『加美っ子仏教』への寄稿2000〜09
最終更新 

金蔵寺住職として、『加美っ子仏教』に発表したものです。

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                  お地蔵さん
            『加美っ子仏教』第42号(2003/03/31)より

                              金蔵寺 東野正明  

 加美っ子のみなさん、こんにちは。この『加美っ子仏教』がみなさんのところへ
とどくのは、入所式や入園式や入学式がすんで、もう新学期がはじまっている
かもしれませんね。
 新学期がはじまる、みなさん、いろいろな期待が一杯つまったこの毎日を大切
にすごしてくださいね。
 さて、お地蔵さんを知っていますか。みなさんのなかには、学校などに行くとちゅ
うに毎日お地蔵さんにごあいさつしている人もありますね。 
   「村のはずれのおじぞうさんは   いつもニコニコ見てござる」
という歌がありますが、お地蔵さんは村のはずれだけでなく、道ばたや分かれ道、
橋のたもと、山の登り口、お墓の入口、お寺の入口、どこにでもおられますね。
どうして、こんなにたくさんのお地蔵さんがおられるのでしょうか。
 仏教に「代授苦」(だいじゅく)ということばがあります。他人の苦しみを自分が
代わりにさずかるという意味です。実は、お地蔵さんは、代授苦の仏さま、すな
わち、いつでもどこでもだれの苦しみでも代わって引き受けてくださる仏さま、私
たちとともに苦しんで少しでも苦しみを少なくしやわらげてくださる仏さまなのです。
だから、私たちのすぐそばにいてくださるのです。私たちのよく見えるところにいて
くださるのです。
 子どもたちが、楽しく、なかよく遊んでいるすがたがあれば、「いつもニコニコ見て
ござる」ということになります。反対に、病気や心のなやみを持っている人のため
には、「身代わり地蔵」「とげぬき地蔵」「水子地蔵」という名前でよばれるように、
苦しみを引き受けてくださるのです。 お地蔵さんは、お釈迦さまが亡くなられてか
ら、未来の仏さまである弥勒(みろく)ぼさつさまがお出になるまでの間、この世に
あらわれて人々をお救いくださる仏さまとして、さかんに信仰されてきました。日本
では、平安時代の中ごろから地蔵信仰がさかんになり、しだいに人々のあらゆる
願いをかなえてくださる仏さまとして人々の人気を集め、地蔵講や地蔵盆などの
年中行事も行われるようになりました。
 みなさんの住んでいるところでも、八月の二十三日・二十四日ごろに子どもの
ための地蔵盆が行われるところがあるでしょう。その日は、お地蔵さんにお供え
をし、その前でお経を拝んだり、ご詠歌をお唱えしたり、じゅずくりをしたりして、
子どものみなさんには、お楽しみのお菓子がくばられたりしますね。
 お地蔵さんの、地蔵というのは、大地のなかにあらゆるもののいのちをはぐく
む力がしまいこまれているという意味です。
 お地蔵さんは、子どもを守ってくださる仏さま、という話を知っていますか。
 子どもが幼くして亡くなると、あの世の三途(さんず)の河原 で石積みをさせら
れるそうです。「ひとつ積んでは父のため、二つ積んでは母のため・・・」とお父さん
やお母さんのために小石を一つ積み、二つ積みしていくのですが、そこへ鬼があら
われて、子どもがせっかく積んだ小石を無情にもくずしてしまうのです。また子ども
が小石を積みはじめる。それを鬼がくずしてしまう。 こんなことが何度も何度もつづ
き、子どもがどんなに泣いても救いの手を求めても、なかなかかなえられないのです。
 そんな時、子どもの枕もとにそっと立ってやさしいことばをかけてくださるのがお地
蔵さんなのです。「今からは、私を冥土(めいど)の親と思いなさい」と、苦しみにあえ
ぐ子ども一人残らず救ってくださるという話です。
 加美っ子のみなさん、保育所、幼稚園、小学校、中学校にかよっているみなさん、
毎日が楽しいですか。元気に運動や勉強にとりくんでいますか。なやみや心配ごと
がありませんか。
 家庭や学校などの生活で、困ったことが起きたとき、お父さんやお母さんに、また、
お兄さんやお姉さんに、おじいさんやおばあさんに、先生に、友だちに、近所のおじ
さんおばさんに、また、お寺のお坊さんに相談することもあるでしょう。
 そんな時、みなさんの近くにおられるおじぞうさんを見つけ、そっと手を合わせて
お地蔵さんにもお願いごとをしてみてください。
「お地蔵さん、私はこんなことでなやんでいます。どうかお救いください。・・・」
 また、なやみのない人でも、
「お地蔵さん、おはようございます。今日も元気に一日がおくれますように。勉強が
できますように。友だちとなかよく遊べますように。・・・。」
「お地蔵さん、ありがとうございました。おかげさまで今日元気にすごすことができ
ました。・・・」 
 こんなあいさつをお地蔵さんにしてみてください。きっといいことがありますよ。
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               仏教とは何か?
       『加美っ子仏教』第41号(2002/12/26)より
 
 皆さん、『加美っ子仏教』です。いつも読んでいただいてますか。
 加美町仏教会は、加美町の明日をになう君たち加美っ子に大いに期待し、
仏教に関心を持っていただくために、平成元年以来、子ども向けの会報を
年三回発行してきました。
 ところで、『加美っ子仏教』の「加美っ子」は分かるけれど、そもそも
「仏教」っていったい何ですか?、って質問したい人もいるのではないで
しょうか。
 一見分かりきったような質問は、大きくなるほど、はずかしくてしにくい
ものかもしれませんね。しかし、分からないことは何でも、なになに、とか、
なぜなぜ、と問うことができるのが、君たち子どもの特権です。
 子どものときは、いつも、なになに、とか、なぜなぜ、という疑問を持ち
続けてほしいのです。あるときは、お家の方に、あるときは、学校の先生
に、あるときは、友だちに、あるときは、お坊さんに・・・、質問し、疑問を
といてほしいのです。
 さて、仏教、ぶっきょう、とは何でしょうか?
 仏教は、仏さまが説かれた教え、仏さまになる教え、のことで、今から
二千五百年ほど前に、インドにお生まれになったお釈迦さまがお説きに
なった教えです。
 皆さんは「仏教」というと、まず何を思いうかべますか。ご先祖さまが
おまつりしてある仏だんですか。仏だんの前で手を合わせて、お経を
おがんでいる家族の方を見たり、また、教えてもらって自分でも手を合わ
せている人がいるかもしれません。お寺におまいりしたこともあるでしょう。
お坊さんがお経を読んでいるのを見たり聞いたりしたこともあるでしょう。
 お釈迦さまがお説きになった教えを集めたのがお経です。何が書いて
あるんでしょう。知らない人は、お坊さんが口で、むやむやとわけの分か
らないことを言っていると思ったかもしれません。
 お経には、人が人として生きるのに何が大切なのか、人間としての
生き方が書いてあるのです。お経には、八万四千とおりの教えが書いて
あると言ったら、どう思いますか。
 「えっ、そんなたくさんのむずかしいことやったら、ならうのやめとこか。」
ですって?
 ちょっと待って! せっかくここまで読んでくれたのだから、もうちょっと
だけ。
 「仏教とは、何ですか?」
 この質問に答えることは、実は仏教の修行をした人でも本当はむずか
しいことなのです。知らない人にもむずかしいし、勉強を始めた人にも
むずかしいことなのです。
 中学生の夏期講座に出席している生徒の皆さんが、色々なお経を
ならったり、静座をしたりしたあと、決まって口にするのは、
 「仏教とは、一言で言えばどういう教えですか?」ということです。
 さて、一言で、というとまたまたむずかしい。
 しかし、この質問に対する答えとして昔から次のようなお話が伝わっ
ています。
 中国の唐の時代に白楽天という立派な政治家がおられました。中学生
の皆さんは、政治家というよりも有名な詩人として知っているかもしれま
せん。
 その白楽天が杭州というところの長官をしていたときに、待望山という
山で修行をしていた道林禅師を訪ねて問答をしかけました。
 「如何なるか、是れ仏教の大意」
 仏教の教えを一言で言いあらわすと、いったい何ですか?、と質問
したのです。すると、木の上で坐禅していた道林禅師は、
 「もろもろの悪をなすことなかれ。もろもろの善を奉行すべし。みずか
らその心をきよめよ。これがもろもろの仏の教えである。」
 つまり、「悪いことはしてはいけません。善いことはすすんで行いなさい。
そして、自分の心をきよめなさい。これが仏の教えです。」と答えられたの
です。
 それを聞いた白楽天は、なあーんだといわんばかりに、
「そんなことなら、三歳の子どもでも知っているでしょう。」といいますと、
道林禅師は、
 「たとえ、三歳の子どもが知っていることでも、八十歳の老人でも行う
ことはできないでしょう。」と答えられたのです。
 理屈で分かっていても実際に行うことはむずかしいことだ、とさとされた
白楽天は恥じ入るばかりだったということです。
 「悪いことをするな。善いことをせよ。」
 仏教の教えは、このように分かり切ったことばかりかもしれませんが、
大切なのは、それを実際に行うことだということです。私たちの毎日の
生活の中にも同じことがたくさんありますね。
 世の中で何が悪いことで何が善いことかを見きわめるために、学校の
勉強にも一所懸命にとりくんでください。そして、自分だけでなく、世の中
のみんなが幸せになれるように、善いことを実行してくださいね。
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