動き出した想い
                                                                                 (side 大石)
 


「大石〜!一緒に練習しようぜ!」


「大石〜!一緒にメシ食おうぜ!」

「大石〜!一緒に帰ろうぜ!!」

「大石〜〜!!」



コンテナでダブルスを組む約束をしてからというもの、英二がよく俺を誘いに来るようになった。

それがとても嬉しくて俺はいつも笑顔で答えてしまう。

それというのも、入学式以来ずっと友達になりたいって思っていたからだ。

英二は気付いていないだろうけど、入部して来た事がわかった時は本当に嬉しかった。

だから出来ればすぐにでも声をかけて友達になりたかったんだけど

英二の周りにはいつもたくさんの仲間がいて、なんだか声をかけそびれたまま毎日が過ぎてしまった。

あの時英二が試合しようって、言わなかったら今みたいに英二が俺を誘いに来るなんてなかったかもしれない。

今思えば、何で試合を申し込まれたのかもよくわからないけど・・・

まぁ友達になれたんだから、そんな事はどうでもいいか・・・

それにしても、いつもならもう英二が現れてもいい頃なのに、今日はまだ誘いに来ない。

別に約束をしてる訳じゃないんだけど、英二が今にも『大石〜!!』と

笑顔で飛び込んで来るんじゃないかと思うと、何故だかこうして待ってしまう。

そんな自分が可笑しくて苦笑した。



「アレ?」



英二?



何気なく教室から外を見た時に赤毛の頭が目に飛び込んできた。

英二の事を考えていたから、英二に見えるのかと思ったけど、あれは紛れも無く英二だ。

竹本達と連れ立って体育館の方へ歩いていっている。

竹本達と英二は同じクラスで、クラブも一緒だから、一緒に行動してても何も不思議な事はないんだけど

何か少し違和感を感じた。



なんだろう・・・



そうか!一緒に連れ立って歩くというより、連れて行かれてる気がする。

英二の足取りも重かったようだし・・・

そう思うと今度は物凄い胸騒ぎを覚えて、ジッとしていられなくなって、気付いたら教室を飛び出していた。





大石視点から英二視点へ交互に話が続きます。


1〜6まで有りますが、短いのでサクサク読んで下さい。(残り5ページ)