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一人の人を救うと言うことは容易な事ではない。
先ず自分が一心に仏に仕え、人を導きて現世に徳を積み、その積んだ徳を以て
「何卒、我が身の徳にかえさせ給いてこの者お救い下さいませ」と、
お願いすることによって、徳無き者の身代わりとなって己が徳を以て
その者の成仏を願って初めて徳無き者も救って頂けるのである。
不幸なる我が子をいかに諭せばとて、徳無き親の諌言に我が子を救う
力はないのである。
我が子であれ他人であれ一人の人間を救うと申す事は、
その者の地獄の因縁を我が身の徳を以て消滅して頂く事であって、
いかに口先で申し聞かせ、親の愛欲にて救いやらんと必死になればとて、
救うべき力とは己が身につけたる徳を以て仏にすがり、
その者の徳と引替えに成仏と申す功徳を授け頂かねば、人の心を悟らしめ、
改心さすなどと申す事は出来得ざるなり。
真剣に一人の人間を救いやり度くば、
その者に代わりて我が身一心に徳を積む事なり。
仏に祈願なすと申す事は只我が身に徳を積む事によりて初めて聞き届けらるる事、
肝に銘じて悟りおくべし。
合掌
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