幸運を呼ぶブレスレット

高野一巳


1 何かいいことないかな

オサムとリョウタは、幼馴染でとても仲よしです。
ふたりとも親元を離れて社会人になって働いていました。

オサムは八百屋に、リョウタは運送会社に勤めていました。
でも朝から晩まで働いても、給料は安く、貧乏暮らしからなかなか抜け出せません。
ふたりとも、体を使う仕事なのでいつも汗とほこりにまみれており、労働時間も長く、女の子と出会うチャンスもありません。
「何かいいことがないかな」
「お金が降ってこないかな」
暇さえあれば、ふたりでそんなことばかり言っていました。

あまり多くない休みは、いやな仕事を忘れるように、遊びまわりました。 とは言っても、お金がありませんので、街に出て店をひやかしたり、小銭で遊ぶゲームなどに興じて、後は安酒を飲むのが精一杯だったのです。

街でかわいい女の子を見つけても、ふたりとも声をかける勇気などありませんでした。 どうせ、こんな貧しい身なりの男なんて鼻もひっかけないだろうと思って、ためらいつつも、もの欲しそうに遠くから眺めるばかりでした。

いいなと思った女の子を目の前でかっさらっていくのは、たいてい、いい車に乗ったかっこいい服で身を包んでいる、いかにも金持ちの男だったのです。
「ちきしょー、俺たちも、金を稼いでパリッとした服装をするようになって、いい車を買ったら、ばんばん、女の子に声をかけような。金持ちばかりがいい思いをするようにこの世の中はできているんだ」
「お金でも落ちていないかしら」
「宝くじでも当たればいいのにな」
ふたりともいつもそんなことばかり言いながらため息をつくのでした


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