今日は大石とデート
待ち合わせは、この噴水の前。
俺は腕時計をなんども見ながら、大石を待っていた。
待ち合わせ時間は11時。
今は10時30分ってとこか・・・
いつもなら俺より先に来て待ってる大石も、流石にまだ来ていない。
俺はソワソワしながら近くのベンチに座った。
あぁ〜いよいよ携帯だよ。
それも大石と一緒に・・・
こんな嬉しい事ないよなぁ・・・
そんで携帯を買って帰ったら・・・・
兄ちゃんや姉ちゃんの携帯見ながら、密かに早く俺も持ちたいって思っていた思いがやっと叶うって嬉しさと
初めて持つ携帯が大石と一緒っていうのが更に嬉しさを倍増させて、今日はいつも以上に早く起きた。
そんで起きてしまうと、何だかもう落ち着かなくてこうやって早く待ち合わせに来てしまったって訳だけど・・・
う〜ん・・・やっぱ落ち着かない・・・
早く大石来てくんないかな?
大石さえ来てくれれば、もう買う店も機種も決まってんだ。
大石にOKを貰った次の日から、カタログをいっぱい集め始めて、次の日曜日が久々に部活が休みだから一緒に買いに行こうって
殆ど大石ん家で決めていた。
おーい!早くこーい!
心の中で叫びながら、膝に肘をついて人混みの中を見ていると、チラッと大石が見えた気がした。
ん?今の大石かな?
更に人ごみの中に目を凝らすと、その中の一人が手を上げた。
「英二っ!!」
駆け寄ってきたのは、大石だった。
「英二。早いじゃないか!」
「大石が遅いんだろ?」
「えっ?」
一瞬動揺した大石が、腕時計を見る
「まだ10時45分じゃないか・・・確か待ち合わせは11時だったよな?」
「でも俺は10時30分前から来てたもんね」
「そうなのか・・・ごめん。じゃあもっと早く来れば良かったな」
大石が済まなそうな顔をしている。
別に大石が悪い訳じゃない・・・
俺が勝手に待ち切れなくて早く来ただけだから・・・
だけど普段待ったりしないから、少し待つとついこう何て言うか・・・
意地悪言っちゃうって言うか・・・
しかしこれは不味い・・・
せっかくのデートなのに、それに念願の携帯を買いに行くのに、こんな事で雰囲気が悪くなるのは嫌だ。
俺は慌てて訂正した。
「うそうそ。あっ早く来てたのはホントだけど、別に待ち合わせは11時だったし・・
大石はそれより早く来てんだし・・・俺怒って無いから。それより早く行こ。
俺、早く買いたくて待ちきれなくて、早く来たんだよねぇ」
早く・・・早く・・・早く・・・
ついつい言葉の中に何度も早くって使ってしまう。
どんだけ急かしてんだよって、どこかで冷静な俺もいるんだけど・・・
やっぱ駄目・・・早く買いに行きたい。
大石はそんな俺の姿に苦笑した。
「そうか。わかった急ごう」
携帯ショップに着いて一時間・・・
大石の家であんなにカタログ見て、コレって決めていた筈なのに、実際実物を見ると
やっぱこっちの方がいいかな?
なんて思って、中々決められずにいた。
「英二。どうするんだ?」
「え〜ちょっと待って。やっぱこっちかなぁ〜それともこっちの方が・・・
大石はどっちがいい?」
「えっ俺?う〜ん・・・見た目はこっちかな・・・でもこっちの方は使いやすい感じが・・・」
「どっちだよ?」
「じゃあ。こっち」
大石が使いやすい感じがするっていう方を選んで指を指した。
「えぇ〜〜こっち?」
「え〜って英二・・・それじゃあいつまでも決まらないだろ?」
「わかってるよ。んな事・・・でもその形がなぁ・・・」
「英二」
「わかった。んじゃやっぱコレにする」
結局大石の家で決めていた機種にして、俺達は大石の家に戻る事にした。
「結局それになったな」
大石がトレーにジュースとお菓子を入れて戻って来た。
俺は大石の家に着いてから、速攻で携帯と説明書とにらめっこ。
「そっ・・・だな」
だから大石の問いかけにも顔を上げず、ひたすら携帯のチェックをしていた。
俺、結構こういう事は覚えるの早いんだよね〜
大体の操作を把握して、んじゃ登録していくかって大石を見ると、大石は俺を見ていた。
「何?」
「いや・・・真剣だなぁ・・・と思って」
「どう言う意味だよ」
「こんなに集中している英二見るのって、試合の時ぐらいだなって・・・」
「大石。喧嘩売ってんのか?」
「えっ?そんな訳ないじゃないか・・・それに悪い意味じゃなくて・・・」
じゃあどういう意味だよ・・・
って思ったけど、まぁ大石に悪気が無いのはわかってるからこれ以上追求するのは止めた。
それよりも・・・テーブルの上に置かれた箱の方が気になる。
大石の奴、まだ説明書も出してないのか?
「まぁいいや。んで・・・大石。その箱いつになったら開けるんだ?」
「えっ?あっあぁ・・・今から開けて説明書読んでみるつもりだけど・・・」
「早くしろよ。大石のを一番に登録しようと思ってるのに出来ないじゃんか」
「わかった。すぐ読むから」
大石は言われるまま、アタフタと箱から説明書を出して読み始めた。
読み始めたんだけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・長いっ!!
俺が大石に出して貰ったお菓子を食べつくしてしまうぐらい長い。
っていうか大石の奴、律儀に前から順番に読んでるみたいだけど、それ全部読むきか?
俺は思わず大石の側へ行って、説明書を取り上げた。
「何するんだよ英二」
「何じぁないよ。コレ全部読むきか?」
「えっ?だって説明書だろ?」
「全部読まなくていいよ。必要なとこだけ読んでパパッと覚えればいいだろ?」
「そんな器用な事できないよ」
「頭いいのに?」
「頭は関係ないだろ?」
ったく大石は・・・ホントこういう事に不器用なんだよなぁ・・・
真面目っていうか・・・まぁそんなとこも好きだけどさ・・・
でもだからって大石の奴が説明書全部読み終えるまで待つなんて出来ないし・・・
俺は今度は大石の携帯を取り上げた。
「俺が教える」
「えっ?英二もう覚えたのか?」
「まあね。だから大石は俺が教えた事覚えてよ」
じゃないといつまで経っても、俺の計画が実行出来ない。
俺は大石の横に移動して、取り上げた携帯を大石に見せながら説明した。
「コレがこれで・・・これがコレ・・・わかった?」
「う〜ん。大体は・・・あんまり自信はないけど・・・」
「まぁアレだよ。様は慣れじゃん。使ってれば自然と覚えるって!」
「そうか・・?」
「そうだよ!んじゃさ。早速赤外線でアドレス送るから大石はそれ登録して俺にメール入れて」
「赤外線?っていうかアドレスまだ決めてないんだけど・・・・」
「もう早く決めろよ!何でもいいじゃん!eiji-loveにでもするか?」
「えぇ!!それはちょっと・・・すぐ決めるから待ってて・・・えっと・・・」
大石は俺から携帯を取り上げて、モタモタと登録をし始めた。
俺はジュースを飲みながら、大石が登録し終わるのを待つ。
それにしても・・・・
「まだー?」
「あともう少し・・・」
「まだー?」
「だから、あともう少しだって・・・」
あーもうホント大石の奴・・・遅いよ・・・
取り上げて、マジでeiji-loveって入れてやろうか?
それはそれで面白いんじゃね?
待ちくたびれて、そんな事を考えてるとようやく出来上がったみたいだ。
「よし!出来た。それで・・・赤外線って?」
「だからさっき教えたじゃん!」
「えっそうだったか?」
「もういい。貸して、俺がするから」
俺はまた大石から携帯を取り上げて、一応大石に見せながら赤外線で俺のを送った。
そして受信したのを確認して登録する。
「俺が1番だな」
「そうだな」
ニシシって大石に笑いかけると、大石は苦笑していた。
うん。先ずは、第一段階OK!
「んじゃあさ、大石は俺にメールして」
「わかった・・・えっと・・・」
また大石がモタモタ操作している。
まぁ・・・いいや最初はこんなもんだろう・・・
これから毎日使うようになれば、大石だってパパッて使えるようになるさ。
それより・・・大石はなんてメール送ってくれるのかな?
1番初めに受信するのは、大石のメールって決めてたんだよね。
大石は話の流れ上って思ってるかも知んないけど・・・
俺の計画・・・・気付いてるかな?
なるべく大石の手元を見ないようにして待っていると俺の携帯の受信音が鳴った。
「来た!来た!」
俺は急いでメールを確認した。
タイトルは・・・・『英二へ』
うんうん何々
『テスト』
って・・・何だよコレ〜〜〜〜〜!!!!
色気ねぇー!!!
「大石っ!何コレ?もっと他に入れる事なかったの?」
「入れるって・・・番号がわかればいいんだろ?」
「そうだけどさ。他にも何かあるじゃん!1番最初のメールがこれってやだ!」
俺はブーって思いっきり頬っぺた膨らませて拗ねて見せた。
大石は『そんな事言われても・・・』って困っている。
だけどさっ。もうちょっと何か考えて入れてくれてもいいんじゃね?
俺、凄く期待してたんだよね・・・1番初めのメール・・・
まぁ勝手に計画して・・・勝手に期待してたんだけどさっ・・・
流れ上大石が『テスト』って入れてしまうのも、わからないでもないけど・・・
甘い言葉入れて欲しいって思うのは、わがままなのかな?
でも・・・入れて欲しいって思うじゃん!
口には出来なくても・・・文ならOKかな?とか・・・思うじゃん。
やっぱここは、仕掛けるしかないのかな?
「んじゃあさ。俺が見本見せてやるよ。大石は少し向こう向いてて」
大石に見られないように、素早く写メを撮って、まぁ音は聴こえてるだろうけど・・・
兎に角それを添付して、文を打ってメールした。
暫くすると大石の携帯の受信音が鳴って、大石は携帯を手にとってメールを確認している。
その顔がみるみる赤くなっていった。
そして横目でチラッと俺を見た。
俺は大石の腕に縋るようにして、上目遣いで大石を見る。
「どう?」
「どうって・・・うん」
「うん。じゃわからないじゃん。言うのが無理ならメールで返してくれてもいいけど?」
「・・・わかった」
大石は目線を携帯に移して、何やら打ち出した。
俺はまた見ないようにして待つ。
何て返事くれるかな?
さっき俺が大石にメール入れたのは、カメラに向かってチューてした写メと
タイトル・・・『大石へ』
『俺は大石が大好きなんだけど、大石は?』
って・・・文
だってさ、俺達付き合い始めてもう半年以上経つのに、大石から好きって言葉聞いた事がないんだよね・・・
何で言ってくんないのかは、わかんないけど・・・
大切にしてくれてるのは、わかってるから・・・
俺の事好きだって思ってくれてるのは、わかってるから・・・
だから大石が自然と言ってくれるの待ってるんだけど、中々言ってくんないんだよね。
キスだっていつも俺からだし・・・
だけどさっ。メールなら言って貰えるんじゃないかって・・・
期待してたんだ。
まぁ・・・1度目のは失敗したけど・・・
今度はちゃんと聞いてるもんね。
だからちゃんと返事くれるよな?
携帯を見ると、メールが入ってきた。
俺はチラッと大石を見て、メールを見る。
タイトル・・・『英二へ』
はい。はい。何々
『俺も』
・・・・・・・・・・・・・・・・・大石・・・・お前って・・・・・・・・・・・ホントに頑固だよな。
俺は携帯をテーブルの上に置くと、大石の方へ振り返った。
「大石のバカ!」
そう言いながら、座ってる大石の胸に飛び込んで、叩いて押し倒した。
「嬉しいけどさっ・・違うじゃん!」
「えっ?英二?」
何が違うかって事・・・この顔だとわかってないんだろうな・・・
大石は振り払ったりしないけど困った顔で、俺に押し倒されている。
俺はそのまま大石の胸に頭を乗せた。
あぁ・・・2度目も失敗か・・・
まぁこんな事で焦っても仕方ないのかな・・・
いつかはちゃんと声に出して好きっていってくれるよな?
メールだって、俺も。じゃなくて、ちゃんと好きって入れてくれるよな?
それまで気長に待つしかないかなぁ〜
大石の鼓動を聞きながら目を瞑る。
暖かくて気持ちがいい。
取り敢えず携帯の1番はGETしたんだし・・・
今はこれで我慢してやるか。
最後まで読んで下さってありがとうございます。
今日でサイト1周年・・・ここまで続けてこれたのも、読んで下さるみなさんのおかげです。
これからも大石1番で、そして黄金大好きで、書き続けて行きますので宜しくお願いします。
2007.11.17