どこから来たの?帰ってきたの?

 亀に関する、ちょっと興味深い話を聞きました。

 私の住む家は家内の実家で、池は、すでに他界した家内の祖父が錦鯉と亀を飼うために作ったそう。当時を知る義理の両親に聞いたところ、祖父は確かにこの池で錦鯉と亀を飼っていたそうで、亀は、記憶では、黄色っぽかったそうです。その後祖父が亡くなり、錦鯉は愛好家たちに譲られ、亀は近所の農家に引き取ってもらった。その農家は、私が結婚してこの家に入ったときにはすでに住人はなく、廃墟となっていましたが、近所のご老人に伺ったところ、確かにその家で亀を飼っていたこと、そしてその亀は黄色っぽく、また、家の前の水路を仕切って、犬のようにひもで繋いで飼っていたことを話してくれました。
 はて、我が家に来た亀の甲には、穴が開けられており、繋がれて飼われていた過去を教えてくれます。さては、かつて我が家の池で生活していた亀が、その後紆余曲折を経て、再び戻ってきたのかしらん。
 私は詳しくないけれど。亀というのは一般に帰巣本能が強く、長年経っても自分の育った池を覚えているそうです。こと、イシガメが頭が良く、逃げたと思ったら、半年後に戻ってきた、などという話も聞いたことがあります。

 事実は、この際あまり重要ではありません。ある日我が家にやってきた老亀が、幸せに余生を送ってくれるよう努めるのみです。しかし、そんな話を聞きながら、何とも不思議な、神妙な気持ちになったのも、また、事実です。
廃墟
今や廃墟となったこの一軒家は、かつて彼女が嫁いだ家だったのだろうか。
すでに納屋は倒壊し、近隣住民によってかろうじて維持されている母屋も、もはや崩れるのを待つだけか。

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池のこと。