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人生の悲哀が人間を育ててゆくものである。
親に甘え、夫に甘え、妻に甘え、子を我がものと思いて、
思うままに育てて何一つ不自由なく意のままに過ごしてゆく人生にありては、
人は人間としての成長は成し得ざるなり。
人間界にありては、佛と成らんを志し、
幾度も幾度も挫折し、打ちひしがれ、苦しみをなめ、死別の悲しみを知り、
人にそむかれ、憎しみを知り、あなどりを受けて恥ずかしめられ、
貧に泣き、飢えをしのぎて、初めて人の情けを知り、
自らの心に温かき血をわかせゆくなり。
人間界に生れし身は、この苦なくして、佛心を悟り得る徳は非ず。
徳なき故に人と生れさせられ、先ず苦しみの果て、悲しみの底より初めて
救わせ給えと祈らるるなり。
地獄を知らずして佛心の芽生えはなし。
人間とは、さ程に徳薄き類なり。
先ず自らをかく知る所に自ずからつつしみをそなえゆくなり。

財にうずもれ人を見下し、思うままなる人生にては生まれし甲斐なき痴呆なり。
前世の徳の食いつぶしに終わりて、又しても元のもくあみ
どん底の人生より生れ変わりてやり直しの人生を受け、
多難の人生となり下がるなり。
かくて悟りなき人類は、恵まるれば甘えて、おごりたかぶる悪魔となり、
人といたしての使命も向上も求めざる下根の己れを知らざるが故にこそ、
六道より抜け出でて上昇するあたわざる、まことに哀れとも愚かとも申し様なき類なり。
さればこそ大慈大悲の救いとは、この正法を以て己れを悟らしめ、
これではならずと奮起いたさしめ、さればここにと秘中の秘法授け給りて、
今ようように人間界より解脱いたさせ、菩薩道へと道標され給るものなり。
この果報受け得らるるもの余りにも微々たる数なれど、
その数に入れられたる今世の大功徳にこそ、必死にすがりて、
今にしてこの無惨とも申すべき悪世を解脱いたさずんば、
未来永劫いつの日か、又再び相い見んことの得がたき大功徳なり。
み佛の今こそとさしのべ給わるみ手にすがりて命つくして昇りゆくべし。
救わる道成仏道とは、これ一つなり。
合掌 |

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