお客様を乱暴に扱い、適当に仕事をこなして、楽をすることばかり考えるのは同じでした。
早く楽に儲けられるようになる幸運を待ちわびたのです。
ところが、宝くじもギャンブルも競馬もはずれ、楽に大金を手にできるような幸運などどこからもやってくるようすはありません。
お客様や上司に怒られ、ますます仕事がいやになり、ますます仕事に身が入らず、その結果、お客様や上司をますます怒らせるという悪いスパイラルさえ生まれてきました。
こうなるとリョウタにとっては、幸運ではなく、不運を呼ぶブレスレットだとしか思えませんでした。