□□□□□□  カブツー(スーパーカブ・ツーリング)  □□□□□□


・北海道 (2007/08/08-17) その1


8月8日
出発・出勤の朝 いつもと同じ毎日40キロの通勤に足代わりになっているスーパーカブ。
しかし今朝の出勤のカブの前カゴにはシュラフ、いつもは昼の弁当やお茶が入ったバッグを入れる緑色のコンテナボックスには4日分の着替えと予備ガソリンの5リットル携行缶、ボックスの上にはロールマットとカメラ用三脚が縛り付けてある。 シートには以前のオフロードバイクで使っていた振り分けバックにカッパや防寒用具、工具や空気入れ、スペアの部品を詰め込み無理矢理くくり付けている。
奥さんに 『 行ってきます 』 と会社に向かう自分自身も、カメラや交換レンズの入った大きなウエストバックを腹巻きのように巻き付けていつもとは違う格好。
午前6時半にそんな格好で自宅を出発し、一先ず出勤。 いつもより20キロ近く重くなった非力なスーパーカブは更に加速は鈍くなり動きは緩慢。 確かに80キロの車体に100キロ以上になる人と積み荷が有るのだから仕方ない。自分が1番重いのは確かだけども・・・

会社を出発 15時半、フレックス勤務を活用させていただき職場を脱出。 早めに会社を出て旅に出るのは何年振りだろう? 仕事を終えてから舞鶴港や敦賀港に直行は何十回もあるが、一般道を走って3時間半も有れば充分なことは分かっているので車や以前乗っていた中型バイクなら定時の17時の出発で充分間に合う。 だけど今回は弱冠85ccのスーパーカブ。 ちょうど10年前にもコイツで行ったことはあるが、その時は自宅を昼12時に出発して余裕のあるスケジュール。 何せ酷暑の中を、大渋滞の中央環状線の車に揉まれて豊中、池田から山越えで綾部市までがなかなかハードである。 途中のアクシデントを思えば明るい間に人家や外灯の無い地域を通過しておきたい。舞鶴港迄は約125キロ。 平均30キロでは4時間程で15時半に出発すれば19時半に着く計算。

案の定、会社を出て直後の中央環状線は大渋滞。 最寄りのガソリンスタンドで予備を含めて満タンにして走り出す。計算では予備を使うこと無く舞鶴までは持つ筈である。 歩く程の車の流れをバイクのメリットですり抜けさせていただき、豊中には16時通過。池田も順調に抜けて一庫ダムまで来ればマイペースで走れる。
国道173号線を50〜60キロペースで快適に走る。 峠の上り坂になると30キロ台に落ちて3速しか無い変速機なのに2速を使わざるを得ない状況になる。 2速と3速でギクシャクしながら、なだめすかして登坂車線をノロノロと上る。 タイヤと2次側で10%程ハイギヤードにしているので上り坂が苦手ではあるが、通勤や北海道で燃費向上と60キロ巡航を実現するには必須なので諦めるしかない。 綾部市には18時前に通過。 休憩無しではあるけどもかなり順調に走って来れた。 ここまで来れば舞鶴港迄はそれほど急な上り坂も無く、一時間も有れば着ける。

東舞鶴港到着 東舞鶴駅近くのショッピングセンターで夕食と船内での食料を買い出ししてフェリーターミナルに着いたのは19時。 予想以上に早く着いたが、乗船の23時迄の時間潰しがちょっと辛い。 奥さんに無事舞鶴に到着した連絡を入れて、さっき買ってきた夕食の弁当と缶ビール2本を空けて待合室のテレビを見入る。 しばらく経ってカブを乗船待ち駐車に移動する。 10番目位か、やはり0時過ぎの出港の船にしては早過ぎる。 奈良から来たハーレー乗りと会話で時間を潰す。 21時あたりになると次第にバイクや家族連れのマイカーが増え出した。 大型二輪免許の取得簡略化と共に異常に増えた大型バイクではあるが、フェリーの待ちを見ているだけで明らかだ。 ハーレーだけでも3割位、BMも1割位か? 大型バイクしかラインナップに無いハーレーダビットソンとBMWが日本に対して圧力を掛けたのが実を結んだようだ。 聞き耳を立てていると美唄市でハーレーの集会が有るとかで全国から集まってくるらしい。 そう言えば去年の10月の北海道行きの際にも同じイベントに参加する集団に出くわした。 トレーラーの出し入れのトラクターのディーゼルの排気ガスに巻かれて待つこと1時間、乗船となりカブをフェリーに入れる。 バイクから降ろした荷物やヘルメットを置くためにブルーシートまで床に敷いてくれる親切さ。 7年前には無かった気がするが、網棚が無くなったからと言う話しを後から聞いた。 ハイシーズン、原油価格上昇に伴う運賃変動と往復割引無しからすればこのくらいのサービスはほとんど経費不要なので当然? と言う気持ちにもなる。 今回、カブと2等船室往復合わせて4万円。 10年前は車で往復5万円もしなかったのに。

いきなり夜更かし 必要最小限の荷物を持って客室に入り真っ先に風呂に向かう。
ライダーの乗船が車や人より早い唯一のメリットが風呂に一番乗りに入れる事だ。 2等船室で場所の確保をしたあと、真っ先に行けば結構立派なガラガラの大浴場? にあり付ける。 一般客で混む前にひとっ風呂浴びて汗を流して缶ビール片手に5階の廊下で寛いでいると、乗船前に話しをしていた奈良のハーレーの人にデッキで飲み会するからと連行される。 10人くらいが椅子を並べての飲み会。 香川県からのハーレー軍団の2組の夫婦連れと奈良のW650営業マン。 何と偶然同じ中学校のドカティ400のお姉さん。 一升パックの焼酎やら牛乳、第3のビールで延々宴は続く。 見ず知らずの人達とあっと言う間に飲み会や北海道談義に浸れるのも長距離フェリーならではの楽しみである。 ふと時計を見れば3時過ぎ。 こんなに遅くまで起きているのは初めて北海道に渡った時以来かも知れない。 そのうち、日の出を見ようと言うことになって4時半までウダウダ飲み続けて雲の切れ間に覗く細目の太陽を拝んでやっと就寝。 初日から24時間殆んど寝ずのペースに、この先ハードな予感。


8月9日
10時頃に目を覚まして、焼きそばとビールでブランチ。 船内での貧乏食生活にはビールに良く合う焼きそばは欠かせない。 船室で隣り合わせたチャリダーは鳥取から来た大学生でクラブの合宿で24日の富良野集合まであちこち走り回るらしい。 初めての北海道だそうで、上陸したらひとまず時計回りに走るそうである。 自転車で北海道を走るチャリダーも最近あまり見掛けなくなったもんだ。
デッキでハーレー軍団と情報交換したり、飲み食いうたた寝を繰り返すうちに小樽の街の灯が見えて来た。 船内でテレビを見る限り天気は良く無さそうで、特にこれから向かおうかと予定している宗谷方面が良くないらしい。 軍団は小樽で泊まったあとは雨を避けて高速で道東に走るスケジュールを組んでいる。 W650営業マンは埠頭の公園でキャンプ。 ドカティお姉さんは姉が札幌に住んでるとかで上陸即札幌に。 自分はフェリーターミナルの裏の雨露凌げる場所で仮眠のあと3時には北に向けて出発の予定。
今回は11年振りの礼文島に渡ることと、あちこち走り回らず土地勘のある地域でのんびりと連泊で日頃の疲れを癒す湯治の様な旅がおおよその予定であるが、予約も何もしていないので着の身着のままはいつも通り。

下船準備の放送が鳴り、一番最後のライダーが荷物を 抱えて車両甲板に降りる。 小樽港入港 いつものように排気ガスが充満。 以前、30時間掛けて北上していた船なら早朝4時に到着で30分後には国道5号線を走っていたが、高速船になって21時に着こうものならその日は動けない。 地元であれば夜中走る事も考えるが、北海道の夜道を走るのは歩行者や対向車以外に、虫や野生動物の痛い目に合うのは必至である。 車なら仮眠を取りながらでも走れるが、ましてやスーパーカブ。 無理は禁物。 天気も下り坂らしい。 カブに荷物を積み込み写真を撮ろうてカメラを出すと、シャッター押しましょうと短髪の年上の方がカブと並んだ自分を撮ってくれた。
いよいよ下船。 小樽市内のビジネスホテルに泊まる者、走る者色々居るが、自分はフェリーターミナル裏で野宿することにしていた。翌日11時前の稚内港発、礼文行きのフェリーに乗るには3時頃には出発したい。 距離にして約330キロも有るので平均時速50キロでも7時間近くは掛かる。 下船して夕食を取れば遅くなるだろうし、宿舎に泊まるには経済的にも時間的にも惜しいので野宿が手っ取り早い。
フェリーのスロープを下ってフェリーターミナルの駐車場にカブを停めると先程のシャッターを押してくれた男性が居た。 ライムグリーンのカワサキのバイク。 話し掛けるとその人も同じ考えで野宿らしい。 一緒に小樽市内に夕食を食べに行くことにしてバイクを置いて20分程の歩きになる。 5分も歩けば汗だく。この時期の北海道にしては異常な蒸し暑さ。殆んど本州の梅雨に近い状況で、ジャケットを腰に括りつけてTシャツでも充分だった。

結局、市内の殆どが既に閉店時間。 ターミナル裏で野宿 観光地で夕食付きのツアーでは夜遅くまで店を開けていてもお客さんは来ないためだろう。 仕方なく二人共コンビニで弁当と缶ビールを買ってフェリーターミナルに戻った。 コンビニもターミナルのすぐ横に有ったローソンを重宝していたのに今シーズンから無くなって不便この上ない。 結局往復1時間程の散歩。 夜だと言うのに北海道とはとても思えない暑さで汗びっしょりになった。 ターミナルの中はエアコンが効いているので比較的過ごし易い。 カワサキ乗りの男性は自分とそう遠くない大阪の西淀川区に住む57歳の方で孫も居らっしゃるとかで驚いた。 息子さんが以前乗っていたバイクを改造して乗っているのだけど、ベースが何だかわからないくらい改造しまくり。 この歳でと言ったら失礼だけど、聞いてみればこれが若さの秘訣とか。 日頃は防衛庁御用達のアンテナのアルミの溶接をしているらしい。 どうりでバイクの足回りがワンオフのパーツなのも頷ける。 23時30分、フェリーターミナルのロビーから追い出されて裏の軒下にマットを敷いてつかの間の睡眠。 しばらくすると天気予報通り小雨が降り出して、時折風で顔に雨が掛かる。 暑さを我慢してウトウトしていると耳元を蚊が飛び回って落ち着いて眠れない。 隣を見ればカワサキ叔父さんが構わずに就寝中。 どうにも辛抱出来ずにマットを丸めて出発することにした。 時刻は2時45分。 このあと雨がひどくなる事も予想されるので、暑くて必要無いであろうジャケットをサイドバックに仕舞い長袖Tシャツの上にカッパを羽織る。 蒸し暑いのでこのくらいがちょうど良い感じ。 カワサキ叔父さんがエンジン音で起きてはと、カブをフェリーターミナルの前まで押してそっと掛ける。 さあ7年振りの北海道ツーリングが始まる。

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