Happy Birthday Dear Oishi 2





来年こそは・・・来年こそは・・・絶対にアイツの誕生日を祝うんだ。


ずっと思い続けてた俺の想い。

それを叶える為に、自分の誕生日を祝ってもらうように仕掛けて、ずっと準備をしていた。

アイツを祝う時に、不自然にならないように・・・みんなで祝えるように・・

そしてとうとうこの日が来たんだ。



俺は自分のロッカーの前に着くと、隣の大石に気づかれないように深呼吸した。


よし・・・行くぞ・・・・



「大石の誕生日もうすぐだね!」



部室に響き渡るぐらいの大きな声で大石に話しかける。


この一言を言う為に、どれだけ時間がかかったか・・・・



「えっ?あぁ・・うん」



やっとここまで来たんだ。

今年は絶対に祝ってやるかんな。


急に話をふられた大石は、戸惑いながらも小さく頷いた。

俺はそんな大石にニシシと笑顔を向ける。

するとそれに気付いた新入生の桃が話しに食いついてきた。



「へ〜大石先輩って、もうすぐ誕生なんスか?」



大きな声で、大石の方へ体を向ける。


よしよし・・・ナイス桃!

思ってた通り食いついてきたな・・・


大石は桃の方へ顔を向けて答えた。



「あぁ。4月30日なんだ」

「あと4日じゃないスか!」



桃の大きな声に反応した他の部員達も、振り向いて大石に注目している。


いいぞ!いいぞ!



「あぁ。そうなるな」

「おめでとうございます!」

「いや・・・まだ四日あるから・・・」



うん。うん。この流れ・・・バッチシじゃん!



「じゃあまたその時っスね!」

「えっ?いや・・・うん。ありがとう桃」



照れた大石が頭をかいている。


よしっ!言うなら今だよな・・・


俺は大袈裟に咳払いをして、2人の間に割って入った。



「じゃあさ!じゃあさ!大石の誕生日会やろうよ!」



2人に笑顔を向ける。

大石は「え?」と驚いていたが、桃は手を叩いて喜んだ。



「あっ!それいいっスね!」

「いいっスねって・・桃・・」

「なぁ!みんなもいいだろ?」

「ちょっ・・英二!」



戸惑う大石を尻目に俺は着替えてる、みんなに向かって言う。

部室に残っているメンバーは、いつものメンバーに1年生の桃。


気心がしれた奴ばかりだ。



「いいんじゃない。僕の時も、英二とタカさんの時もやったんだし・・・

順番って事だよね」



俺の問いかけに不二が1番最初に乗ってくれた。

2年になっても同じクラスの不二。

腐れ縁もここまでくると、親友だよなってつくづく思う。

俺の言いたい事を、足りない言葉を何も言わなくても、ちゃんと理解してくてんだよな。



「そうだね。俺ももちろん参加するよ」

「俺も参加するぞ菊丸。またいいデータが取れそうだ」



不二に続いて、タカさんも乾も返事をくれた。


不二の順番にって言葉が効いたのか・・・

いやタカさんは優しいから、きっと話しに乗ってくれたと思うけど・・・

乾は・・・またデータって・・・まぁそれでもいいや。

あとは・・・


俺は一人話しに乗らない、手塚を見た。



「手塚は?」



本音を言えば・・・大石と仲がいい手塚をあまり誘いたくはないけど・・・

コイツだけ誘わないって訳にもいかないし・・・


少し複雑な気分で誘うと、ゆっくり振り向いた手塚が答えた。



「俺も参加させてもらう」



そう・・・やっぱり・・・来るんだ・・・


チェッと心の中で舌打ちしつつ、俺は気持ちを切り替えた。


まぁ仕方ない。

今回はいつも祝ってばっかりのアイツを・・大石を祝うっていうのがメインだかんな。



「で、菊丸。場所は何処でするんだ?」

「へ?」



胸の辺りで、グッと握りこぶしを作る俺に乾が聞いてきた。



「あぁ・・俺んち!」



俺は慌てて返事した。

ずっと温めてきた計画なんだ、ボヤっとしてる暇なんてなかったんだよな。

俺は大石に顔を向けて、肩を叩いた。



「大石!そういう事だからさ、楽しみにしててよ」



大石は申し訳なさそうな顔をしながら、でも何処か嬉しそうに俺を見る。



「祝ってくれるのは嬉しいけど、ホントにいいのか?ほらお家の人とか・・・」

「大丈夫だって!その日はもう手を打ってんだ」

「えっ?」

「あぁぁ・・うん。なんでもない!兎に角大石は、来てくれたらいいんだよ」

「そうか・・わかった。ありがとう」



大石が鼻の頭をかく。

俺はそれを見ながら、当日の誕生日会へ想いを馳せた。


やっと・・・やっとだ・・・やっとちゃんと祝える。


そんな時に、部室のドアが開いて海堂が入って来た。

みんなの視線が海堂に集まる。



「な・・・なんスか?」



驚いた海堂は目を泳がせて、固まった。

俺はそんな海堂に1歩近づくと声をかけた。



「海堂も参加ね!」



ずっと、ずっと温めてきた俺の作戦

自分の誕生日から始まって、大石の誕生日を開くまで半年かかったけど・・・

やっとこれで成功した。
















筈だったのに・・・・・

誕生日当日

部活が終わった流れで、みんなで俺の家に来た。

家のみんなには、今日は大石を祝う為に2時間だけリビングを貸してくれって頼んでおいたから、静かなものだ。



「さぁ、みんな遠慮なくあがってねん!」



みんなをリビングに案内して、俺はキッチンへと入った。

前の日に用意しておいたお菓子やジュースをトレーに並べてると、大石が顔を出す。



「何か手伝う事はないか?」

「え?何言ってんの?大石は主役だろ?ちゃんと座ってろよ。こっちは大丈夫だからさ」

「そうか・・・でも・・・」

「じゃあ悪いけど、不二呼んで。不二に手伝ってもらうからさ」



俺がそういうと、大石の後ろから不二が顔を出した。



「僕ならここにいるけど」

「不二・・いつのまに」



大石は驚きながら、振り向いてる。



「不二悪いけど、これ持っててくれる?」

「いいよ」



不二は大石の横をすり抜けて、俺の横に来る。



「って事だから、大石はみんなと座っててよ」

「あぁ・・わかった」



大石は少し複雑な顔をして、リビングへと消えて行った。








よし・・あとはケーキを運ぶだけ・・・


昨日大石の為に作ったケーキ

崩れないようにそっと運んで、いざ自分が座ろうと思って、思わず立ち止ってしまった。


あっ・・・!俺の座る場所が無い・・・・



「うわっ!これひょっとして手作りですか!」



ケーキをテーブルに下ろすと、桃が声をあげる。



「まっ・・まあな」

「スゲー英二先輩。こんなの作れんだ」



桃がケーキを見ながら、しきりに感心している。

それに釣られるように、みんな口々に褒めてくれた。

けど・・・俺はそんな事より、みんなの座ってる場所が気になって仕方が無い。


大石にみんなに先に座っててと言ったのは俺だけど・・・

予定では大石の隣に座るつもりだったのに・・・

隣に座りたかったのに・・・


大石の左側には海堂、右には手塚その横には不二

海堂の前には乾、その横にはタカさん、そして桃が座っていた。


これじゃあ無理だな・・

今更変わってもらうのも、不自然だし・・・仕方ないか・・・・


俺は奥歯を噛締めた。


大石を祝えれば・・・いいじゃないか。


仕方なく不二の前に座った俺は、みんなに向けて声をかけた。



「んじゃ、まずは歌、歌ってケーキカットだな」



今日は盛り上げ役に徹して・・・とことん大石を祝うんだ。


みんなで大合唱して、照れる大石がローソクを吹き消す。

その後、みんなで大石にプレゼントを渡した。

1人ずつ受け取って言葉を交わして、大石が礼を言っている。

俺はそんな姿をジッと見てた。


良かったな大石・・・・

そう思うのに、なんだか切なくてやるせなくなる。

俺以外の誰かに大石が祝ってもらってるのを、笑顔を見せてるのを見てると・・・

胸が締め付けられる。


大石・・・俺・・・


俺は自分のプレゼントを渡す順番が来る前に、立ち上がってキッチンへと向かった。







去年の誕生日の日に1年生の話を書いて・・・


来年は2年生・・・?それとも・・・?

って書いてるのを見て、今回は2年生の話にしました(笑)

それにしても・・・それとも・・・?は何を書こうとしていたのか・・・

1年経った今は自分の事ですが・・・謎です☆

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