俺達が付き合う様になって5日が過ぎた。
と、言っても特に付き合ってくれと言われた訳じゃない。
ただ色んな事があって自分の気持ちに気付いて・・
そうこうしているうちに、桃先輩も俺が好きだって事がわかって・・・
お互いの気持ちを打ち明けあっただけだ。
・・・・・だけだっていうのはおかしいかな?
お互い好き同士なんだし、言葉がなくても付き合うって事になるんだろうけど・・
だけどさ・・・
「ねぇリョーマくんっ!聞いてる?」
「えっ?」
「ホント最近の越前はボーっとしてる事が多いよな!」
「堀尾くんはあまり人の事いえないけどね」
「何だよカツオ!俺に何か恨みでもあるの?」
「仕方ないじゃないホントの事だし」
「カチローお前まで・・・」
1年2組の教室、昼休み、俺の机に当たり前の様に堀尾が机をつけて
そこに5組のカチローとカツオが加わって一緒にお昼ご飯を食べる。
これは特に変な事じゃない。
1年の教室じゃ何処でも見かけるような風景だ。
でもさ・・
「ごちそーさま」
「えっ?越前もう食べ終わったのかよ?早すぎねぇか?」
「堀尾くん!それはほらっ・・」
「そろそろだよね?」
堀尾が首を傾げる。それをカチローとカツオが目配せしながら時計を指した。
「じゃあ俺。昼寝しに行くから」
俺は手早く弁当箱を包んで、鞄の中に入れると立ち上がった。
「リョーマくん待ってなくていいの?だってきっと・・」
「いい。別に約束なんてしてないし」
「でも・・・」
カチローが心配そうに俺を見上げる。
その顔に少しだけ後ろ髪を引かれたけど、俺は振り切って歩き出した。
こんなとこに学年の違う人なんて現れたら・・・
1歩1歩教室の前のドアへ近づくと、遠くの方から俺を呼ぶ声が聞こえた。
「えちぜ〜〜〜〜ん!!!!」
なっ!!
・・・・・・・・・・・・・・桃先輩・・・嘘でしょ?
これじゃあ俺が出て行く意味ないじゃん。
恥ずかしさで一瞬足を止めた俺は、周りからの視線を感じてまた教室の前のドアへと近づいた。
ったく・・あの人の頭の中はどうなってんだか・・
俺はドアの横でタイミングを計った。
あの人の来る方向、覗くタイミング
「おいっ!越前いるか!」
今だ!
俺は勢いよく教室を飛び出した。
後ろで微かに堀尾の声が聞こえる。
「今、出て行きました!!」
「何っ?!?あっこらっ!越前っ!何処行くんだよ!!」
桃先輩の声も聞こえる。
俺は振り向かずに、廊下を曲がって階段を駆け降りた。
ホント・・あからさま過ぎなんだよね桃先輩は!
あの以来毎日のように昼休みに顔出して、1年の教室に2年生がいるってだけでも目立つっていうのに大きな声でいつも俺を呼んで・・・
この不自然さに気付づいてよね!
これじゃあ俺達が特別な関係ですって言ってる様なもんじゃんか!
中庭の人気の少ない場所をみつけると俺はゆっくりと足を止めた。
後ろから追いかけてくる桃先輩を待つ。
「やっと止まりやがったな。なんで逃げんだよ」
追いついて来た桃先輩は肩で息をして、俺を見下ろした。
「何でって・・わかんないの?」
「わかんねぇよ」
桃先輩がムッとした顔で俺の目を覗く、俺は顔を横に向けた。
「毎日来すぎ」
「はぁ?何がだよ」
「だから毎日、何で昼休みに俺の教室に来るんスか?」
「何でって、そりゃあ会いたいからに決まってんだろ?」
「あ・・会いたいからって、教室にまで来る必要ないじゃないスか?
だいたい部活に出れば会えるんだし・・・」
そうだよ。朝だって一緒だし・・帰る時だって結局一緒で・・
そんなに何度も顔を合わせなくても・・・
「ハハァ〜ン!照れてんのか?」
「なっ!?誰が照れて・・」
桃先輩を見上げると、二ィと唇の端を上げている。
くそっ・・こういう時のこの人の顔・・ホントむかつく。
でも実際は今自分の顔が赤くなってるだろう事は自覚していて・・
帽子をかぶっていれば、少しは誤魔化せるんだろけど・・今はかぶっていない。
ホントニヤニヤしちゃって・・
俺は別にあんたを喜ばす為に言ってる訳じゃないんだからな!
俺は出来る限り目に力を入れて、桃先輩を睨んだ。
「そんなんじゃないスよ!ただ1年の教室に毎日来て目立つような事をしなくても
いいじゃないかって事を俺は・・・」
「まぁまぁそんな照れんなって・・大石副部長を見ろよ。
殆ど毎日ように副部長の教室で英二先輩とめし食ってんだぜ。しかも・・英二先輩の手作り弁当」
「あそこと一緒にしないで下さいよ!」
「似たようなもんだろうが」
「似てないっスよ!あそこは超がつくバカップルじゃないですか!」
「超がつくってそれはお前言いすぎ・・・でもないか・・・流石に俺も
教室で英二先輩が副部長に卵焼きをあーんしてるって話は度肝抜かれたもんなぁ・・・
いや・・まてよ。でも越前が俺にあーんしてくれるんなら俺も大歓迎・・」
「絶対しないっスから!何言ってんのあんた!?」
「何ってお前・・つめて〜なぁ。つめて〜よ。俺にだって夢ってもんがあんだからよ」
「そんな夢は見なくていいっス。兎に角・・俺の教室に来るのやめてもらえません」
「ハァ?何でだよ。お前は俺に会いたくねぇって言うのかよ?」
「会いたくないっスね」
だってそうじゃないっスか。毎日大きな声で現れて見世物状態。
みんなが陰で俺達の事を噂しているんスよ。
そんなの堪えられないじゃないっスか・・・
桃先輩だってこれが逆の立場ならわか・・・る・・・桃先輩?
見上げた桃先輩の目が大きく見開かれていた。
俺を見つめて、目を伏せる。
その後、バツが悪そうに頭をかいた。
「そうか・・わ・悪かったな。そんなにお前が嫌がってたなんて気がつかなくってよ。
俺・・何て言うか嬉しくってよ。少しでもお前と一緒にいたくてな・・
っていうか、コレでも一応気を使ってたんだぜ。
昼めしは食ってからお前の教室行ったし・・まっそれも嫌がられてたんだけどな」
「桃先輩・・・」
ちょっと・・そんな顔しないでよ・・・俺が凄く悪い事を言ったみたいじゃん。
俺はただ、みんなの見世物になるのが嫌で・・
別に桃先輩に会いたくないって言ってる訳じゃない。
時と場所を選んでくれれば・・・俺だって・・・
「ねぇ桃先輩・・俺は・・」
「もう行かねぇ」
「えっ?」
「もう行かねぇようにするからよ。もうこの話は無しにしようぜ・・
それよりこれを見てくれよ」
桃先輩がプリントを差し出した。
来た時からずっと握ってたやつだ。
でも、今はそんなのどうでもいい。
この話をちゃんとしなきゃ・・だって俺は教室に来て欲しくないけど・・
全く会いたくないなんて言ってない。
こんなのなんか嫌だ。
「桃先輩ちょっと待ってよ・・まだ話が・・」
「だからもういいって!それよりここだよ!ここ!これお前だろ?」
「はっ俺?」
桃先輩の俺って言葉に思わずプリントを覗いてしまった。
「これ・・」
「青学タイムス。都大会が終わった頃にもらったやつだよ。お前も貰っただろ?」
「ああ。これね。貰いましたけど・・それでこれが何なの?」
「何なのって・・これお前だろ?」
「そうっスけど・・」
「じゃあその・・単刀直入に聞くけどよ。告白されてないよな?」
「はぁ?」
「だからこの木の下で告られてないかって聞いてんだよ?
ほらっ!ここに小さいけど竜崎と小坂田も載ってるだろ?」
「知らないっスよ。俺寝てたし・・」
「竜崎と小坂田意外にもよ、お前に近付いてきた女子いなかったか?」
「だから知らないって・・だいたいコレ入学してすぐの頃だし
俺の事知ってる奴なんていなかったんじゃないの?」
「嘘つけ、竜崎は入学した時から知りあいだったじゃねぇか」
「それは先生の孫だったからでしょ?仕方ないじゃん」
「仕方ないって・・そりゃあまぁ・・仕方ねぇけどよ・・・」
桃先輩が口ごもる。
ったく・・ホントなんなの?
話題を変えたと思ったら・・こんな新聞・・・それよりさっきの話でしょ?
その方が俺にとっては大事な話だよ。
「一体なんなの桃先輩?俺にこれを見せてどうしたいの?」
「どうって・・心配じゃねぇか。
ここに書いてあんだろ?願いが叶う桜の噂は本当だったって・・
池田もこの話知ってるって言うしよ・・もしお前が告られてたら・・」
「桜の精ってやつ信じてるの?」
「そりゃあ・・全面的に信じてるって訳じゃねぇけどよ・・」
「なら気にする必要ないじゃん。それよりさっきの・・・」
「何だよ・・その言い方・・」
「えっ?何?」
「俺は怖ぇんだよ!噂でも迷信でもお前が絡んでる事じゃねぇか!
もしホントだったらどうすんだよ!お前と誰かがくっつくって事だろ?
そんなの俺・・堪えられねなぁ・・堪えられねぇよ・・・」
「ちょ桃先輩?俺が告白されたなんて決ってないじゃん!
っていうか、絶対ないっしょ!」
「なんでそんな事がわかんだよ!お前寝てたんだろ!?」
「それは寝てたけどさ・・でも・・」
「それにさっきだって平気で会いたくないとか言うし・・・」
「だから!それはっ!」
桃先輩のシャツを掴んだ時に、チャイムが鳴った。
最悪のタイミングだった。
桃先輩は俺の手を引き離すと、目線を外してプリントを俺に押しつけた。
「俺、戻るわ。コレもういらねぇから捨てといてくれよ」
「嫌っスよ・・自分で捨てて・・」
「じゃあなっ!」
「あっ桃先輩っ!!」
桃先輩はそのままプリントを手放すと、俺に背中を向けて走り出した。
プリントが俺の足元に落ちる。
俺はそれを急いで拾い上げた。
だけどその間に桃先輩の姿はもう小さくなっていて・・
何なんだよ・・桃先輩・・・・
久々の桃リョです!
大菊と塚不二が連載であんな感じなもんで・・・(自分で書いてるんですけど☆)
幸せな話かきたいなぁ・・と2人を書きました。
まだ↑はそんな感じじゃないですけど・・続き楽しんで下さい!
あっちなみに英二の手作り弁当の件は公式ですvvv
ペアプリVo.4・英二のある日のスクールライフの中に 12:50〜昼休み 大石の教室で一緒に手作り弁当
っていうのが載ってますvvv卵焼きの話は盛ったけどね☆
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