「なんだよ!なんで大石まで一緒に行かなきゃいけないわけ?」
「だから英二・・・さっきから説明してるじゃないか・・・手塚一人じゃ大変だろうから 頼むなって、大和部長に頼まれたって・・・」
「そんなのさ〜手塚副部長の意味ないじゃん!」
「英二〜意地悪言うなよ〜」
大石は困った顔したけど、そんなの知らない・・・
不二に背中を押してもらった後、俺は大石を呼び出して二人で屋上まで来ていた。
ここなら人も少ないし、ゆっくり話が出来る。
そう思って来たけど、大石は色々忙しいみたいでゆっくり話が出来ないって言うし・・・
んじゃ帰りにって思ったら、手塚のお供で会議に出るから駄目だって言うし・・・で 俺はかなり拗ねていた。
だって俺にとって今日はとても大切な日なのに・・・
やっと覚悟を決めたのに・・・
去年の秋、三年生が引退する時に当時の部長・・・大和部長が手塚を副部長に任命した。
それというのも青学テニス部では恒例で、引退する部長が次の部長と副部長を決める事になっている。だけど大抵は強い人が部長っていうのが今までの流れで・・・
だけど手塚は一年生にしてすべての先輩の中でも一番強かったから、揉めに揉めて最終的に大和部長が手塚を副部長にして、当時二年だった先輩達を納得させた。
だけど手塚が部長の補佐なんて器用な事が出来るわけもなくて、結局先輩と手塚のパイプ役に大石がかりだされている。
まぁようは面倒事を押し付けられてるってわけ。
なのに当の本人はあんまりその事を苦に思っていない・・・
むしろ手塚が副部長に選ばれた時も一番喜んでたし・・・
手塚の手伝いも進んでしてるように見える・・・
だから俺はそんな大石に苛立って、手塚に対しては嫉妬の炎を燃やしていた。
「大石さー!俺。今日すご〜く大切な話があるんだよね」
「それはわかったけど・・・だけど今日は竜崎先生に呼ばれているし・・・別の日じゃ駄目なのか?」
「呼ばれてるのは手塚副部長だろ?」
「英二〜勘弁してくれよ〜」
ハァーと大きく溜息をつく大石を見ながら、俺だって溜息つきたいよ!と思う。
俺だって今日告白するって決めるの大変だったんだ。
桃に背中押してもらって、色々考えて・・・
今だって不二に告るって宣言して、勢いつけて来てんだぞ!
だから今日じゃなきゃ駄目!明日にしたらもう言えないかも知れない・・・
なのに・・・バカ石!俺の気持ち少しは察しろよな!!
「じゃ話が終わるの待ってる・・・」
「えっ?でも遅くなるかもしれないし・・・そんなの悪いよ・・・」
悪いと思うなら行くなよな!って言いそうになったけど、大石が本当にすまなさそうな顔をするから結局言えないまま・・・
「嫌だ!待つ!!」
そう言って無理矢理コンテナで待ち合わせる事にした。
部活が終わって大石と約束した通り、俺はコンテナの上でゴロゴロしながら待っていた。
日はだいぶ傾いてきたけど・・・まだまだ暑い・・・
「大石・・・今頃手塚と仲良く会議か・・・あ〜もう暑いよ!」
待つって言ったものの、こうやって待っていると色んな事考えてドキドキするよな〜
大石の奴、俺に告白されるなんて思ってもないだろうし・・・
あ〜勢いで言うつもりだったのに・・・
いやいやこれはこれで良かったのかも・・・だって大石の返事もじっくり聞けるし・・・
だけど断られたらどうしょう?明日からダブルスも・・・ていうかテニス自体一緒に出来なくなるかも・・・ハァ〜
駄目だ駄目だ!そんな事はずっと考えてた事じゃないか!!
それでも告白するって決めたんだ!大石がどう思おうと、俺は大石が好きなんだ!!
よし!!・・・・ってあ〜なんだか怖くなってきた・・・
心の中で自問自答していたら、不意に大石に呼ばれた。
「英二―!!」
俺はガバッと起き上がって、急いでコンテナの下を覗いた。そこには額にうっすらと汗をにじませて、ハァハァと息を整えながら手を振る大石がいた。
「おっ大石・・・早いじゃんか・・・もっと遅くなると思ってた」
「ああっホントはもう少しかかる予定だったんだけど、手塚に言って俺だけ先に出てきたんだ・・・英二すご〜く大切な話があるんだろ?」
そうなんだけど・・・俺の為に会議ぬけて来てくれたんだ・・・
それにこの様子だと、学校からここまで走って来てくれたんだろうな・・・
ホント大石って何気に嬉しい事するんだよな・・・
「まぁ取り敢えず上がってこいよ」
俺はコンテナの上から手を差し伸べて、大石を引き上げた。
大石はそのまま俺の横にあぐらをかいて座り、いきなり本題を聞いてきた。
「それでそのすご〜く大切な話って何なんだ?」
えっと・・・何なんだって言われても・・・こんな事いきなり言ってもいいのかな?
もっと世間話したりとか、ワンクッション入れてからの方がいいような・・・
あ〜こんな時女の子はどうしてただろ?俺だって告白の一つや二つ・・・いやもっと・・・ された事ぐらいあるのに・・・全然覚えてないや・・・
こんなに緊張するなんて・・・女の子って凄いな・・・
それに桃だって・・・
「英二どうしたんだ?そんなに言いにくい事なのか?」
俺がなかなか話出さないから、大石は不思議そうに俺の顔を覗きこんで来る。
「いや・・・その・・・」
そーなんだよ!そんなに言いにくい事なんだよ!だからあんまり顔を近づけんなよ・・・
緊張するだろ!!・・・って呼び出したの俺だよな・・・・
大石は俺の話聞きに来てんだから・・・
よしっ!ここは思い切ってストレートに俺の気持ちぶつけてみよう・・・
俺は覚悟を決めて大石に話始めた。
「おっ大石・・・その・・・笑わないで聞いてくれる?」
緊張のあまり少し声が上ずってしまったけど、俺の真剣さが伝わったのか、大石も真面目な顔つきになる。
「あっああ・・絶対に笑わない」
俺はその言葉を受けて、深く深呼吸して大石の眼を見つめた。
「俺・・・大石が好きだ・・・」
大石の眼が大きく見開いて、少し何か考えたみたいだったけどすぐに返事をくれた。
「俺も英二が好きだよ・・・」
英二が好き・・・いつもの優しい大石の声・・・
ずっと大石の口から聞きたいと思ってた・・・けど・・
だけど違う・・・今大石が言った好きは絶対友達としての好きだ・・・
俺が聞きたいのは、もっとちゃんとした好き・・・
愛してるんだよ大石・・・
まさかこんな展開になるとは思わなかった・・・拒絶されたら?もし付き合えたら・・?
色々考えたけど・・・俺の気持ち自体が伝わらないなんて、どうしたらいいんだよ!!
あ〜〜〜〜〜〜もうっ!!
自分の気持ちが伝わらないジレンマと焦りで俺は思わず、大石の胸ぐらを掴んで自分の方に引き寄せていた。
「大石・・・俺の好き!はこうゆう好きなんだよ」
そう言いうと同時に俺は大石の唇に自分の唇を重ねた。
そしてゆっくり唇を離して、もう一度大石を見つめる。
「ねっ・・・わかってくれた?」
大石は自分の口に手をあてて、耳まで真っ赤にして固まっている。
俺だって恥ずかしいんだよ!だけどこうでもしないとお前気付かないだろ?
でも・・・少しやり過ぎたかな・・・大石まだ固まってるよ・・・
いつまでも真っ赤なまま固まってる大石に痺れを切らして俺は大石に返事の催促をした。
「あの・・・大石・・・返事・・・ほしいんだけど・・・」
「あっああ・・・そうだな・・・」
大石は何かを考えるように、少し真面目な顔になって何か言おうとした。
ヤバイ・・・断られる・・・
そう思ったら急に怖くなって、体が震えた。
そして拒絶の言葉を聞くのが嫌で返事を聞く前に俺の方が先に話始める。
「おっ大石・・今俺にキスされてどうだった?嫌だった?俺、本気なんだよ・・・ 男同士とかそんなの関係なく大石のホントの気持ちが知りたい・・・それで駄目なら諦めるから・・だけど少しでも嬉しいとか思ってくれたなら俺と付き合ってよ」
「英二・・・」
大石はまたそのまま黙ってしまった。
沈黙が重い・・・大石、今何考えてるの?
ひょっとして・・・俺の事傷つけない言葉探してる?
大石真面目だもんな・・・やっぱり・・・こーゆうの受け入れて貰えないよな・・・
俺の心が不安で一杯になった時、大石がようや口を開いた。
「英二・・・あの・・・俺でよければよろしく・・・」
・・・えっ?今なんて・・・?
予想外の言葉に動揺しながら大石を見たら、大石も真っ赤な顔で俺を見つめていた。
「それって付き合ってくれるって事?」
「ああ」
「それって俺の事好きって事?」
「ああ」
「俺・・・男だよ・・・」
「そんな事わかってるよ!」
思わず確認してしまった・・・
ホントなんだ・・・大石と付き合えるんだ・・・
これからはもう・・・自分の気持ちにうそつかなくていいんだ・・・
大石・・・大好き!!
抑えていた気持ちが一気に爆発して、俺は大石に抱きついた。
「大石っ!!」
「うわぁ!英二!!」
大石は俺に抱きつかれてかなり動揺してるみたいだけど、そんなのかまってらんない!
だってすっげーうれしい!!
「うれしいよ!大石!」
「あっああ。俺もうれしいよ」
「じゃあ今から俺達恋人同士って事だよな?」
「そっそうだな」
「じゃあさ!じゃあさ!大石浮気すんなよ!!大石は俺の大石だかんな!!」
「ハハ・・・こりゃ大変・・・」
照れながら笑う大石が俺の側にいる・・・
俺・・・勇気出して良かった。
今までずっと、ずっと隠してきた想い。
これからはいつでも大石の事好きだって言える・・・
大石が俺の気持ちを受け止めてくれる。
桃・・・俺、ちゃんと大石に告れたよ。
不二・・・大石に俺の気持ちが届いたよ。
夕日に照らされたコンテナの上で俺は幸せの絶頂にいた。
なんとか書き上げました☆桃から始まり、手塚そして英二の目線で同じ時間を共有しながら
それぞれの想いがあって、その想いが交差するというのを書きたかったんですが・・・
どうでしょう?これからも大菊を通してみんな一緒に成長させて行きたいと思ってます。