檀信徒随筆集1997
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 「檀信徒随筆集」は、「かなくら山報」に寄せられた
檀信徒の随筆等を編集したものです。
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写経会
『かなくら山報』第72号 1997/12/04

                          寺内 T・Y

 除夜の鐘に力を入れてついたつもりが、音が小さく金蔵山に響き
渡りて、平成9年の春を迎えました。
 住職さまの読経続く本堂で初写経、筆一本に新しい年の健康と
無事を祈りて一巻納めました。
 金蔵寺では平成5年6月より第2日曜午前6時より写経会が始
められ、この12月で第54回となります。
 1月、2月の凍りついた早朝、こわごわと車を走らせます。
 「われ今至心に懺悔し謹みて般若心経を写経し奉る」
合掌して願文をお唱えします。心経をただひとすじに写す。静かな
心の安らぎが私の支えです。
 3月、4月ともなれば、静かな山あいより鴬の声が聞こえ、また
お寺から眺める朝日は格別です。
 写経が終わると住職さまのすばらしい御詠歌のお唱えに身を清
められ、法話をお聞きし、奥様の心づくしの芋粥を御馳走になり、
冷えきった体を温かいもてなしで、身も心も温もり、「さあ、今日も
頑張らなくては」と下山します。
 夏には蝉しぐれ、秋には紅葉と四季折々の静かな美しい金蔵寺
での写経会は毎月続けて行われています。
 多くの方々のご参加をお願いいたします。
  早朝の金蔵寺で写経会
   筆ひとすじに祈りをこめて     

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お彼岸によせて
『かなくら山報』第67号 1997/04/07

                          的場 K・K

 「暑さ寒さも彼岸まで」 彼岸になったら温うなるやろうと待ちつ
つ、彼岸が終わっても雪が舞う日もあったりして、「彼岸の小鳥
殺し」ということばを思い出して、昔から小鳥も死ぬ程寒かった
のでしょうか。四・五月と四季の変化を空想しながら夢を描くの
も生きている証かも…。
 彼岸中日の朝、炊事場が人手不足とお聞きし、枯れ木も山の
賑わいと手伝いをさせていただきました。
 「まぜごはん手伝って」「はいはい」 一生懸命に味はどうあろ
うと完了。お櫃に移すようになってお櫃が足らぬように感じ、あ
れやこれやと移す心くばりの時、空のお櫃の裏を何気なく見て
驚きました。
 大正15年寄贈で半井様の名前が記されていました。学明
大僧正様が5〜6歳の頃の品で、半井様もうっすら覚えており
ます。お金持ちであったことも知っております。
 「人は死んでも名は残る」とはよく言ったものです。竹の輪で
しめた大変使いやすいお櫃です。20個あったらしいのですが、
現在では使えるのは10個ぐらいになっております。70余年の
長い間大事に年に5〜6回ぐらいでしょうか使われていること
と共に、70余年前もお彼岸には参拝者に食事を賄っておられ
た様子が偲ばれます。
 きっと横町の桶屋の熊太郎様の作品と想像いたします。大
変な名人であってお弟子さんもおられた時代を思い起こして
みました。世の移り変わりと共に亡くなられ桶の輪が切れた
が最後です。桶でなくてはならぬ時代もありましたが…。
 ところで、常に不思議とばかり思っておりましたのが、我が
家のお茶湯桶です。しっかり意識してからでも50余年、仏壇
の中で何年か母が亡くなってから沈黙の時代があったと思い
ます。きっと、母が誂えて熊太郎さんに作ってもらった桶と思
います。木の目も美しく竹の輪も光って本当に心なくして扱う
ことはできません。
 毎朝仏前に桶にお茶湯しばがら仏様と語らいが始まり終
わって一日が終わります。
 ご先祖様と共にお茶湯桶にも祈りを込めております。名桶屋
さんであった熊太郎さんをお茶湯桶を通じて偲んでおります。
 お寺のお櫃も幾久しく、若僧正様が大僧正様に、そして、
次の時代までも今の数のままでありますように祈りつつペンを
置きます。 合掌。     

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味わい深い山寺
『かなくら山報』第66号 1997/03/05

                          奥荒田 A・F

 2月の厳冬の金蔵寺を見たくて山寺へ行きました。灰色の空
の下、ピーンとはりつめた空気の緊張感がただよう…。
 庭にある黄色い土塁が少し崩れかけ、ヒビが入っている光景
を見ていると、このお寺の歴史の長さを感じます。そばには、赤
紫色の椿の花が可憐に咲いている。一年中で一番花の少ない
時期だけに一段と美しく見え、、目を楽しませてくれるような…。
 椿は昔から落花すると武士に嫌われたけれど、仏花としては
貴重な花とか…。地面にたくさん散った花びらの姿も、また
違った意味で美しい。何となく早春の香りをただよわせているよ
うな…。
 雪がたくさんあちこちに残っている。チラチラ降っていた雪が
やがて吹雪にかわる時、寒い金蔵寺も里のお寺とまた一味
違った厳冬の風情があり、いいなと感じました。
 七、八月には、蝉の声を聞きに金蔵寺へ行きたいです。
『奥の細道』で立石寺へ立ち寄り、「閑かさや岩にしみ入る
蝉の声」とうたった芭蕉の句を浮かべながら、山寺で蝉の声を
味わい、詩や歌を書きたいです。そして、自分で作っている
文集『やまびこ誌』に書き加えたいと思っています。     

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