檀信徒随筆集1996
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 「檀信徒随筆集」は、「かなくら山報」に寄せられた
檀信徒の随筆等を編集したものです。
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お四国参り
『かなくら山報』第63号 1996/12/01

                          奥荒田 K・Y

 夢にまで見たお四国参り、内心かなわぬこととあきらめてい
た矢先、金蔵寺住職様の計画によるお四国参りが決定。足の
悪いのも忘れて申し込みして出発の日まで心配しておりました
が、不安ながらも旅立ちました。
 住職様やお同行の方々に力づけられ、お大師さまのおかげを
いただき、31ヶ寺参拝無事成満できましたこと、本当にありが
たく、お世話になった住職様はじめお同行の皆々様に心より
厚く御礼申しあげます。とともに、次回残る霊場巡りもぜひ参加
させていただきたく、今から楽しみに心待ちにしております。     

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師僧を偲びて
『かなくら山報』第61号 1996/10/01

           加西市     藤田啓明

 明治20年7月神戸市に出生。27年両親と死別。28年美嚢郡
口吉川村密教院に入寺。31年口吉川尋常高等小学校卒業後、
密教院で勉学。35年京都東寺入寺。後、中学・大学を優秀なる
成績で卒業。幼名貞三を寛明と改名。               
 大正7年3月多可郡松井庄村金蔵山金蔵寺住職拝命。権大僧
都昇進。当時31歳なり。                       
爾来、仏教会および社会福祉方面の各種公職に専念、度々
感謝状を受けられる。昭和23年高野山真言宗宿老。25年大僧
正補任。昭和42年8月1日遷化。                  


 この識徳賢明なる東野寛明大和尚に私は不思議な縁あって、
昭和22年6月15日に得度を受けました。一緒に得度した8名の
中で私が一番若く、また、そのころは得度を受けても修験者とし
て登山するものは少なかったようです。
 当時、加西には先達が6、7名いましたが、導師を失い私が金
蔵山の東野和尚のお世話になりました。「金蔵山まで自転車で
2時間半かかるのです。」と申しますと、「それは大変だね。
せっかく来たのならよく勉強して加西の先達を指導してあげなさ
い。」と言われました。
 私がお伺いすると、いつも白衣に黄色の腰衣をつけて、書斎
にて筆を持っておられるか、書籍を読んでおられるか、立派な体
で高僧そのものでありました。
 師僧はお話も上手なうえ、筆も上手で色々書いていただきまし
た。また、師僧はよく私が仕事で東京出張所に行く時、「藤田さん、
鞄持ちで一緒に行こう」とか「甘いお菓子が食べたい」とか色々
お話もされました。
 特に思い出となるのは、昭和23年私の村の東光寺住職の戒
師を勤めてくださったこと。当日私も寺で用意をしていたのでお
話もできました。次に昭和28年加東・多可・加西の合同戦死者
慰霊大護摩供に私は加西の先達として導師をせよとのことばを
賜り、作法に専念、お教えくださったこと。当日は大雨で僧正様
も大変だったと思います。また、佐用郡上月町清林寺落慶法要
の大護摩に同伴助法させていただいたこと。
 最も思い出深いのは、昭和39年秋の彼岸に私に、「中日の夜
説教してください。」との夢にも思わぬありがたいおことばをいた
だいたことです。「私はとてもそのような器ではないので、学明さ
んに。」と申しますと、「学明はぜひ行かねばならない所があるの
で、君なら勤まる。」とありがたいおことばをいただきお受けしま
した。前夜師僧の前で練習して、当日は百有余名の前で勤めさ
せていただきました。師僧は、「参詣者の多い程お話がしよいの
ですよ。本当によかったね。」と若輩の私にいとも満足なるおこと
ばをいただき喜ばれたご尊顔は今も思い出していて感無量です。
 その後、昭和27年に加西より5名が得度をして、師僧より、
「加西の修験者はよい人だ」とおほめいただきました。また、
大久保玉龍氏も26年に師弟の縁を結ばれました。
 その間師僧は着々と昇進せられ、昭和25年には高野山真言
宗宿老大僧正になられています。この高僧にお世話になった
人々は130有余人になります。
 私は長年毎月2回ずつお伺いしてお教えをいただきましたが、
身の異常を感じたことはなかったと思いますが、39年の彼岸に
休んでおられたのが病の初めかと思います。お世話になりなが
らお慰めのことばも持ち合わさず、昭和42年8月1日、ついに
遷化されました。81歳でした。まだまだ長命でおられてくださる
ことと思っていましたが。
 ある時、「光明真言を唱えるときなぜ右手をあげるのですか」と
尋ねると、「良い所に気がついたね」と言って良いお答えをくださ
いました。
 私は、昭和22年11月20日、京都の醍醐三宝院に初めて
栗山さんに同伴した時の事です。岡田戒玉大僧正が栗山さん
に、「良き若人を連れてこられましたね」と言われました。栗山
さんが、「この人は6月に兵庫県多可郡松井庄の金蔵山の
東野様に得度を受けたところです。」とお答えすると、岡田大僧
正は、「東野さんは立派な和尚さんです。」と言われて、三宝院
の本尊聖宝理源大師の宝前にて、「般若心経一巻お唱えして
ください」と言われお唱えしました。お唱えが終わると、和尚は
栗山さんに、「藤田さんに大先達の位をあげるから。」と言われ、
栗山さんも私も驚きました。「あなたは賢明なる東野さんの弟
子入りをなされたので、そのお祝いですよ。東野さんにつき、
よく勉学に励み、三宝院播州醍醐講を発展させなさい。」との
ありがたいおことばと辞令をいただいて帰りました。岡田大僧
正も東野和尚の高僧であることをよく話してくださいました。
 東野大僧正は金蔵寺住職約50年、遷化されて30年、
今私は生前の師僧の思い出を後先なく筆を取っています。
 人間とは妙なもので亡くなられた4,5年はお墓を尋ねて拝礼
しましたが、車で登山できるようになれば、車の中より、「南無」
というように誠に恩を忘れたような拝み方になりました。運転手
には何も知らせてないので不思議な顔をしていました。「あそこ
は師僧と奥様の墓所だ。」と言えば、「そんなら一度お参りする」
と言ってくれましたので、嬉しくて一同真言をお唱えして仏菓
増進をお祈りしました。文中師僧の厚徳を思い出すために、
私の我田引水のことが多く出てきたことをお詫びいたします。
 現在私は83歳。今学明大僧正様、正明僧正様と三代お世話
になっています。
 私のモットーとしている、「元を忘れず末を乱さず」、残る齢を
共々に張り切りたいと思っています。今は亡き師僧も喜んでくだ
さるだろうと思います。南無大師遍照金剛。合掌。
                    三宝院直流播州醍醐講
                          権律師 藤田啓明     

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平成8年度奉納奉詠大会
『かなくら山報』第59号 1996/08/01

                       的場 K・K

三部落合同練習度重ね
辿り着いたる晴れ舞台

大型の観光バスに迎えられ
姫路までとはおしい事
この上なしの乗り心地
こぼれる程になれる日を

乗車して二人の姿なきことに
気づき我は母なし子
心は揺れる今日の奉詠

僧正のぽつりと語らる出来事を
大日様の塔が倒れた早朝の成り行き
聞いて胸なでおろす詠歌人

姫路までマイカーとばしてお出ましを
午後の出番に間に合います様祈りつつ

御詠歌にも
流行があるような気がするこの大会
34支部の5支部までが父母感恩和讃
一寸驚きを感じる事

金蔵寺も父母感恩を唱えると
流行知ってる目の高さ
結果は檜舞台が決める事

頭人も気のいる事でありましょう
ゆうずう効かぬ頭のこのかたさ
袖や袂にかくされて何とか終わって
退場まで
奉詠大会幕おりる
帰りはバスが待っている

また来年を目指して習う御詠歌も
ぼけ防止とはお大師様に申し訳なく思えども
「大師のみ手にすがるべし」
を唱えつつ
南無大師遍照金剛     

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山寺の桜
『かなくら山報』第56号 1996/05/03

                       奥荒田 A・F

里では桜が満開で美しい
花が散っている姿に
「もう少し咲いていてほしい」と未練が積もります
金蔵寺の桜は
ちらほら咲いています
花びらは可憐で鮮やかに見え
つぼみはたくさんふくらんでピンク色に染まっています
神秘的なロマンを感じ
つぼみが今にもはじけそう…
こんな桜の光景もまた
風情があり「いいもんだなア」と思います
幹の根元がコケに覆われ
しっとりとした感じ
「ホーホケキョ」とウグイスの声が
やさしく聞こえ
静寂な山寺にこだまする時
しみじみと
季節の移ろいを胸いっぱいに感じました
               (4月20日、金蔵寺にて)     

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除夜の鐘・初詣
『かなくら山報』第53号 1996/02/03

                          寺内 T・A

 毎年初詣は二人で金蔵寺の除夜の鐘を聞きながら、二宮神
社、そして、教会とお参りしていました。
 今年は早くからオーバーを着てかなくら山へお参りしました。
心配していた坂道の雪もきれいに除雪してあり、早々より八日
会の方が大きな焚火をしてくださり、あたらしてもらいました。
 五平餅のやや香ばしい匂い
 味噌たれをつけておふくろの味
 太い孟宗竹には清酒一升二升を入る
 倒れないように工夫してありお燗ができる
 杯も竹のオチョコ
 これはいける! うまい 笑い声

 今晩は、寒いね、星一つ見えぬ曇り空
 やがて住職様の除夜の鐘
 おめでとう 本年もよろしく
 亥年は荒れて去り干支頭の子の年にバトンタッチ

 境内いっぱいの人々二列に並び
 お神酒いただき初めてつく鐘一つ
 ミカン二個もらい 1分間に2回なる
 百八つの煩悩取り去りて
 本堂では初護摩 社会にもきっとよい年でありますように祈る

 あかあかと燃える焚火にてをかざし
 みんなの顔のほころびてあり

 寒くないようにとお寺の奥様のぜんざいや八日会のみなさん
の甘酒の接待、心より感謝して下山しました。
 本当にありがとうございました。

 ほろ酔いの足取り軽し 初詣     

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高野山参与会本部研修に参加して
『かなくら山報』第52号 1996/01/01

                          奥荒田 S・F

 木枯らしの吹く11月末日より、2泊3日の本部研修会に参加さ
せていただきました。電車での参拝は初めてでしたので、不安と
うれしさの半々の高野山でした。

 ○紅葉の山を真下に 高野へと
     極楽橋より ケーブルに乗る
 ○早朝の高野の山に雪降りて
    大師のおわす冬の景色に
 ○涙して法話聞きおり 父母の
    慈愛しみじみ 教師の説きて
 ○奥の院 闇路を照らす 灯明に
    心静かに 座禅の修行
 ○研修の真言を学ぶ 尊さに
    大師を偲ぶ 朝のひととき

 全国より42名の内の一名に加えていただき、思わぬ参加に、
嬉しくて元気で勤めさせてもらったことを感謝しております。
 南無大師遍照金剛。合掌。    

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