未来を生きる子ども・家庭・学び その20






 HSN姫路がスタートして1年半が経った‘94年も後半になると、 子どもたちも親の方もホームスクーリングへの理解がすすみ、 要領が分かってきたようでそれなりに自信も少しずつ生まれてきました。 ネットの活動も呼びかけが増えて多彩になってきました。

 親たちは、それぞれに人生を生きてきて、様々な仕事の経験や趣味を持っています。 お料理の得意な人、木工の好きな人、手芸の上手な人、天文学の知識の豊富な人、 お茶、お花を学んだ人は結構います(私は知りませんが)。 親たち(子ども達をサポートする大人)がそれぞれに持っている技能は、 子ども達ばかりではなく、親たち相互にとっても貴重な学びのリソースです。 そこで、親たちの持つ特技をいかしていけば、 子ども達に提供できる学び(経験)のメニューを増やすことができます。 電動糸鋸で組木パズルを作る木工クラブはすでに始まっていました。

お茶会
 我が家のモモは、‘94年の9月からは学校に行くのをやめて、 本格的にホームスクーリングに入っていました。 その頃彼女は日本の歴史に興味を持っていて、図書館で歴史関係の本を探したり、 歴史博物館に出かけたりということが多かったのですが、 ある時、姫路城の西隣にある好固園(日本庭園で中に茶室があります) でおうすと和菓子がとてもおいしいという経験をしました。

 どういうわけか、モモは戦国時代に興味を持っていて、 その時代は千利休が活躍した時代でもあります。 千利休を描いた映画のビデオを図書館で観たということもあって、 お茶の作法を知りたいという話になりました。 勿論本格的なものではなく、ちょっと経験できればよかったのです。 そこで、通信で呼びかけることにしました。 「茶道の初歩を教えてください。できればお茶会などをひらいて 親子で楽しみたいなと思っています。(あまりかたくるしくなく)」 (HSNニュースNo.13)すると早速当時知り合ったばかりのFさんが応えて下さり、 お茶会を市民センターの和室を借りてひらくことになりました。 ちょっとしたお茶の作法を知りたいという人は、 HSNニュースの読者には結構いて、にぎやかなお茶会になりました。

籠づくりハイキング
 11月に入って急に温度が下がってきましたね。旧暦では、 今は10月神無月です。10月6日(新暦では11月8日)は立冬。 「陰気深くこもり冬の気立つという意で立冬という。次第に冷気深くなる。」と 旧暦カレンダーに書いてあります。街には金木犀の香りが漂い、 柿の木には実がたわわになっています。この夏の日照りのせいで、 実りは小ぶりだけれど甘いそうです。そう言えば、先日の頂き物の柿も、 小さいけれど甘くてとてもおいしかった。

 稲刈りの終わった田んぼに、落ち穂をついばむスズメやハト、ムクドリが群れています。 モズのするどい鳴き声も耳にするようになってきました。季節は足早に移っていこうとしています。 この季節を小春と呼ぶのだそうです。「小春日和」って、とても気持ちのよい語感だと思いませんか。 空気の清澄さと陽だまりのぬくもりを感じます。

   10月31日の籠づくりハイキングは、ちょうど小春日和。 広峰山のふもとにある獨協大学の裏の谷間の道をどんどん入って行き、 途中で見つけた藤のつるを適当に切りとって、まいてその場に置いておき、 また次を探す。子どもたちはリースに付ける飾り用の松ボックリやヤシャブシの実を拾って歩く。 途中、道を外れて枝をかきわけながら斜面を登ってつるを探す。 見つけたつるをひっぱると木くずや枯葉がわさわさと落ちてきて身体にかかるのがとても愉快。 腕いっぱいのつるをかかえて道を走る。

 陽当たりの良いテニスコートの土手でお弁当を食べたあと、 Sさんに教えてもらいながら籠を編む。足でつるを踏んづけたままひっぱったり、おさえたり、 思った以上に全身労働。小柄で華奢なSさんが今日はとてもたくましく見える。 「子どもの頃よく母親について山歩きをしたわ。私が山歩きを好きなのは、きっとそのせいね。」とおっしゃるSさん。
 昔はるか、縄文人の記憶がよみがえったような体験でした。これに味をしめて再度籠づくりを!! 今度はくずのつるで可愛い籠を編んでみましょう。
HSNニュースNo.15(‘94.11.7発行)より


 この年の12月は、お茶会の写真が掲載されたHSNひめじの記事(12.6朝日新聞姫路版)や 12月18日にひらいた二回目のホームスクーリングキャンペーン「なんで学校にこだわるの!?―ホームスクーリングの可能性」 (再び児島さんに話していただきました)の取材記事(12.19毎日新聞姫路版)がきっかけになり、 新たに三家族が参加することになり、ネットの活動も安定したものになっていきました。


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