「そうか・・・。」
秀淵は、突然郷田の家を出て行くと言い出した。
理由(ワケ)は、あの事件が起こった時、秀淵と龍司を救ったという、あの男・・・・・。
そう、”瓦次郎”の元へ行くと言うのだ。
仕方のない話だ。
所詮、己は極道の身。
こんな自分といるよりは、真っ当な生活を送っている堅気の人間と一緒にいた方が幸せになれる。
私は心底、秀淵を愛していた。
これまでないという程に。
だからこそ、私は秀淵と別れる決意をした。
たったひとつの願いを条件に。
-----龍司が欲しい。--------
分ってはいた。
龍司は秀淵にとって命よりも大事なかけがえのない我が子。
私とは違い、血の繋がりのある自分の子供だ。
私がどんなに龍司を我が子の様に愛しても、それは乗り越えられない現実である。
しかし、私は龍司だけでも欲しかった。
少しでも、ほんの少しでも秀淵のものを手元に置いておきたかったのだ。
私は龍司を秀淵の身代わりにしようとしているのだろうか?
酷い話だ。
自分の身勝手で愛した女を泣かせてしまった・・・・。
1981年12月24日。
雪の舞う寒い日だった。
秀淵は私に一礼をし、タクシーに乗り込んだ。
まだ、龍司の目を覚まさないうちに。
「オモニー!!!オモニー!!!!!」
目を覚ました龍司は異変を感じ、いなくなった母親を探し始めた。
目にいっぱいの涙を溜めて。
龍司にとって唯一の肉親。
大好きな優しい母親。
私は愛した秀淵も龍司も不幸にしてしまった。
→