くるわぶんしょう
廓文章【別 名】
よしだや
吉田屋
【見どころ】
上方和事の典型と言われる作品だけに、伊左衛門のやつしの演技がまず見もの。
それから、夕霧を待ってる間の、じれて、あっちへ座り、こっちへ座る
腰の定まらない伊左衛門の「じゃらじゃらした」とも形容される滑稽な様子。
上方では「二枚目は二枚目半のつもりでやれ」と言い伝えがあるとか。
くすくすと笑える場面がいっぱいです。
【あらすじ】
大晦日、街には正月を迎える華やいだ気分が満ちている。そんな中、
大坂新町の廓にある吉田屋の店先に、紙衣姿に編笠をかぶった男がやってくる。
なんともみすぼらしい身なり(実際はきらびやかに見えるけどね)の男は
豪商藤屋の若旦那、伊左衛門。遊女夕霧に惚れ込んで通い詰め、
見かねた親から勘当されて遊ぶ金などないのだが、
夕霧が病気と聞いてはいてもたってもいられず来てしまったのだと言う。
そんなボンボンを、吉田屋の亭主と女将は快く座敷に上げてくれた。
阿波のお大尽に呼ばれたまま、なかなか来ない夕霧を、
伊左衛門はじっと待つことができず、嫉妬して、じたばたする(この辺、笑える)。
ようやくあらわれた夕霧に対しても子どもみたいにすねて狸寝入りなんかもするが、
結局は久しぶりに会えた喜びにひたるふたり。
そこへ藤屋から千両箱が届く。伊左衛門の勘当が解け、夕霧も身請けするという、
正月を前に晴れてメデタシメデタシ(できすぎ〜)という一幕。
【うんちく】
近松門左衛門の人形浄瑠璃「夕霧阿波鳴渡」が原作。
その後、人形浄瑠璃で「吉田屋」の段が独立して書き替えられ、それが歌舞伎に。
歌舞伎の初演は文化五年(1808年)。
この作品は、家によって台本・演出に若干の違いがあるらしい。
仁左衛門系と六代目菊五郎系のふたつは見たが、さぁて違いがあったかな(苦笑)
その他、鴈治郎家、宗十郎家、羽左衛門家でも演出が違うらしいので、
何度かご覧になる機会のある方は、その辺も注目しながら見るとより面白いかも。