Happy Birthday Dear Oishi 2





なにやってんだか・・・・


俺はキッチンで一人大きな溜息をついた。


プレゼントだってちゃんと用意してんのに、渡す前にこんなとこ逃げ込んでどうすんだよ!

大体企画したのは俺だろ・・大石を祝えれば良かったんじゃないのか・・・?

しっかりしろ!菊丸英二!


俺は自分に激を飛ばした。



「英二?何やってんの?ケーキ切るよ」

「あっごめん。ちょっとさ、コップ足りないかなって・・・へへへ」

「早くおいでよ」

「うん」



不二に気付かれたかな?

だ・・大丈夫だよね?

俺の様子が変なのバレてなきゃいいけど・・・


急にキッチンに顔を出した不二に驚きながら、俺は言われた通りリビングに戻った。


擬装用のコップを手に・・・

だけど・・リビングに入ってみんなの姿を見て、俺は大変な事をしてしまった事に気付いた。


和やかに弾む会話。

配られるケーキ。



どうしよう・・・俺プレゼント渡しそびれた・・・
















それからはもうプレゼントの事が頭を占めて仕方が無い。

みんなの会話も半分ぐらいで聞いて、大石に渡すチャンスはないかって様子を伺って・・・


大石の事を祝えても、プレゼント渡せなかったら・・・意味無いじゃんか・・・


そんなことばっかり考えて・・・結局2時間経ってしまった。

ろくに大石と会話する事も出来ずに、プレゼントも渡すことが出来ずに・・・






「ゴメンね。母ちゃんホントに2時間きっかりに帰ってきちゃってさ」



俺はみんなを玄関で見送る。



「いいよ。そんな事より片付け良かったの?」



不二が心配そうに俺を見た。

俺は大袈裟に顔の前で、手を振った。



「いいって、いいって、母ちゃんいるし、これからみんなどんどん帰ってくるし」

「そう。じゃあお言葉に甘えて帰るね。じゃあまた明日」

「おう!みんな気をつけて帰れよ」



不二を先頭に「じゃあな」とみんなゾロゾロ玄関から出て行く。

最後に大石だけが残った。


大石・・・



「あの・・英二。今日は本当にありがとう。俺の為に家まで貸してくれて・・」

「そんなのいいよ。俺の時も祝ってもらったし・・」



って・・・しまった・・・こんな事が言いたいんじゃない。

やっと大石と2人で話せてるんだ。

プレゼントの事言わなきゃ・・・今、渡さなきゃ・・・



「ケーキも本当に上手で・・・その・・美味しかった」

「えっ?あぁ・・そんな、たいしたケーキじゃないし・・」

「そんな事はないよ!手作りでアレだけ上手に出来るなんて・・・もっと自慢していいよ!」



プレゼントの事を・・・って思ってるのに、急に大石がムキになって反論するから俺は言葉に詰まってしまった。



「えっと・・・大石・・・?」

「あっ・・ごめん。兎に角ホントに嬉しかった。ありがとう。

じゃあ俺もこれで、また明日な!」



そんな俺に大石は慌てたように礼を言うと、玄関から出て行く。



「あっ!大石っ・・・」



呼び止めた俺の声は届かなかった。

俺は動くことも出来ずに、大石が出て行った玄関を見つめる。


行ってしまった・・・とうとうプレゼント渡せなかったな・・・

って・・ちょっと待って・・・ひょっとして・・・今の大石・・

俺からのプレゼント・・ケーキだと思ってんの?
















違うのに・・・ちゃんと用意してあるのに・・・


俺は一人リビングで、片付けをしながらソファの横に置いていた大石に渡すはずのプレゼントを見た。


あの時に妬いてないで、ちゃんと渡せばよかった。

ホントに俺・・・なにやってんだろ・・・

みんなで大石を祝えた事は良かったけど・・・これじゃあ・・・

これじゃあ・・・・


目頭が熱くなる。


好きなのに・・・大好きなのに・・・

ホントはおめでとうって言ってプレゼント渡したかったのに。


俺って奴は・・・ったく・・・

なんの為の誕生日会だよ!

なんの為に前から計画してたんだよ!


俺は目に溜まった涙を手の甲で拭くと、渡しそびれたプレゼントを持って立ち上がった。

そしてキッチンに向かって大きな声で叫ぶ。



「母ちゃんゴメン!ちょっと出てくる!」

「英二!片付けは?」

「後で、帰ってからするから!」



俺は母ちゃんの返事を聞かないまま、玄関に向かって走った。



大石・・・今から行くから・・・俺のプレゼント受け取ってよ。


俺はスニーカーを履いて、勢いよく玄関を開けた。



「「あっ!」」



声が重なる。


まさかこんなに早く会えるなんて・・・・


玄関から1歩出たとこで、目の中に飛び込んできたのは、今まさにインターフォンを押そうとしている大石だった。

俺は大石に近づきながら声をかける。



「ななななんで!?なんで大石がいるの?」

「えっ?あぁ・・・さっき別れてから途中まで帰ったんだけど・・・

帰り際の英二の様子が、元気がなかったように見えて・・・

それに誕生日祝ってもらってる時も、英二がせっかく企画して開いてくれたのに

席が離れてたからそんなに話せなかったし・・・だから・・その・・」

「大石・・・」

「あっでも、英二今から何処かに出かけるんだよな?

ごめん。用事の邪魔して、俺も帰るよ」



大石は俺の返事を聞かないまま、背中を向ける。

俺は急いで大石の腕を掴んだ。



「ちょ!ちょっと待ってよ!大石!」

「えっ?英二?」



驚いた大石が、振り向いて掴んだ俺の腕を見る。


何早とちりしてんだよ・・・

せっかく会えたのに、帰んないでよ。



「違う。用事っていうか・・・今から大石の所へ行こうとしてたんだ」

「俺の所?」



大石は体を俺の方へと向けると、俺を見下ろす。



「そうだよ。さっきプレゼント渡しそびれたから・・それを渡しに行こうと思ったんだよ」

「プレゼントって・・・あの手作りケーキじゃなかったのか?」



大石が驚いて、目を大きくする。


そんな訳ないじゃん・・・

俺が大石の為に何も用意してない筈ないだろ。



「違うよ。あれは誕生日会の為のケーキ。プレゼントの訳ないじゃん」

「ホントに・・・?」



大石は言葉が続かないのか、そのまま黙ってしまった。


ホントのホントだよ!


俺はそんな大石の目の前にプレゼントを差し出してやった。



「はい!」

「えっ?」

「だから・・プレゼント!これが正真正銘のプレゼントだかんな」

「英二・・・」



大石は受け取ると、はにかんだ笑顔を俺に見せえくれた。



「ありがとう。大事にするよ」



俺はそんな大石の笑顔が嬉しくて、背中を叩いた。



「送ってやるよ」

「えっ?いいよ。一人で帰れるから」

「そんな事言わずにさ、今日は特別な日なんだから。遠慮するなよ」

「でも・・・英二」

「デモもヘチマもないの。行くぞ大石」

「ちょっと待ってくれよ英二」



先に歩き出した、俺の横を大石が歩く。

俺は並んだ大石の顔を覗き込むように聞いた。



「そのプレゼントなんだと思う?」

「ん〜?何だろ?ヒントとかはないのか?」

「そうだな。使えるもの!」

「使えるものね〜?タオルとか?」



タオル?

それって去年大石がタカさんにプレゼントしてたものじゃんか・・・


俺は去年のタカさんと俺の合同誕生日会を思い出してふき出した。



「まさか!大石じゃあるまし」



ケラケラ笑うと、大石が恨めしそうに俺を見る。



「酷いな・・そんな言い方はないだろ?英二・・・」



俺は暫く笑って、大石を改めて見た。



「ごめん。ごめん。で、他はなんか思いつかないの?」

「散々笑っておいて・・・何も思いつかないよ。だから降参・・一体何なんだ?」



大石は溜息をついて、苦笑した。



「答えはね。ブックカバー。ちょっとおしゃれなの見つけたんだ」

「へ〜ブックカバーかぁ。帰ったら早速使わせてもらうよ」



大石は感心したように驚くと、プレゼントを眺める。

俺は笑顔で頷いた。



「うんうん。これで恥ずかしい本もカバー出来るだろ?」

「えっ?恥ずかしいって・・・」



大石が少し動揺しながら、俺に目を落とす。

俺はすかさず、大石の鞄を指差した。



「いつも読んでんじゃん!」



大石は俺の指差した方を目で追うと、ガックリ肩を落した。



「英二・・・誤解を招くような言い方やめろよ。

あれは恋愛小説で・・・別に、恥ずかしい本じゃないんだからな」



そして赤い顔をして俺を睨む。

俺はそんな大石を見てまた笑った。



好きだよ大石・・・

大好き・・・

このままこんな風にずっと笑いあえたらいいって・・・

側にいれたらいいって・・・思ってる。

口に出しては言えないけど・・・・・・・・・・・・・・口に・・・?


あっ・・・・!!

そうだ・・・・・!!!

まだちゃんと言ってないじゃん。

去年は口に出して言えなかった言葉。

これなら胸を張って言える。



「大石っ!」



俺は立ち止って、大石を見つめた。

大石は二歩ほど歩いて、俺を振り返る。


「どうした英二?」

「大石。誕生日おめでとう!!」



満面の笑顔を大石に送る。



「えっ?あ・・・ありがとう・・・」



大石は一瞬時間が止まったように動きを止めたかと思うと、赤い顔をして微笑んだ。

俺はそんな大石の側に駆け寄ると、また横に並んで歩く。



大石・・きっと俺の気持ちは変わらない・・・

お前を好きだって想い。

一緒にいたいって想い。

言葉に出しては言えない想い・・・


だけどこれだけは・・・来年もきっと言えるよな。


誕生日おめでとう


大石の隣で・・・笑いながら・・・・





                                                                   END





大石お誕生日おめでとうvvv


今年ここで祝うのも3回目ですか・・・時の流れは早いですね・・・

ですが彼は永遠の15歳・・・羨ましい限りです☆

私なんて・・・(笑)

兎に角、そんな彼を今年も無事祝えて良かったですvv

また来年も変わらず祝えたらいいなvv

2009.4.30