(A) はじめに…
ピットストップ作戦を左右する大きな変化として,2006年はタイヤ交換の復活,予選フォーマットの大幅な変更というレギュレーションの変更がありました。今年はタイヤの使い方(使うセット数)が予選セッションの進出具合によって大きく異なるので,レースで使える新品タイヤの本数もドライバー(チーム)で大きく異なることになります。
昨年は1セットで350 km程度走ることのできるタイヤが必要でしたが,今年は基本的には100〜120 kmを走りきればよいことになります。昨年は350 kmを2セットで700 km,今年は100〜120 kmを7セットで700 km〜840 kmということで,今年も案外,効率的なタイヤの使い方が求められていることになります。
私は,おそらくほとんどのチームが各GPで2ストップ作戦を選ぶと考えています。
そこで,2006年のレギュレーションを考慮したタイヤの使い方およびピットストップ作戦を概説すると同時に,どういうサーキット,局面でこれらの作戦が適当かについても述べます。
※以下,タイヤスペックに関する使用記号: 本命スペック=A,予備スペック=B
(アルファベットの後の数字はセット数)
(B) 予選においてQ1で終わる場合
○ 基本的なタイヤの使い方
| | 2ストップ作戦(1) | 2ストップ作戦(2) | 3ストップ作戦 |
| 金曜日・フリー走行1回目(1時間) | A1 | A1 | A1 |
| 金曜日・フリー走行2回目(1時間) | B1 / A2 | B1 / A2 | B1 / A2 |
| 土曜日・フリー走行3回目(1時間) | A2 / A3 | A2 / B1 | A2 / B1 |
| 土曜日・予選Q1(15分) | A4 / A5 | A3 / A4 | A3 / A4 |
| 日曜日・レース | A4 / A5 / A6 | A4 / A5 / A6 | A3 / A4 / A5 / A6 |
○ 2ストップ作戦
- 距離の短いモナコGP,タイヤに厳しくピットストップ時間の短いフランスGPなどを除く多くのサーキットで用いられることになると考えられる。
- 燃料搭載量が自由なので,後ろから追い上げるために下位チームの多くはたくさん燃料を積んで前があけたときにピットストップで逆転する。
○ 3ストップ作戦
- フリー走行時にマシンセッティングがすぐ決まり,タイヤを温存することができ,アグレッシブに攻めるときに用いる。
- タイヤの磨耗が激しいサーキットでは,ソウトタイヤを用いて常に速いラップタイムを出せばこの作戦は生きる。A3タイヤは15分で10周程度しか使用していないと考えられるので,まだ使うことができる。
- ピットストップにかかる時間が短いサンマリノGP,カナダGP,フランスGPでは使いやすい。
(C) 予選においてQ2で終わる場合
○ 基本的なタイヤの使い方
| | 2ストップ作戦(1) | 2ストップ作戦(2) | 3ストップ作戦 |
| 金曜日・フリー走行1回目(1時間) | A1 | A1 | A1 / B1 |
| 金曜日・フリー走行2回目(1時間) | B1 / A2 | B1 / A2 | A1 / B1 |
| 土曜日・フリー走行3回目(1時間) | A2 / B1 | A2 / B1 | A1 / B1 |
| 土曜日・予選Q1(15分) | A3 / A4 | A2 / A3 | A2 / A3 |
| 土曜日・予選Q2(15分) | A4 / A5 | A3 / A4 | A3 / A4 |
| 日曜日・レース | A4 / A5 / A6 | A4 / A5 / A6 | A3 / A4 / A5 / A6 |
○ 2ストップ作戦
- タイヤの使用状況でいけば,ほとんどがこの場合になると思う。
- 燃料搭載量が自由なので,後ろから追い上げるために下位チームの多くはたくさん燃料を積んで(Q3に進出するドライバーより多く積む)2ストップ作戦を選ぶ可能性が高い。
○ 3ストップ作戦
- フリー走行時にマシンセッティングがすぐ決まり,タイヤを温存することができ,アグレッシブに攻めるときに用いる。
- タイヤの磨耗が激しいサーキットでは,ソウトタイヤを用いて常に速いラップタイムを出せばこの作戦は生きる。
- ピットストップにかかる時間が短いサンマリノGP,カナダGP,フランスGPでは使いやすい。
(D) 予選においてQ3までいく場合
○ 基本的なタイヤの使い方
| | 2ストップ作戦(1) | 2ストップ作戦(2) | 3ストップ作戦 |
| 金曜日・フリー走行1回目(1時間) | A1 / B1 | A1 / B1 | A1 / B1 |
| 金曜日・フリー走行2回目(1時間) | B1 / A2 | B1 / A1 | A1 / B1 |
| 土曜日・フリー走行3回目(1時間) | A2 / B1 | A1 / B1 | A1 / B1 |
| 土曜日・予選Q1(15分) | A2 | A1 | A1 |
| 土曜日・予選Q2(15分) | A3 | A2 | A2 |
| 土曜日・予選Q3(15分) | A3 / A4 / A5 | A2 / A3 / A4 | A2 / A3 / A4 |
| 日曜日・レース | A4 / A5 / A6 | A4 / A5 / A6 | A3 / A4 / A5 / A6 |
○ 2ストップ作戦
- タイヤの使用状況でいけば,ほとんどがこの場合になると思う。
- Q3前の燃料搭載量が非常に難しいが,ニュータイヤでの一発の速さがある今年は予選が非常に大事だと考えられるため,軽めの燃料で前にいるほうが優勝は狙いやすい。(表彰台,入賞だと重くても十分に可能)
○ 3ストップ作戦
- Q3が20分のときは,ほとんどのサーキットで現実的ではないと考えられたが,15分に短縮されたため,ピットストップにかかる時間が短いサンマリノGP,カナダGP,フランスGPでは使いやすい。。
- タイヤの磨耗が激しいサーキットでは,ソウトタイヤを用いて常に速いラップタイムを出せばこの作戦は生きる。
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