Happy Birthday Dear Oishi 3







「今日はメールも電話もなしか・・・・」


家に帰ってから、何度携帯の画面を見ては、閉じてを繰り返しただろう・・・

時間はもうすぐ23時になろうとしている。

いつもならこの時間には、寝てしまうんだけど・・・

今日は何だか、寝る気分にならない。

っていうよりも・・・英二が気になって眠れない。

やっぱり・・・英二は俺の誕生日を忘れているのだろうか・・・?

英二の誕生日の時もクリスマスの時も・・・イベント前には、英二から

『大石の家で祝いたい』とか・・・『ケーキが食べたい』とか

色々と予定を立てたりしていたのに今回は全くそれが無い。



4月に入ってあまりの忙しさに、英二とゆっくり過ごす時間が減ってしまったから

英二に愛想をつかれてしまったのだろうか?

イヤ・・・でも・・・一緒にいる時の英二は特に変わった様子もないし・・・

それにホワイトデーが過ぎて少し経ってから、



『大石ってさぁ副部長になったり、生徒会実行委員補佐になったりしてさ、 すっごく忙しいじゃん。

俺・・・寂しいんだよね。だからさぁ・・・いつでも連絡取れるように携帯買わない?』

『そうだな・・・俺もそろそろ買おうかと思ってたから・・・』

『んじゃ決まりだな!』



丁度携帯を持とうか?と思っていた時に、英二からの誘い。

寂しい・・なんて言われて、放っておける筈もないし

早速二人で、おそろいの携帯を買いに行った。

それからというもの、毎日のようにメールや電話のやり取りをしている。

だから、ゆっくり過ごす時間はなかったけど、話す時間が無いという事はなかった筈だ。



しかし・・・今日に限って、その携帯も沈黙したまま。

気が付けば・・・もうすぐ日付が変わろうとしている。

英二・・・



もう一度携帯の画面を見て、何も着信されていない事を確認してから、諦めて携帯を机に置こうと立ち上がった時に

マナーモードにしていた携帯が急に震えだす。



「うわっ」



驚いて見て見ると、メールが入っていた。

英二からだ!!

俺は急いで中を見た。




 〈大石 15歳 お誕生日おめでとう!!

 起きてる? 寝ちゃったかな?   もし起きてたら・・・窓の外を見て〉 




英二・・・やっぱりちゃんと覚えてくれてたんだ・・・

さっきまでの不安な気持ちはアッというまになくなり、心の中に暖かいものが込み上げてくる。


それにしても、窓の外って・・・何かあるのだろうか?

俺は英二からの指示通り、そっと部屋の窓を開けてみた。

そこで目にしたものは・・・こんな時間にいる筈の無い・・・英二。

英二も俺に気付いて、手を振っている。



「えっ英二っ!!」



思わず大きな声が出てしまい、慌てて口を噤む。

時間が時間なだけに大きな声は近所迷惑になる。

俺は慌ててパジャマから服に着替えて、家族に気付かれないように、足音を立てずに急いで外に出た。



「英二っ!どうしたんだ?こんな時間に」



英二はへへへっと笑いながら、俺の腕に纏わりつく



「驚いた?一番に大石におめでとうが言いたかったから・・・」

「それなら、今日泊まれば良かったのに・・・」

「だって大石。自分の誕生日忘れてたっしょ!だからちょっと脅かしてやろうかな〜 なんて思ってさ!

英二くんのドッキリサプライズバースデー な〜んてね!」

「英二・・・」



英二の発想にはいつも驚かされるけど・・・

思いがけない事にホントに驚いた。



「それよりさ、ココじゃちょっと話しにくし、近くの公園に行こうぜ!」

「えっ?今から?時間は大丈夫なのか?」

「う〜ん。実はあまり無いんだ。兄ちゃんにすぐに帰るからって言って出てきたし・・ だから急ご! 後ろに乗って」



英二は自転車にまたがって、俺が後ろに乗るのを待っている。



「あぁ。わかった」



俺は自転車の後ろにまたがった。



「んじゃ行くぞ〜!出発進行―!!」

「英二っ。声でかいよ」

「あっ・・へへっ忘れてた」



静かな住宅街に英二のニャハハハ〜って声が響く。
















4月最後の日・・・だけど夜ともなれば、外はまだまだ肌寒い。

公園に行く途中のコンビニであったかいコーヒーを買って、小さなベンチに腰掛けた。



「んじゃ大石。改めて・・・お誕生日おめでとう」

「ありがとう英二」



コーヒーの缶をコンとぶつけて、少し飲む・・・温かい。

体より心が温かい・・・英二の想いが嬉しい。

まさか誕生日にこんなサプライズがあるなんて・・・

英二の笑顔を見ながら浸っていると、後ろ手で何かを出していた英二がそれを俺の目の前に出した。



「ハイ大石。プレゼント!」

「俺に・・・?」

「当たり前じゃん! 大石以外に誰がいるっていうのさ」

「そうだな・・・」



確かに当たり前なんだろうけど・・・

俺にとっては突然の誕生日会に、まさかプレゼントまで用意してくれているって 思わなかったから・・・



「開けてもいいか?」

「もちろんいいよ!」



英二の了解を受けて、包みを開けていく。



「これは・・・」

「気に入った?」



中から出てきたのはシンプルなフォトフレーム



「あぁ。凄く気に入った」

「良かった。これでも大石の部屋に合う様に選んだんだぞ」



英二が嬉しそうに、選んだ時の話をしてくれる。

俺はそれを聞きながら、英二が俺の誕生日を忘れているのかもしれないなんて・・・

少しでも思った事を後悔した。

俺は忙しさのあまり自分の誕生日すら忘れていたというのに・・・


英二はちゃんと俺の事を考えてくれていたんだ・・・

この日の為に前もって準備して・・・

でも・・・もし俺が寝てしまっていたら・・・

英二はどうするつもりだったんだろうか・・・


イヤ・・・英二の事だから、それでも何とかするって思っていたのかもしれないな・・・




「英二。本当にありがとう」

「いえいえ。大石が喜んでくれたら俺も嬉しいから」



照れながら優しく微笑む英二がいじらしい。


英二・・・

今すぐ抱きしめたい・・・


だけど・・・今抱きしめたら・・・英二を家に帰す自信がない・・・

そんな事になったら、お家の人が・・・

すぐに帰るって約束したお兄さんが心配するだろうし・・・


俺は自分の理性を総動員させて、英二を抱きしめるのを我慢した。

そして気持ちを落ち着かせる為に、コーヒーを飲む。



「それと・・・もう1つプレゼントがあるんだよね」

「えっ? まだあるのか?」



英二からのプレゼント・・・

フォトフレームだけで十分嬉しいのに、まだあるなんて・・

何だか申し訳ないな・・・



俺はコーヒーを飲みながら、英二の言葉の続きを待った。



「うん。俺・・」



ブッーーーーーーーーーー!!!



「うわっ!大石何噴いてんだよ!きちゃないなぁ〜もう!写真にかかっちゃうじゃんか!」



えっ写真???

なんだ・・・俺・・なんて・・言うからてっきり・・・



「ゴホッ・・・ゴホッ・・・すまない・・・ちょっと気管に・・・」

「ホントにもう・・・」



そういいながら英二が、かかったコーヒーを拭いてくれた。



「ホントに・・・ごめん」

「いいよっ。それよりさ、フォトフレームかして」



英二に言われるまま、フォトフレームを渡すと、その中に写真を入れている。

それにしても英二・・・紛らわしいよ・・・



「はい完成! これが本当のプレゼント」



渡されたフォトフレームの中には、満面の笑みで肩を組む俺達がいた。



「これは・・・」

「思い出した? こないだの練習の後に不二に撮って貰った写真。 いいのが撮れてるよって、不二がくれたんだ」



あぁ・・・そうだ・・そういえば少し前に不二が新しいカメラが手に入ったとかで、

練習が終わってからみんなを撮って回っていた。

その時に俺達も撮って貰ったんだ。

ダブルスの練習をした後で凄く疲れてはいたけど、めったに写真なんて撮らないから、 二人ともテンション上がってたよな。

なんだか一緒に撮って貰うのが嬉しくて・・・

そうか・・・あの時の・・・



「ホントによく撮れてるな」

「そーだろ!俺も気に入ってんだよね。だからさ・・大石コレ絶対に部屋に飾れよな」

「えっ?」

「飾るだろ?」



英二がジロッと睨みをきかす。

そんな・・・目で見なくても・・・



「あぁ・・うん。机の上にちゃんと飾るよ」



英二はよしよしと満足そうに、頷いている。

ホントは少し恥ずかしいけど、帰ったらすぐに飾ろう。

机の上に置いて、いつでも見れるようにしよう。

暫く二人で、フォトフレームの中の写真を見てると、英二の携帯が鳴った。



「あっ!兄ちゃんからメールだ! えっと・・・早く・・・帰って来いってさ・・・」



メールを見て、英二が寂しげな顔を向ける。

嬉しさのあまり、時間を気にするのを忘れていた。

慌てて、携帯の時間を見ると、もう1時前・・・

タイムリミットが近づいていた。



「仕方ないよ英二。今日はもう帰ろう。お兄さんが心配してるよ」

「うん・・・」



英二が切ない目で俺を見る。

俺だってホントは、英二とこのままずっと一緒にいたい・・

帰したくない・・・けど・・・



「今日の練習が終わった後、英二は・・・予定はないのか?」



なるべく英二を安心させるように、優しく声をかける。



「えっ?」

「俺の誕生日は、まだ終わってない・・・だろ?」

「あっうん。そうだった。実はね、練習が終わったら水族館に行こうって言うつもり だったんだ。そんでもって

誕生日会の続きしようかなって・・」

「うん。じゃあ そうしよう。練習が終わったら、一緒に水族館へ行って 俺の誕生日一緒に祝ってくれる?」

「うん!!」



英二の顔に笑顔が戻った。

やっぱり英二には、笑顔が似合う。




「じゃあ 帰ろうか」



俺が立ち上がると、英二が慌てて声をかけてくる。



「あっ大石。俺送ってやるから、自転車の後ろに乗りなよ」

「いいよ。もう遅いし英二はこのまま帰った方がいいよ。 それに、ここから歩いて帰っても、俺の方が英二より早く着くよ。」

「そうかな?」

「そうだよ。それにお兄さんだって心配して待ってるよ」

「そう・・・だよな。じゃあそうする」



そう言って英二は、自転車にまたがった。



「じゃあな大石。えっと・・・また後で」



『また後で』英二の言い方が可笑しくて苦笑する。

確かに、数時間後にはまた顔を合わすもんな。

だけど・・・それでもホントは離れたくない、帰したくないと思っている俺がいる。



「あぁ。また後で、気をつけて帰れよ。それと家に着いたらメール入れて。 俺起きてるから・・・それとホントにありがとう」

「うん。わかった。大石も気をつけて帰れよ。じゃあな」



英二が自転車のペダルに力を入れてこぎ始める。

俺はその姿を見送って帰ろうと思ったが、公園の出口まで行った英二が引き返してきた。



「どうしたんだ英二?」

「ちょっと忘れ物!」



そう言って、自転車にまたがったまま手招きをする。



「何を忘れたんだ?」



戻ってきた英二の側によると、肩をつかまれて引き寄せられた。

そしてそのまま英二の唇が俺の唇に重なる。



「愛してるよ」



・・・やられた・・・



英二は真っ赤な顔をしながら『んじゃな!』とそのまま、手を振って公園を出て行ってしまった。

一人公園に取り残された俺は、暫くボーと立ち尽くしていたが、我に返って歩き出す。



英二・・・

俺だって英二の事、愛してるよ・・・



英二から貰ったフォトフレームの中の写真に目を落とす。

写真の中の俺達は本当に幸せそうで、見ているだけで心が満たされる。



最高のプレゼント

最高の誕生日

最高の恋人



この先も、写真の中の英二を見るたびに今日の事を思い出すだろう。


英二・・・俺・・・ホントに英二に出会えて良かったよ。

英二に出会わなければ、こんな喜びも知らずに過ごしていたと思う。



英二・・・好きだよ・・・愛してる



しかし・・・・

もう俺の理性がなくなるのも・・・時間の問題だな・・・・

                 


 

                                                                      END





大石お誕生日おめでとう!!


大石が好きでサイトを始めましたが・・・無事大石が祝えて良かった(笑)

しかし・・・大石を書くと・・・若干笑いの方へ流れてしまうのは・・・ラジプリの大石の影響かな?

アニプリ?・・・いや・・・原作も・・・そんな大石か(笑)

まぁ取り敢えず・・・おめでたいって事で!!

こんなお話ですが・・・喜んで頂けたら嬉しいです☆

2007.4.30