さんにんきちさくるわのはつがい
三人吉三廓初買
【別の名前】
さんにんきちさともえのしらなみ
三人吉三巴白浪
【見どころ】
三人の吉三が出会って義兄弟の契りを結ぶ「大川端」の場。
三人吉三といったら「大川端」と決まっているのは
名ぜりふがあるからだろう。せりふを言うのは女装の盗っ人お嬢吉三。
振袖姿の盗賊は作者黙阿弥の得意とするところで、
「白浪五人男」の弁天小僧も似たようなものだが、弁天が陽なら、お嬢は陰。
そんな気がするのは“月も朧に”な夜が舞台になっているせいか。
上演の機会はあまりないのだが、この三人、最後には
三つどもえに刺し違えて死ぬことになっているのだ、実は。
行く末をうかがわせるような出会いの演出と言えるのかもしれない(?)
【あらすじ】
上演の多い「大川端」だけを簡単に紹介しておく。
「大川端庚申塚」
節分の宵。夜鷹のおとせは昨夜の客を探していた。
客が百両を落としていったので、殊勝にも返そうと思ってのことだ。
そのおとせが大川端にさしかかったところに、振袖姿の可愛い娘があらわれた。
道を聞かれたので、親切にも案内しようとするおとせ。
その懐に大金があると知ると、娘は突如として本性を現し、財布をひったくった。
大家のお嬢さま風に見えた娘は実は男で、お嬢吉三という盗っ人だったのだ。
取り戻そうとするおとせを非情にも大川に突き落とし、ニンマリと笑うお嬢。
この一部始終を見ていた男がいた。お坊吉三という、これも盗っ人。
金をめぐって斬り合いになるが、割って入ったのが、これまた盗賊の和尚吉三。
争いの種の百両は和尚が預かることになり、
同じ名を持つ三人が出会ったのも何かの縁と義兄弟の契りを結ぶ。
【うんちく】
安政七年(1860年)初演。河竹黙阿弥の作。
原題は「三人吉三廓初買」で、通しだと、もっと入り組んだ話だったようだ。
(複雑な人間関係と、因果も因果な近親相姦がらみのお話なのだよ)
今では名ぜりふの聞ける「大川端」の場の上演がほとんどで、
その出会いを発端とした三人吉三だけの筋で通すこともあるらしい。
その場合は「三人吉三巴白浪」のタイトルを使う、というのが決まり事みたい。
とうぜん白浪物のひとつ、でやんす。