● 指揮  中井 章徳 (なかい あきとく) さんにインタビューしました。 

[プロフィール]

 岡山県倉敷市出身。くらしき作陽大学大学院音楽研究科修了。桐朋オーケストラ・アカデミー、イタリア・キジアーナ音楽院で指揮を学ぶ。指揮を志賀保隆、大山平一郎、故岩城宏之、R・シューマッヒャー、D・アジマン、G・ジェルメッティ、チェンバロをD・チェルッティ、声楽を黒岩典枝、森野啓司、蓮井求道の各氏に師事。
 1998年、ポーランドで開催された第21回マスタープレイヤーズ国際音楽コンクールで指揮部門最高位の名誉ディプロマ賞を受賞し、併せて全部門の中から最優秀者に贈られるマスタープレイヤーズ大賞を同時受賞。
 これまでに札幌響、日本フィル、名古屋フィル、京都フィル、大阪フィル、日本センチュリー響、関西フィル、大阪響、大阪市音、岡山フィル、広島響、九州響で客演指揮を務めている。
 現在、出雲芸術アカデミー芸術監督、出雲フィルハーモニー交響楽団音楽監督兼常任指揮者、北九州シティオペラ指揮者


[インタビュー]

Q1. 指揮者になろうと思われたのはおいくつのときですか。きっかけは何ですか。

A1. 小学5年生の時、地元の「くらしきコンサート」が主催するウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会のチケットを頂きました。くらしきコンサートは地元のサポーターの理解と支援により「子どもたちへのチケットプレゼント」制度がありました。初めてのオーケストラ鑑賞でしたが、ステージ上で何十人もの楽員を指揮棒一本で操っている指揮者の姿がとにかく格好良くて見とれてしまったのを覚えています。それから、倉敷音楽祭で朝比奈隆先生のベートーヴェン・チクルスを聴き、指揮者のかっこいい姿を目の当たりにして「僕も将来は指揮者になりたい!」と子どもながらに思ったのを記憶しています。20代はオーケストラ作品の他、宗教曲やバロックダンスを勉強していましたが、30歳になってオペラの分野にも関わるようになり、それ以降毎年イタリアとの往復を続けながらオペラの現場に関わっています。


Q2. 指揮者には体力が必要と思うのですが、体力作りや体調管理のために日頃何がされていますか。

A2. 健康あっての音楽活動ですが、あちこち移動が多く、ホテル暮らしの日々ですから、どうしても外食が多く、食事と睡眠には悩まされています。
 サプリメントを活用して、健康管理に留意しているほか、移動やホテルでの隙間時間を利用して筋トレを行ったり、岩盤浴に行って心身のリラックスと回復に努めたりしています。


Q3. ヴェルディの「リゴレット」についてどのようにお考えですか。
 この作品の音楽の魅力とは
 この作品のメッセージとは

A3. リゴレットの音楽の魅力は、華やかで躍動感に充ちた宮廷舞曲様式が多様されている中に、正反対の性質〜内面的に陰を帯びた非舞曲的・非宮廷的な音楽やレチタティーヴォが見事なバランスでドラマを織り成していている点にあると思います。大部分が宮廷風シンメトリーを持った音楽で書かれている故に、そうではない部分が非常に浮き立って感じられ、この作品のドラマ性を一層強めています。また、全幕を通じて、付点あるいは複付点のリズムが作品を貫いていて、全体に大きなまとまりの力を与えています。
 現実社会やそこに生きる人間には、理想と現実、表面と内面、光と影、相反する性質が常に同時に存在し、矛盾や葛藤、苦悩がつきまといます。「祈る」こと、「呪う」こと、これらは人間を超えたものの存在に対する「願い」としては同じですがその意味は全く異なっています。この作品では、非現実的な時空において「現実的に起こりうるドラマ=人間の本性」を描き、古代ギリシア時代から見つめられてきた「悲劇」を通じて、罪とは何か、罰とは何か、祈りとは何か、という大いなるものへの問いかけを通じて、「人間とは何か」「この世界とは何か」という強烈なメッセージがあると感じています。


Q4. これまでのご経験の中で、印象的な出会い、心に残る思いでなど、何かエピソードをおきかせください。

A4. 指揮、ピアノ、声楽、音楽学、各分野で素晴らしい先生に巡り会い、音楽を通じて人生の師を得られたことが何よりの財産だと感じています。
 異国の文化を学び、体得するのは大変なことです。イタリアのマエストロであり、ミラノ国立ヴェルディ音楽院の教授であるダニエレ・アジマン氏のもとで長年オペラの研鑽を積んできましたが、マエストロは「私たちの伝統音楽を、東洋の日本人が真摯に学び、上演に情熱をかたむけることに最大の敬意を表し、可能な限り全てのものを伝授したい。そして、その音楽をたくさんの人と分かち合い、伝えていって欲しい」というお考えをお持ちで、音楽と技を伝えるためにいつも懸命に向き合ってレッスンしてくださいました。ヨーロッパ音楽の伝統の系譜に触れ、身を置くことが出来たのは本当に幸せなことだと思っています。


Q5. 指揮者冥利とはどんなところにありますか。
 今後の抱負を

A5. 単純に言えばみんなの笑顔が見られた瞬間が指揮者冥利に尽きます。それは、聴衆、出演者はもちろん、裏方スタッフや、支えてくれている家族、関係者、そして作曲家も含めて。作曲家の魂の内側にあり、演奏者のベストを引き出し、聴衆の心の深いところへ響きを伝えることができたとき、伝道師としての役割を果たせたように思います。


Q6. 最後に徳島の感想をおきかせ下さい。

A6. 徳島の「徳」は私の名前「章徳」の一字でもあります。よく「あきのり」と読まれますが、湯桶読みで「あきとく」と読みます。この漢字が使われる都道府県は徳島県だけですし、それを「TOKU」という同じ読み方をする音の響きに、何か深い部分で響き合うものがあるように感じます。実際にはまだ数回しか訪れたことがありませんが、街も人も、表面的な華やかさや派手さではなく、内に秘めた炎の大きさや信念の強さ、誇りのようなものをひしひしと感じます。これが最終的なステージになった時にどのような表現に開花するのか、楽しみでなりません。





● 演出  唐谷 裕子 (からたに ゆうこ) さんにインタビューしました。

[プロフィール]

 帝塚山学院高等学校 音楽コースを卒業。大阪音楽大学音楽学部声楽専攻卒業。同音楽専攻科 声楽専攻[演出]第1期生を修了。
 声楽を林誠・今井しづか、演出を中村敬一・故芦田鉄雄・花田英夫各氏に師事。
 大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウスを始め、多数の劇場にて100公演以上の演出助手として従事。字幕作成にも数多く携わる。2000年演出デビュー。演出作品に「ドン・ジョヴァンニ」「魔笛」「椿姫」「蝶々夫人」「ラ・ボエーム」「愛の妙薬」他、子どものためのオペラ「泣いた赤鬼」「ヘンゼルとグレーテル」等がある。2013年福岡県福岡市市民芸術祭50周年記念オープニング公演「祝宴」、2014年神戸山手学園90周年記念音楽劇の構成・演出(共同制作)に携わり好評を得る。
 京都市立芸術大学・大阪音楽大学・神戸山手女子高等学校(音楽科)非常勤講師、関西歌劇団研修所・名古屋二期会コンセルヴァトーリオ指導員。日本舞踊山村流の名取りでもある。


[インタビュー]

Q1. オペラの演出家を志されたきっかけは何ですか。

A1. 大学在学中はソプラノ歌手を目指し一心不乱に歌の勉強をしておりましたので、オペラを創る過程やその為にどれだけの方々がどんな事をされて創りあげられているのか全く知らずに、ご縁あってこの世界に足を踏み入れました。舞台監督助手や演出部、演出助手と取り組ませて頂いている中で、自分自身ならばこの舞台をどう創りあげるだろうか…と考えるようになり、何となく曖昧な考えからハッキリした考えを持ち始めた頃から演出の仕事を少しずつ頂くようになりました。

Q2. 演出にあたって着想はどのようにして得られるのですか。
 一番大事にしていることは。難しいと感じられることはありますか。

A2. 台本や、原作がある時には原作を読みます。作家や作曲者の生誕の地へ行ったり、書かれている土地に行ってインスピレーションを貰ったりします。
その後、いろんな方が演奏されている音源を聞きます。映像は殆ど見ません。
 最初に感じた印象や感覚を大切にしております。
 頭で思い浮かべた事を、現実的に形に表し伝えていくのが難しいですね。


Q3. 「リゴレット」の演出のコンセプトは。
 今回の演出の一番の見所は

A3. 娘の盲目の恋、父親の無限の愛…。
 終幕の二人の別れが最大の見所です。


Q4. これまでのご経験の中で、印象的な出会い、心に残る思いでなど、何かエピソードをおきかせ
ください。

A4. 演出に興味を持つきっかけとなった、大阪音楽大学ザ・カレッジ・オペラハウスで公演された「金閣寺」(1997年)です。この公演のテクニカルリハーサルで楽譜を持たずに主役の代役をこなした事が、自信に繋がり…今に繋がっています。


Q5. 演出家冥利 とはどんなところにありますか。

A5. 公演中に、出演されている歌手の方が輝きを放ち、舞台がその出演者の後押しをしているのが見れたとき。そして終演後、ご来場くださったお客様が舞台の事を興奮ぎみに話ながら帰路について下さったとき。


Q6. 今後の抱負を

A6. 唐谷が創る舞台は何かある!、出演者がいつも以上に輝きを放つ!、音楽と舞台が融合していて、あっという間に時間が過ぎる!等々、公演を心待ちにして頂けるような舞台を創る事ができる演出家を目指して行きます。
 オペラ徳島のこれからの発展に少しでもお役に立てるように、精進して行きます。


Q7. 最後に徳島の感想をおきかせ下さい。

A7. 今まで恥ずかしながら四国に足を踏み入れたことがなく今回伺わせて頂いて、あまりの近さに驚き、近くでありながら自然豊かで明るく空気の澄んでいる徳島県に心奪われております。
 オペラ徳島の代表である杉尾ご夫妻のお人柄も素晴らしく、激務の中でも私たちの事も色々と気にかけて下さり、地元の合唱の皆様、スタッフの方々も皆様朗らかで、切磋琢磨しておりますが和気藹々と稽古を進めることが出来ております。
 後、数週間ですが更に団結力が高まり、濃厚な公演をご覧いただけると思います。
 皆様のお越しを心からお待ちしております! (11月7日)


 



● リゴレット役  成田 博之 (なりた ひろゆき)さんにインタビューしました。

[プロフィール]

 宮城県出身。国立音楽大学卒業、同大学院修了。文化庁オペラ研修所第10期修了。第8回日本声楽コンクール1位。第69回日本音楽コンクール(歌曲)3位。第5回藤沢オペラコンクール2位。2003年ミトロプーロス国際声楽コンクール(アテネ)最高位。文化庁芸術家在外派遣研修にてイタリア・ボローニャへ渡伊。
 これまでに東京二期会「ラ・ボエーム」マルチェッロ、「ドン・カルロ」ロドリーゴ、「イル・トロヴァトーレ」ルーナ伯爵、「リゴレット」題名役、佐渡裕プロデュース・オペラ「カルメン」エスカミーリォ、新国立劇場「カヴァレリア・ルスティカーナ」アルフィオ、「愛の妙薬」ベルコーレ等多くのオペラに出演。オペラ歌手によるクラシカル・クロスオーバー「ザ・ジェイド」のメンバー。CD「成田博之バリトン・リサイタル2012」をリリース。国立音楽大学、尚美学園大学非常勤講師。二期会会員。


[インタビュー]

Q1. オペラ歌手を志したきっかけは何ですか。

A1. 名テノール マリオ・デル・モナコが亡くなった時、様々な特集番組を見、その姿の格好良さに感動し、歌の世界に向かい始めました。  


Q2. オペラ歌手として、日頃注意していることがありますか。

A2. 日常が普通に過ごせることに気をつけています。身体も、心も健康に普通に保つことは、いつも声を健康に保つことにつながると思うので。  


Q3. 「リゴレット」という作品、もしくは、リゴレットという役について、どうお考えですか。

A3. 音楽と感情表現が素晴らしくバランスの良い作品だと思います。音楽に身を委ねれば、その心情が伝わります。ですから、その音楽を歌う技術を要求されるので、とでも難しい曲でもあります。  

 
Q4. これまでのご経験の中で、印象的な出会い、心に残る思いでなど、何かエピソードをおきかせください。

A4. 最近大活躍している指揮者 バッティストーニと「リゴレット」をした時に着た衣装が、名バリトン レオ・ヌッチが着たばかりの衣装だったこと。また、バッティストーニもヌッチに「リゴレット」を教えてもらったと言っていました。


Q5. 過去に演じた作品、役のなかで、とりわけ好きだったものと今後の抱負を

A5. 近年、「ドン・カルロ」「リゴレット」「イル・トロヴァトーレ」とヴェルディの名作を歌うことができました。バリトンにとっては憧れの3役ですが、まだ歌いたいヴェルディの作品「仮面舞踏会」、「オテロ」などもあるので、是非歌いたいです。 


Q6. 最後に徳島の感想をおきかせ下さい。

A6. 皆さん、とても情熱的な方が多いと思います。美味しいものを食べ、飲み、踊ってらっしゃるからでしょうか。そんな方々が生み出す音楽はきっと素晴らしいのだろうと思います。 

 




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Rigoletto Interview
第19回公演「リゴレット」 インタビュー