高野一巳
1 何かいいことないかな
オサムとリョウタは、幼馴染でとても仲よしです。 オサムは八百屋に、リョウタは運送会社に勤めていました。 あまり多くない休みは、いやな仕事を忘れるように、遊びまわりました。 とは言っても、お金がありませんので、街に出て店をひやかしたり、小銭で遊ぶゲームなどに興じて、後は安酒を飲むのが精一杯だったのです。 街でかわいい女の子を見つけても、ふたりとも声をかける勇気などありませんでした。 どうせ、こんな貧しい身なりの男なんて鼻もひっかけないだろうと思って、ためらいつつも、もの欲しそうに遠くから眺めるばかりでした。 いいなと思った女の子を目の前でかっさらっていくのは、たいてい、いい車に乗ったかっこいい服で身を包んでいる、いかにも金持ちの男だったのです。 |