「龍司さん、もう休まれた方がいいのではないですか?」
ひとりの男が龍司に話しかけた。
真夜中の1時。
幼い龍司は、いつもならとっくに眠っているはずの時間だ。
近江連合本部の大広間で龍司はひとり、膝を抱え仁の帰りを待っていた。
”父親”がまだ戻ってこない。
”おとん”とは呼んでいたものの、龍司にとって其れは只の”呼び名”でしかなく、仁を父親だと思ったことは一度もなかった。
龍司は”郷田仁”が憎かった。
最愛の母親を自分から奪った男。
怨んでも怨みきれない。
いつか、この男を超えてやると、幼いながらも子供心に決心していた。
そして、いつかこの男を見下してやると心に誓った。
しかし、自分はまだ何も出来ない子供だと言うことも理解していた。
まだ、”郷田仁”を頼らなければ生きていけない”子供”だという事も。
龍司はまだ何も出来ない自分に腹立たしさを覚え、秀淵がいなくなってからは、一度も笑顔を見せることはなくなっていた。

----また、どこぞの組とケンカでもしてるんやろか・・・?-----

幼いながらも、周りの大人たちの様子でその事が察知出来る様になっていた。
仁の身を案じているのではない。
今、仁に死なれでもしたら、己の野望が果たせなくなる。
戻って来るのを見届けるまでは、安心出来ない。
その思いがこの幼い子供をこんな夜中まで起こしているのだ。


真夜中の3時を越え、とうとう、龍司はその場で眠ってしまった。
朝には戻っているだろうと信じて。