Candy Days






「不二〜〜〜。 俺・・・充電切れちった」


「英二・・・」


不二は困った顔で俺を見て、よしよしって頭を撫でてくれたけど・・・

やっぱ駄目。

不二に散々話を聞いて貰っておいて、こんな事思うのは凄くいけない事なのかも知れないけど・・・

やっぱ大石じゃなきゃ・・・俺の元気は回復しない。

事の発端は手塚が生徒会長になった事だった。

そのお陰で大石の仕事がまた増えた、生徒会実行委員補佐。

『補佐ってなんなんだよ?』

って思わず聞いたけど、結局の所また手塚の補佐って事だ。

ホント手塚の奴・・・

自分一人で出来ないなら、生徒会長なんて引き受けんなよな・・・

まったく・・・

まぁそんな感じで、最近の大石は、委員会の仕事やら、副部長の仕事やら、送別会や歓迎会や決め事がたくさんあるみたいで、クラブにも殆んど出れない状態だ。

大石の性格上、頼まれた事はちゃんとやらなきゃ気がすまないって事はわかってんだけどな・・・

クラブに出てこないとなると、クラスの違う俺達は殆んど顔を会わさない。

だから最初のうちはこっちから大石に会いに行ってやるかって、休み時間に教室に会いに行ってたんだけど、忙しくしているか、教室にもいてないか・・・

とにかくバタバタしていて、体から忙しい〜〜ってオーラが出てる。

ここまで忙しくしていると流石の俺も、なんだかワガママ言えなくて、会えないのをジッと我慢していた。

そして、そうこうしてるうちに4日が経ってしまったってわけだ・・・

まぁ正確に言えば、顔は見てるんだけど・・・

見るだけで会話らしい会話はしていない。

こんな状態がいつまでも続くわけが無くて・・・とうとう限界にきていた。


早く大石に会いたい!!

英二って呼んで貰いたい!!

大石に構って貰いたい!!


この気持ちをどうしたらいいのかわからなくて、不二に泣きついていた。


「英二。三月いっぱいの話だから・・・もう少しの我慢だよ」

「まだ半分あるじゃんか」

「あと半分だよ。ねっ」


ねっ・・・て微笑まれても・・・

四月まで二週間以上あるのに、あと半分って気にはなれない。

まぁ俺が『充電切れちった』って不二に言ったから、励ましてくれてるんだけど・・・

そんな事を思いながら机にうな垂れていると、隣の子が不意に大石の名を口にした。


「ねぇ聞いた?大石君の話」


なんだ?大石の話って・・・


「聞いた。聞いた。結構その話広まってるよね?」


なんの話が広まってるって?

俺は耳を澄ませ、隣の子の会話に集中する。


もしかして・・・俺達の事かな?


そう思うとドキドキしてきたけど・・・そんな訳ないよな・・・・

俺達が付き合ってるって事は一部の親しい仲間しかしらないし・・・

何より俺の事が絡んでるなら、俺の横でそんな話をするわけ無い。

そう思うといてもたってもいられなくて、ガバッと体を起こして隣の席の子に話しかける。


「ねぇ!大石のなんの話が広まってんの?俺にも教えてよ」

「わっ!菊ちゃん・・・ビックリした」

「ごめん。ごめん。驚かしちゃったね。・・・で大石の何の話が広まってんの?」


急に話しかけて、ビックリしてる隣の子にとびっきりの笑顔で話の催促をする。

女の子達は、『どうする?話していいのかな?』って二人で相談してたけど、

そこへ不二が後押しするように、


「大石の事なら話てもいいんじゃない? 僕もぜひ聞きたいな?大石の話」


って言った後、ニコッて女の子達に微笑みかける。


女の子達は不二の言葉に『そうよね。大丈夫よね』って納得したみたいだ。

さすが不二!!

こうゆう時、不二が味方にいると心強い。


「で・・なになに?」


俺はもう一度、女の子達に話を促す。

女の子達は俺達の方にイスを寄せて、少し顔を近づけて声のトーンを落とした。


「それがね・・・見た子がいるらしいの・・・」

「何を?」


大石の一体何を見たって言うんだろう?


「大石君がバレンタインデーのお返しを買い込んでる所」


へ〜大石がバレンタインのお返しをねぇ〜


「な〜んだ!!」


って言いながら思わず、口を塞いだ。


シマッタ・・・


「えっ?菊ちゃん知ってるの?大石君が誰にお返しするのか?」

「イヤ・・その・・知らない!知らない!全然っ知らない!!」

「何だか怪しいな〜?そういえば菊ちゃん大石君と凄く仲いいもんね・・・

ホントは誰に返すか知ってるんじゃないの?」

「マジ知らないって!!」


俺は顔を左右にブンブン振りながら、必死で知らないって否定してるのに、俺の横で不二が笑いを堪えてる・・・


不二の奴・・・人事だと思って・・・


俺が女の子達に気付かれないように、不二のわき腹を肘でつつくと不二はごめんごめんって俺だけにわかるようにして、女の子達に話しかけた。


「それより、今の話で1つだけ気になる所があるんだけど?」

「気になる所?」


女の子達は俺への追求はやめて、不二の方へ体を向けた。


「うん。今の話だと大石が買ったお返しって1個じゃないんだよね?」


えっそうなの?って思って不二を見ると、不二に指摘された女の子が、『そうなのよ〜』って言いながら身を乗り出した。


「女子の間でも、そこが一番謎なのよね〜」

「そうそう。大石君ってバレンタインの時に10個以上は貰ってる筈なのに、その時買ってたのが、5,6個らしいのよ」


えっ!!! 5,6個?

俺がパクパクと言葉にならない言葉を発していると、女の子達はどんどん話を進めていく。


「それでね。去年誰にもお返しをしなかった大石君が、今日どうゆう基準で誰に返すのか?って話題になってるのよ」

「へ〜〜そうなんだ」



返事が出来ずにいる俺の代わりに、不二が相槌をうつ。


何だよ・・・5,6個って・・・

まさか律儀に貰った奴全員に返す・・・とかじゃないよな?

今それだと足りないって言ってたもんな・・・・

じゃあ一体誰に返すつもりなんだ?

俺にだけくれるんじゃないのかよ・・・

大石・・・お前・・・何考えてるんだ?

あっ・・・そっか・・・俺に返すつもりなら何か言ってきてもいいのに・・・

何も言ってこないって事は・・・やっぱ俺にじゃないのかな?


頭の中でグルグル色んな事を考え始めて、他の事は耳に入ってこない、気が付けば大石の話は終わっていて、女の子達もいなくなっていた。


大石と会えない事ばかり考えてて忘れてた・・・


今日はホワイトデーだったんだ。






ほのぼのした感じにしたいなぁ〜と思いながら書いたはずが・・・・


何故かまたやきもち英二に・・・・

やきもち妬かずに・・・進む予定だったんだけどなぁ・・・・

まぁ次書くときは妬かない英二を目指してみます☆

なので今回は・・・やきもち英二で・・・

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