● 指揮・演出・訳詞  神尾 昇 (かみお  のぼる)  さんにインタビューしました。 


[プロフィール]

 香川県小豆島出身。
 東京藝術大学音楽学部声楽科卒業。同大学指揮科に再入学、首席で卒業。声楽を鈴木寛一、指揮を故佐藤功太郎氏にそれぞれ師事する。
オーケストラはもちろん、オペラ指揮者としてはLIP-OPERA、愛媛県民オペラ、芸大オペラプロジェクト、オペラ徳島の指揮者を歴任。また、この幾つかでは演出も担当。
2010年1月に杉並公会堂にて自ら指導する団体一同を会し「第一回神尾合唱祭」を催した。
声楽家としても活動。2010年夏にシューベルト「冬の旅」全曲リサイタルも開催した。
2005年5月から6月にかけてヨーロッパで行われた  「第一回ベラ・バルトーク国際オペラ指揮者コンクール」において最終ラウンドを待たずして、「審査員特別賞」を受賞。受賞者披露のガラコンサート「カルメン」では、終幕を指揮し、その模様は国営放送でも放送された。


[インタビュー]

Q1. ビゼーの音楽の特質とは。

A1. ジョルジュ・ビゼーはフランス人ですが、音楽はどちらかというと華やかで、一般的に捉えられているフランス音楽とちょっと一線を画していると私は思います。 そして繊細で、優しい。 今回のカルメン中にある三幕の間奏曲などは、とても優しい曲で、私の大好きな一曲です。 そしてビゼーその人について触れておくと、彼はとても天才的な才能を持っていたのですが、(例によって)悪妻をもらってしまって悲劇的な人生を送りました。 子守りや家事を「命じられ」、子供を背負いながら作曲をしたとか、妻を怒らせて折角書いた曲を燃やされてしまったとか・・・本当は名曲だった(かも知れない)曲が永遠に葬り去られたのです!!


Q2. カルメンとはどんなオペラですか。カルメンの音楽の魅力は。

A2. このカルメン、実はヒロインの設定が労働者だった等の理由で初演は大失敗でした。 そしてその初演から三ヶ月後ビゼーは失意のうちに亡くなってしまったのです。 カルメン音楽の魅力は何と言ってもどの曲をとっても魅力的であり、有名である、ということでしょう。 序曲はテレビなどでも屡々使われていますし、「ハバネラ」「闘牛士の歌」など聴いていて全く飽きることがないと思います。 ですので、世界でも上演回数としてはナンバーワンオペラといえるのではないでしょうか。


Q3. レシタチーヴォは、ビゼーの死後、友人のギローのによって作られたものです。 今回の公演で、レシタチーヴォ版を採用した理由は何ですか。

A3. 初演の大失敗からここまで世界中で上演されるようになったきっかけが、ギローのレチタティーヴォ版なのです。 いまでは元々のオペラコミック、つまり台詞で音楽を繋いでいく上演形式がどちらかというと主流になっていますが。今回の公演でレチタティーヴォ版にしたのは、まずオリジナリティーを出す、ということです。
 今回の日本語訳はこのレチタティーヴォも含めてすべて一からつくりました。つまりこの訳による世界初演です(笑)
そして、台詞だと声が届かないのではないか、という不安からです。歌うときと話す時は発声が違います。ヨーロッパの劇場は実はそんなに大きくなく、ボックス席が主体ですから舞台からの距離も案外近いのです。だから台詞でも聞き取れますが、今回のような舞台だとちゃんと発声してもらった方が聞き取れると思ったからです。


Q4. 舞台のコンセプトは

A4. もちろんこのオペラではカルメンが主役ですが、むしろこのオペラを引き立てるのはそれ以外の役、と考えています。カルメンは自由奔放、周りの人間がそれに振り回されるわけですが、振り回され方が大事なのです(笑)
 それから、これは舞台を見てのお楽しみですが、このオペラは実にたくさんの人を要します。オペラの舞台はキャスト、合唱、助演、が出てくるわけですが、今回はこの助演、の人たちがとてもたくさんで物凄く舞台上が華やかになると思います。
 子供たちの可愛い合唱もあります。


Q5. キャストについて

A5. 今回のカルメンを演じて下さるのは主に東京でご活躍の田辺いづみさんです。私とは色々なところで共演させて頂いていますが、とても魅力的な方です。カルメンも何度も演じられていますので、今回のカルメンもその真骨頂を発揮して下さることと思います。 その他のキャストもオペラ徳島御馴染みの方が多く、和気藹々とした雰囲気の中で練習を進めていきつつも、意見交換をしながらより良い舞台になるようにお互いに努力しながら作り上げています。


Q6. オペラ徳島の指揮は、今回で7回目となります。 オーケストラと合唱団への感想を励ましの言葉でお願いします。

A6. 合唱もオーケストラも皆さんに一致して言えることは、オペラを愛していらっしゃる、ということ。 皆さん本当にオペラがお好きで、我々と同じ、いやそれ以上に毎年のオペラ公演を楽しみに、そして楽しまれていらっしゃいます。
そして、同じくオペラ徳島を愛していらっしゃいます。 だから私も皆さんとご一緒するのがとても楽しみです。





撮影:遠藤湖舟


● カルメン役  田辺 いづみ (たなべ いづみ)  さんにインタビューしました。

[プロフィール]

 国際基督教大学人文科学科及び国立音楽大学声楽学科卒業、国立音大大学院オペラコース修了。スロヴェニアのマリボール国立歌劇場及び埼玉オペラ協会「カルメン」公演にカルメン役で出演。モロッコにて、文化庁/オペラ「虎月傳」に出演。二期会オペラ公演・ワーグナー「ワルキューレ」、東京室内歌劇場公演・リゲティ「ル・グラン・マカーブル」(日本初演)、東京オペラプロデュース公演シャブリエ「エトワール」の他、「魔笛」「フィガロの結婚」「リゴレット」「アドリアーナ・ルクヴルール」「アンドレア・シェニエ」等に出演。ヘンデル「メサイア」、メンデルスゾーン「エリヤ」、ドヴォルザーク「スターバト・マーテル」、デュリュフレ「レクイエム」、ラフマニノフ「晩祷」、ベートーヴェン「第九」等のアルトソロを務める。東京二期会他会員。≪公式ブログ≫http://plaza.rakuten.co.jp/izumitanabe/


[インタビュー]

Q1.音楽を志したきっかけは?

A1.中学生のときに、ショパンのピアノ曲をきっかけにクラシック音楽が大好きになりましたが、ピアノを始めるには時すでに遅く、日々悶々としていました。
 暗ーーい高校時代を終えて国際基督教大学という大学に入学し、グリークラブに入り、初めて歌に出会って、世界が一挙に明るくなりました。
 卒業後も個人的に声楽を習い、長らくアマチュアとしてモーツァルトやロッシーニやヴェルディのオペラの舞台に立っていました。
 でも、もっとちゃんと勉強して歌い手になりたい、人生は一度だけ、と〇〇歳のときに一念発起して国立音楽大学に入りました。
 人より〇十年遅れている分、歌って歌って、歌い倒して死にたいです♪



Q2.オペラ「カルメン」、カルメン役についてどう思われていますか?


A2.国立音楽大学と大学院を出て、初めて外の舞台に立ったのが「カルメン」でした(ちなみに、大学院の修士論文も「カルメン」についてでした)ので、このオペラ、この役には特別な思い入れがあります。
  メゾソプラノというと、オペラの中では、乳母か召使かヒロインの母親か・・・そんな地味~~な役ばかりです。アリアが1曲でもあれば儲けもの。時には、一番長いフレーズでも4小節とかだったりすることもあります。
 そんな中で、「カルメン」という役は破格です!「椿姫」や「蝶々夫人」のような悲劇のヒロインとはちょっと毛色が違いますが、ヴィヴィッドなキャラクター、名アリアの数々、仲間との楽しい絡み等等、魅力満載の役です。そして何と言っても、二人の男に熱愛されちゃんうんですから^^・・・・・・もう、やめられません♪
 この役とは生涯お別れしたくない・・・・80歳になっても元気に色っぽく「ハバネラ」を歌っているおばあちゃんになりたいです!


Q3.徳島、オペラ徳島についてのご感想は?

A3.今回、生まれて初めて徳島に来ました(こんなに長く生きているのに、四国自体が初めて・・・)!
 ゆったりした時間が流れ、人々は親切で温かく、徳島ラーメンはおいしい!!!毎回、徳島に来るのがとても楽しみな私です♪

 オペラ徳島のみなさまにも今回初めてお会いし、ご一緒させていただけることになりましたが、初めて稽古に参加させていただいたときから、皆様が、見ず知らずの私に最初からとても温かく接してくださり、親切にしてくださって、感激しました!

 本当にありがとうございます!
 そして、幾度か杉尾さんに空港にお迎えに来ていただく車中で、オペラ徳島の生い立ちや団員の皆様の熱心な取り組みについてうかがううちに、本当にすごいオペラ団だなぁと思うようになりました。

 稽古の時の熱意にあふれたパフォーマンスももちろんですが、大道具・小道具制作から、その管理・運搬、お弁当やお茶の用意、会場への送迎、その他の表には見えないお働きまで、団員の皆様や音楽スタッフの皆様がとてもアクティブに、献身的に活動し奉仕していらっしゃるご様子には、本当に胸が熱くなりますし頭が下がります。
 オペラ徳島と関わらせて下さった神尾さんに、大感謝です!!

◆オペラ徳島の皆様へ・・・・・・
 神尾さんがおっしゃったように、合唱はこのオペラの要(かなめ)であり、本当の主役です。
 今回私がいただいた役に「カルメン」という名前がついているように、皆様お一人お一人が演じるキャラクターには、楽譜には書かれていないけれど名前があり、それぞれの人生があります。
 そのキャラクターを、18日には最高に輝かせ、開花させてあげて下さいね。

 本番まであとわずかですが、それぞれの場所で最善を尽くし、助け合い高め合って、最高の舞台にしましょう!
 どうぞよろしくお願いいたします!







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Carmen Interview
第14回公演「カルメン」 インタビュー