すけろくゆかりのえどざくら
助六由縁江戸桜

【別の名前】
成田屋(市川團十郎家)が演じるときは「助六由縁江戸桜」外題ですが、
それ以外の役者さんが助六を演じるときには、
たとえば「助六曲輪初花桜」というように外題が少し変わります。
いずれにしても「助六」という言葉があったら、この芝居でありんす。

【見どころ】
助六の男伊達、と言いたいとこですが、どこがどう男伊達なのか、
ぢつは、よう分かりまへん(苦笑)。衣裳はめちゃくちゃハデなんすがね〜。
の着流しに、緋色の襦袢(じゅばん)、ちらりとのぞく褌(ふんどし)真っ赤で、
んでもって足袋は黄色(いったい、どうゆー色彩感覚なんだか。嫌いじゃないが。笑)
腰には脇差、印籠、なぜか尺八をさし、の蛇の目傘をさしての出端からど派手。
桐の下駄の音も高らかに、颯爽と登場するんですが、傘を上げると、
頭にの鉢巻き(こりゃ病気という印なんですがねぇ、本来は・・・)を絞めて、
塗りの顔にはむきみ隈(ん〜、こういうのが色男??? わ、分からん。苦笑)
で、この助六の恋人の揚巻も負けず劣らず超どハデ
正月の伊勢海老やら七夕飾りやら、何が何やらざんすが、ありがたや(笑)
え〜、衣裳だけじゃ何なんで、他の見どころを言っておくと、
主人公ふたりの悪態をはじめとした、威勢のいいせりふでしょうかね〜。
通行人相手に、「股ぁ、くぐれ」と喧嘩をふっかける場面も笑える。
この芝居、曽我兄弟が父の仇を追い求めるという曽我物語の世界なのに、
もう筋なんて関係ねぇや、ってなシッチャカメッチャカな感じで好き(笑)
くわんぺら門兵衛とか朝顔仙平など人をおちょくってるとしか思えない
妙ちきりんな名前の登場人物が出てくるのも、いい意味で変てこ。

【あらすじ】
三浦屋の店先。吉原きっての傾城揚巻が酔っぱらった様子で帰ってくる。
この揚巻には、熱烈に惚れきっている間夫(まぶ=恋人)がいた。
それが、花川戸の助六。実は、父親の仇を捜している曽我五郎である。
その助六の母親から来たという手紙を読んで、揚巻は思案顔だ。
と、そこへ、揚巻の妹分白玉を引き連れて、髭の意休がやってきた。
揚巻に嫌われているのを承知で通い詰めてるというマゾ気なじじい(笑)なのね。
今日も今日とて助六を盗っ人呼ばわりするから、負けじと揚巻が悪態をつく。
やがて、颯爽と助六が登場。
居並ぶ傾城たちから吸い付け煙草の煙管の雨が降るほどの人気者だが
喧嘩っ早く、意休の子分のくわんぺら門兵衛朝顔仙平に喧嘩をふっかけ、
さらには意休をもバカにしたおして刀を抜かせようとする。
そんな助六に声をかけたのは白酒売りの新兵衛
実は兄の曽我十郎で、廓で喧嘩ばかりしている弟を諌めにきたという。
ところが十郎、敵の唯一の手がかりである友切丸という宝刀を詮議するために
喧嘩をふっかけているのだと聞いて、一緒に喧嘩しようと言い出した。
じゃぁ喧嘩の仕方を教えましょう(笑)ということになって、
通行人を相手に兄弟で「股ぁ、くぐれ」「こうか?」(爆笑)といい迷惑。
そのうちに、揚巻に送られて編笠をかぶった侍客が三浦屋から出てきた。
この侍客、実は助六たちの母親の満江が人目を忍んでの姿だった。
さすがの助六も母親には頭が上がらない。
満江が帰った後。三浦屋から出てきた意休が友切丸を持っているのを
確認した助六が、すぐにも踏み込もうとするのを揚巻が押さえ、
帰りを待ち伏せすることにするのだった。

で、最後に、敵討の場となる、
本水を使った「水入り」の場面があるらしいのだが、
わっちはまだ見たことがない。見たら、また追加します。

【うんちく】
正徳三年(1713年たぁ古い!)原型が二代目市川團十郎によって初演されて以来、
脚本・演出の変遷を重ねながら、代々の團十郎および市川家の役者達によって
うけ継がれてきた人気狂言で、歌舞伎十八番のひとつ。
こうした伝統を尊重して、市川家以外の役者が演じる時は外題を変えたり、
また音楽も、市川家でやるときは河東節、それ以外では清元や長唄に変わるという
決まりがあるそうな(音楽のことはよく分かりまへん、ごめんちゃい)
当然、それぞれの家ごとに、微妙に演出が違っていたりするのかも・・・?
なお、主人公の助六には実在のモデルがいて、
心中事件を起こした万屋助六という上方の若者がそうだという話だが、
この芝居ではすっかり江戸前の男伊達になっているのが面白い。
それから、助六の象徴とも言える紫色の鉢巻き。これは、本来は病人をあらわす
記号なんですが、それは結び目が左(向かって右)にある場合。
助六は結び目が逆、右(向かって左)にあります。ま、要するに、ファッション?
常識では考えられない格好をする若者の代表ってなとこでしょうかね〜。

とか、いいかげんなこと書いてたら、
なんと、19歳(若い!)の男の子からメールをいただきました!
小学館発行の「歌舞伎鑑賞ガイド」という本には、
「右側で結ぶのは病鉢巻の逆で、みなぎるパワーの証。」と説明されています。
ですって。なるほど。まるっきり逆の意味があったんですね。
瀬尾陽介くん、ありがとうございました! いやー、歌舞伎の未来は明るいわ(笑)

さてさて。ところで、助六という名のついた寿司もありますね。
海苔巻きとおいなりさんのペア。紫色(海苔)を巻いているから助六で、
揚巻(おあげを巻いた寿司)といつも一緒という洒落なんですね。
その場合、上物の紫の海苔でなくちゃいけません。緑色の海苔はダメ、よん。