昼休みに入っても俺のテンションは上がる事無く、ダラダラ・・・ウダウダしていた。
充電が切れてる上に、あんな話聞いたから仕方ないんだけどさ・・・
あまりにも暗くなってる俺を見て『英二が暗いとクラスに迷惑がかかるから』っていう訳わかんない理由で、不二に屋上に連れてこられていた。
「不二・・・さっきの話さ〜どお思う?」
「さっきのって大石の話?」
「うん」
「英二にじゃないの?」
「だけど俺。大石に何も聞いてない」
「これから何か言ってくるかも知れないじゃない」
「もうお昼になっちゃったけど・・・」
「でも、まだ今日は終わってないよね」
「うっ・・・だけど今日だって絶対忙しくしてるんだよアイツ」
不二は小さくため息をついて、俺を見る。
俺の愚痴にずっと付き合ってくれてる不二には、ホントに申し訳ないなぁ〜
と思うんだけど・・・一度口から出始めたら中々止めらんない。
気持ちもどんどんマイナス思考になっていく。
「大体さ〜大石は八方美人なんだよな。誰にでもいい顔しすぎなんだよ!!
だからどんどん仕事も増えて、クラブにも顔出せなくて、俺とも会えなくなるんだよ
ホントさ、アイツが何考えてんのか、俺。全然わかんない!!」
言い終わって不二を見ると、何故か俺の頭の上の方に目線があるのに気付いた。
『何見てんのかな?』って気になって振り向くと、そこには大石が立っていた。
「うわっ!!大石」
黙ったまま立っていた大石に驚いてると、不機嫌な顔の大石がようやく口を開く。
「ホント英二には悪いなって思ってるよ。だけど全然わかんないっていうのは酷いんじゃないか?俺だってこれでも一生懸命時間を作るように努力はしてるんだよ」
上から見下ろすように言われて、なんだか気持ちが押される。
「おっ大石・・・いつから居たの?」
「大体さ〜って英二が言ってるところぐらいから」
「何だよ!じゃあ声ぐらいかけろよ」
「不二は気付いてたよ」
「不二っ!」
思わず名前を呼んで、不二の方を見ると、不二は大袈裟にため息をついて見せて 俺達を見据えた。
「ハァ〜〜。夫婦喧嘩は犬も食わないって言うけどね・・・
君達も、もう少しどうにかならないの? 英二!」
「はい!」
開眼した不二に呼ばれて思わず返事をしてしまった。
「もう少しやきもち妬くの控えた方がいいんじゃない?
それに大石も毎回英二に愚痴を聞かされる僕の事を少しは考えてよね」
「あっああ。わかった」
大石も開眼した不二には何も言い返せないみたいだ。
「じゃあ僕は先に教室に戻るけど、英二は機嫌を直してから教室に戻って来てよね」
そう言って不二は手をヒラヒラさせながら、屋上を出て行った。
シーン・・・
二人っきりになって、沈黙が重い。
どうしようか?って思った時に大石が俺の横にあぐらを掻いて座ってきた。
「英二・・・そんなに機嫌悪かったのか?」
さっきまで不機嫌な顔をしていた大石が、今は心配そうな顔をしている。
不二に言われた事、気にしてんのかな?
俺は仕方なく、不機嫌な理由を話した。
「まぁ・・・その・・・だって4日もまともに大石と話してなかったし・・それに・・」
「それに?」
「昨日大石がバレンタインのお返しを買い込んでるのを見たって子がいてさ・・・それで・・」
「それで、機嫌が悪かったのか?」
「うん」
大石は頭をかきながら、少し顔を染めて照れながら小さな声で
『そっか・・・見られてたのか・・・』って呟いた。
見られてたって事は、やっぱり買い込んでた話は本当なんだ。
じゃあなんで買い込んでたんだ?って聞こうと思ったけど、俺より先に大石が話し始めた。
「英二。それでなんだけど・・・今日部活が終わった後、部室に残っててくれないかな?」
「え?」
「俺は部活には出れないけど、委員会の仕事が終わったら、必ず部室に行くから」
大石に必ず行くって言われて、断るわけが無い。
「わかった。待ってる」
俺の返事に大石が笑顔を見せた。そしてゆっくり立ち上がる。
「じゃあ。俺まだ行くところがあるら、後でな英二」
「うん。また後で・・・」
大石の後ろ姿を見送りながら、自分も笑ってる事に気が付いた。
『必ず行くから』
たった一言なのに・・・
どうしょう・・・笑いがどんどん込み上げて来て抑えらんない。
自然と顔がほころぶ。
お返しを買い込んでた話はまだ気になるけど、俺のテンションは確実に上がった。
部活が終わって部室に一人で残ってた俺は、着替えを済ませた後部室に置かれたベンチに 横になりながら大石を待った。
大石まだかなぁ〜〜〜
なんだか眠くなってきた・・・
フヮァ〜と大きなあくびをして目を瞑る。
少しだけならいいかな? 大石が来るまで少しだけ・・・・
そう思うとどんどん意識が遠のいていった。
シャリ・・・シャリ・・・・トントントントン・・・・シャリ・・・シャリ・・・・
ん〜〜〜一体何の音だ・・・
薄く目を開いて、辺りを見回す。
アレ?ココ何処だっけ?
俺何してんだろ?
ボーとする頭で音がする方に目をやると、大石がノートに何かを記入している。
シャリ・・・シャリ・・・・シャリ・・・シャリ・・・・
そして時より止まって、ノートにペンを打ち付けている。
トントントントン・・・
あ〜大石の奴・・・部誌でも書いてんのかな?
・・・部誌?
シマッタ・・・大石来てんじゃん!
俺はガバッと起き上がって、大石に声をかけた。
「大石ごめん! 俺寝ちゃってた・・・・」
「いいよ。俺の方こそだいぶ待たせただろ?」
大石は書く手を止めて俺を見る。
「ううん。だって俺寝てたし・・・」
「英二は部活で疲れてるからな、もう少し寝てても良かったのに起こしちゃったな」
「いいよ。だって大石が来たら、すぐに起きるつもりだったもん」
俺は大石の横に座りなおして、肘を付きながら大石を見る。
「あともう少しで終わるから」
大石はそう言うと、部誌にペンを走らした。
俺はそんな横顔を見て、なんだかこんなに落ち着いて大石見んの久々だな・・・
なんて考えながら、大石が部誌を書き終わるのを待った。
大石っ・・・
へへへへ・・・
駄目だ・・・顔がほころぶ。
ただ横にいてるだけなのに、まだお返しの事だって引っかかってんのに・・・
大石と一緒にいるってだけで、どんどん満たされていく。
やっぱ俺の充電は大石じゃなきゃ駄目だな。
「よし。終了。英二お待たせ」
大石がパタッと部誌を閉じて立ち上がった。
「へ?もう終わったの?」
大石の顔に見とれてたから、全然時間が経った気がしない・・・
もう少し見てたって構わないのにな・・・
久々の二人の時間がもう終わってしまうような気がして、なんだかちょっと勿体無い。
そう思ってると、ロッカーから何かを取り出して大石が戻ってきた。
「英二。両手を出して」
「えっ?うん」
言われるまま両手を出す。
すると大石は俺の手の上にどんどん包装された箱や袋を置いていく。
「何コレ?」
「バレンタインのお返し。英二みたいに手作りって訳にはいかなくて、買った物なんだけど・・」
「こんなに?」
「うん。優柔不断みたいで嫌なんだけど、どんなのがいいのかわからなくて、とりあえず英二が喜びそうなのを一通り買ってきた」
「そうなんだ」
「でも・・まさか買ってるとこ、見られてるなんてな・・・思わなかったよ」
大石は頭をかきながら照れている。
そうか・・・そうなんだ・・・やっぱり大石は俺の為にお返し買ってくれてたんだ。
それなのに俺・・・大石の事疑って・・・
何考えてんのかわかんないっとか言っちゃって・・・
ホント駄目だよな・・・
「大石ごめん・・・」
「えっ?何で謝るんだ英二?ひょっとして気に入らなかったか?」
大石が慌てて、俺の顔を覗きこむ。
「そうじゃなくて、その・・お返しは凄く嬉しい・・・あんがと。
だけど・・・俺、大石の事疑ってた。クラスの女子が大石がお返し買い込むの見たって
だから俺以外にも返す奴がいんのかなって・・・
勝手に怒って、勝手に拗ねて、勝手にやきもち妬いて、俺・・・・可愛くないよな」
そうだよ、いつもいつも怒って、拗ねて、妬いて・・・
こんなんじゃいつか大石に嫌われる。
「だから・・・ごめん」
俺は大石に貰った、お返しの山をギュっと抱きしめた。
大石は黙ったままで、今どんな顔をしているのかはわからない・・・
だけど静まり返った部室の中は、自分の気持ちと同じ様に張り詰めてる感じがして、
なんだか泣きそうになる。
そんな時、大石の手が俺の頭をポンポンと叩いた。
「英二。俺を見て」
大石に言われて、顔をあげて大石を見つめる。
「大丈夫。英二は可愛いよ。俺が保証する」
優しく微笑まれて、一気に体が熱くなる。
大石って・・・・ やっぱ凄いよ。
普段は照れて可愛いとか絶対に言わないくせにさ、こんな時にサラッと言うんだ。
そんでたった一言で、俺をこんなに浮上させて、幸せな気持ちにしてくれる。
「大石っ!」
俺は大石の制服の裾を引っ張って、大石を前屈みにさせた。
そして近づいて来た唇にキスをする。
大石は真っ赤な顔して
「英二。ここは部室だぞ」
ってアタフタしている。
俺はそんな大石を見ながらニャハハって笑って、今日一番の笑顔で笑いかけた。
大石大好き・・・・・充電完了!
あまりホワイトデーという感じがしないんですが・・・・一応ホワイトデーのお話という事で☆
2007.3.14