ヨットにHFアンテナを設置          戻る

JA3KPZ

いかるが 松浦昭良

以前からの念願でヨット船内でHF運用したいと思っておりました。今回そのチャンスに恵まれ設置しましたのでリポートさせて頂きます。私は普段、家では3.5Mhz14Mhzでのんびりと国内QSO(交信)するのが好きで車にもHF機を積んで楽しんでおります。その延長でヨットでも停泊中船内からのんびりとQSOしたいと以前から思っておりました。しかし、まずアンテナをどうするかで悩みます。VHFやUHF帯であればアンテナが短いので簡単に撮り付けができます。しかしHF帯となるとそうもいきません。電波の輻射効率から行くとその使用波長に適した長さが必要になります。

普通HF帯のローバンドではほとんどがワイヤーアンテナを使用されています。ヨットにはマストのステーがありこれをなんとか利用できないものかと誰もが考えます。しかしインピーダンスマッチングをどうするかが大きな壁になります。ところが昔にはなかった今は市販の自動アンテナチューナ(ATU)というものがありそのおかげでアンテナの形式の自由度がかなりアップしました。

30年ほど前、車にHF機(FT―DX100)を積むため自分でカップラーコイルを巻いて何度も調整した苦労がまるでウソのようです。ATUは無線機の出力インピーダンスとアンテナの給電点のインピーダンスを瞬時に整合してくれますのでたいへん便利です。私はマストのバックステー2本を利用しデルタ型のループアンテナにしてみました。後ろから見て二等辺三角形の底辺部に別ワイヤーを追加しATUまで導きます。私の船ではループの総延長が約15mぐらいになります。これで3.5Mhzから50MhzまでをSWR1.21.5以内におさまります。測定詳細は別表を参照してください。送信中は絶対にワイヤーに触らないようにしてください。

無線機とATUとアンテナの接続は次のとおりです。

HF無線機:ICOM IC−706MK2M

ATU:ICOM AH−4

ATUの取付け位置は出来るだけバックステーの根元に近い位置にします。

私はテール部の船内内張りとハルの間のわずかなスペースに取り付け船内からは見えないようにしました。AH−4はもともと屋外用に設計されているの船外に設置しても問題ないと思いますがやはり塩害が心配ですのでできるだけ船内に設置したほうがいいと思います。アンテナになるバックステーとATUまでの追加ワイヤーは3mmのステンワイヤーを使用しました。その接合部分はステンの小さいワイヤークリップで接合しATU側は丸端子を圧着します。反対側のバークステーからも短いステンワイヤーでATUまで導きます。ATUの碍子がついている方をバックステーに接続し、底辺の追加ワイヤー(長い方)側をATUのアース側に接続します。この接続はどちら側にしてもいいと思いますがもしSWR特性が悪い結果となった場合に一度逆にして見てください。

またどうしてもあるバンドだけSWRが下がらない場合は追加した底辺のワイヤー長さをいろいろ変えてみてください。ループアンテナは1ループ1波長が基本ですが私の場合、3.5Mhz50Mhzが若干悪いのはループ長さによるものだと思います。3.5MHzにしては全体が短い、50Mhzにしては1波長以上になるのでその影響が出ているものと思われます。1.9Mhzにしてはアンテナ全長がかなり短くなるのでカバーし切れませんでした。ローディングコイルを入れれば1.9Mhzも可能にあると思います。ATUの仕様によるとアースが十分ならば7mのワイヤーがあれば3.550をカバーするそうです。

ATUと無線機はATU付属の同軸ケーブルとコントロールケーブルをそのまま使用します。無線機とATUは同じメーカのものを使用しましたのでバンドを切り変えても無線機のATボタンを押すだけで数秒間で最適な状態に自動調整されます。もし異なるメーカどうしであっても少し手間ですがCWやRTTYモードでキャリヤを送信しながらATUをチューニングモードにすれば問題ありません。ループ式アンテナ以外の垂直系のアンテナはアース側の線が必ず必要になりますので設置の悩みが倍増します。ちなみに有名な堀江健一さんは写真から拝見するとマストのステー利用のツエップ型を使用されているようです。

電波の飛び具合ですがほぼ満足できます。陸上でのフルサイズのアンテナと同じと言うわけには行きませんが相手の信号がそこそこあればほぼ交信できます。私は移動局として許可される最大出力50wですが10wでも混信がなければ大丈夫だろうと思われます。

CWなら14Mhz21Mhzでは海外局とも楽に出来ます。

もちろんHF帯は使用するバンドによってもまた電離層の状態にも左右されますが私が良く使う3.5Mhz14Mhzではほぼ期待通りの結果です。

家での運用はTVI等で心配になりますがハーバではまず大丈夫だと思いますので気兼ねなく存分に楽しめます。VHFやUHF帯は電波の届く距離が短いのでどうしてもお馴染みさんどうしの交信になりがちですがHF帯は電離層に跳ね返り遠くまで電波が届きますのでその時その時の電離層の状態が変る独特なスリルがありおもしろいものがあります。外洋に出ないのでHF機搭載は必要無いと思われるかもしれませんが停泊船内で交信するのも家とは違った楽しいものがあります。ぜひみなさんもHF機を積み込んでヨットライフに新たな楽しみを見つけてください。インターネットで総務省のサイトからコールサインを入れるとその局に許可された周波数や出力等が一般公開されて見えていますので合法的に運用しましょう。

写真のバックステーがアンテナ。(わかりやすいように黒い線で編集)

参考としてアマチュア無線のHFマリン関係でのネットワークで有名なのにオケラネットとシーガルネットがあります。海外にもたくさんのネットがあるようです。

オケラネットは単独世界一周レースに挑戦された故多田雄幸氏の愛艇「オケラ」を支援するため発足したアマチュア無線のネットワークです。以来ヨット等海上移動局のセイフティーネットワークとして数多くのアマチュア無線愛好家の支援と海を愛する人々に支えられ運用維持されています。
ネット交信はネットコントローラの下で

 毎日 12:20〜13:00*JST
 
周波数 21.437MHz USB

で行っています。皆さんの参加をお待ちしているそうです。

シーガルネットは

毎日 07:0008:00

周波数 21.382MHz

で運用されています。

我クラブである泉大津ヨットクラブも日時を決めて定期的にネットコントロールをして海難の役にたてればなぁと思っております。

 

参考:

SWR測定値

3.5   1.4

7     1.2

14    1.1

18    1.3

21    1.2

24    1.2

28    1.3

29    1.2

50    1.3

51    1.4

52    1.4

53    1.4