● 指揮  奥村 哲也 (おくむら てつや)さんにインタビューしました。 

[プロフィール]

 1982年関西フィル弦楽アンサンブルを14歳で指揮。 1985年日本ギターコンクール高校生の部第2位受賞。 1988年渡英しLondon College of Musicに於いて指揮法・作曲・クラシックギターを師事し、College主催公演等の指揮や、選抜ソリストとしてCollege定期公演にソリストとしてデビュー。 帰国後、ギタリストとしてはソロリサイタルやデュオリサイタル公演、FM放送等で演奏。 オペラ指揮者としては、関西二期会「ティレジアスの乳房」「モンテカルロの女」「ドン・ジョヴァンニ」「秘密の結婚」「ルクリシアの屈辱」、名古屋二期会「ラ・ボエーム」、四国二期会「秘密の結婚(佐川吉男奨励賞受賞)」、日本オペラ連盟「修道女アンジェリカ」「ジャンニ・スキッキ」、兵庫芸術文化センター「藤戸」、関西歌劇団「カルメン・ハイライト」「フィガロの結婚(大阪文化祭賞奨励賞受賞)」、西日本オペラ協会「愛の妙薬」「フィガロの結婚」「カプレーティとモンテッキ」、北九州市シティーオペラ「愛の妙薬」「椿姫」、オペラ徳島「愛の妙薬」、鹿児島オペラ協会「カルメン」「魔笛」、大阪城野外オペラ「千姫」、びわ湖ホール「泣いた赤鬼」、京都芸術劇場「月の影(源氏物語)」、札幌オペラ祭「バスティエンとバスティアンヌ」等、その他多数のオペラプロダクション公演や、音楽大学・芸術大学公演等も指揮。 関西フィルハーモニー管弦楽団、日本センチュリー交響楽団、大阪交響楽団、九州交響楽団、ザ・カレッジオペラハウス管弦楽団、エウフォニカ管弦楽団、京都フィルハーモニー室内合奏団、瀬戸フィルハーモニー交響楽団、オオサカ・シオン・ウインドオーケストラ(旧:大阪市音楽団)をはじめ、多くのオーケストラ、合唱団等との公演や、国内外のソリストとも共演。 現在、京都市立芸術大学、くらしき作陽大学非常勤講師。

[インタビュー]

Q1. ヴェルディの音楽とはどういうものですか。その中での椿姫の位置づけは?

A1. それまでのイタリアオペラ(モンテベルディに始まり、ロッシーニ・ドニゼッティに続き)、多大な影響と変革、そして足跡を残した、偉大な作曲家です。その音楽はオーケストラがベルカントの歌唱と一体となる事で、とても「エネルギッシュ」で「肉厚」になり、オーケストラの役割の変化にもなった。(過去にはイタリア紙幣の肖像画にもなった。日本で言うと、福沢諭吉?聖徳太子??)
 椿姫は、リゴレットやトロヴァトーレに並んで、それぞれの人間とその関わり、その中での心の細かな描写まで描かれ、台本のストーリー性より、ここの人間模様にフォーカスされている所が、今の時代にまで多くのファンを持つ、この作品の力だと思います。


Q2. 指揮をするうえで気をつけている事は?

A2. オペラを振る時も、オケを振る時も、基本的に違いはないのですが、所謂「組体操」の稽古はしたくないと思っています。何度も同じことをやって、成功率を挙げてゆく事には、あまり興味がありません。毎回のプローベで何が起き、どこに問題があり、最終的にどこに行けるか、最後には、舞台上の皆さんが、今回で言えばヴェルディ氏の最高の「通訳」として解放されることだけを考えています。
 「邪念」の無い、真摯な心で皆で向かえば、絶対にそこで何かが生まれ、お客様に何かが伝わる、その事を何時も信じています。


Q3. 椿姫の聞かせどころはどこにありますか?

A3. この作品のどこを切り取っても「聞かせどころ」だと思います。
 序曲の中には、儚いヴィオレッタの必死の呼吸から、華やかな時の回想シーン(原作に基ずくものです。) 1幕の、合唱団(社交界の人々)と、その中で無我夢中に生きてきたヴィオレッタが、「真っ直ぐな心」に何かが揺らぎ、心に一番底にあるものが目を覚ますところ。
 2幕の、ジェルモンとヴィオレッタの対話は、それぞれが、それぞれの「愛」を気高く信じ、その事の裏には犠牲が起きるという悲劇。
 その2場では、社交界の乱れた世界と、そこで自分を見失った青年、最終的には、その青年がその社交界から「NO」を突き付けられる。この時代の良しも悪しきも、彼らが生きている価値観がそこにある。
 3幕では、アンニーナと言う、また違う「愛」があり、最後には、「愛」の中で、最後の唯一の幸せをつかんだヴィオレッタ。
 その楽譜に書かれているすべての音と言葉が、私にとっては聞かせどころです。


Q4. オペラ徳島についてのご意見を。

A4. 他の一般的によくあるプロダクションは「団内にソリストを抱え、合唱は毎回一般から公募」と言うスタイルですが、ここは違います。オペラ徳島というプロダクションが、どんどん前に進むには、何よりも、合唱団のメンバーが「自分の団だ!」と言う気骨とプライドを、更に持って、その力こそが、この先に向かう原動力であると思います。
 これだけの回数の定期公演をこなしてきたのですから、その力がさらに大きくなれば、広い展望が見えるように思います。


Q5. 指揮以外でやってみたい事は?

A5. あまり考えたことが無いのですが、やはり、音楽に関わる仕事、舞台に関わる仕事がしたいですね。実は、仕事を離れると「無趣味」なので・・・・。(談)





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La Traviata Interview
第18回公演「椿姫」 インタビュー