八ヶ岳2006秋④

赤岳頂上を越えてすぐ、キレットが始まります。視界は最良好。オクさんの顔は、こわばっていましたが、単独おばさん登山者に、スタスタ追い抜かれてからは、多少、奮起した様子。難所にはハシゴやクサリの設置があるのですが、その下が崖になっているので、悪天候ではやめた方がよさそうです。同じ山でも、ルートによって違う表情を見せてくれます。キレットを終える頃、麓から次々に雲が湧いてきて、これから登る権現岳が見えなくなってしまいました。振り返ると、赤岳も隠れようとしている。2日続いた晴天が、終わるようです。
権現岳も赤岳側から登ると険しい。切れ落ちたヤセ尾根は、キレット同様、悪天候では歩きたくない。頂上直前の61段ある源次ハシゴは、下を見ないように一気に登る。権現岳の頂上は、崖の上に岩を積んだようで、その隙間に剣が突き刺さっていました。それを見て思い出した逸話はこれ。現在は「岩と雪の殿堂」、明治には「弘法大師が草鞋千足つぶしても登れない」と言われていた剣岳に測量隊が初登頂と思って、その頂きに立ったとき、赤錆びた剣を発見。それは何百年も前に修験者が登頂した証拠だった、というもの。登山道具など全くない時代から、阿弥陀、奥の院、権現、ギボシなど、寺院の名称がつけられた山は修行場となっていた象徴的な逸話です。
二日間、車を駐車している天女山Pまで下山すると、日が差していました。天気快復したかなと思い、振り向くと、まだ、八ヶ岳は雲の中でした。(おわり)

2006年10月24日