世界の窓

このページでは海外で現在活躍されているビジネスマンや暮らしておられる方の生の声を、掲載しております。
現在、海外で滞在されている方で、その国について、レポートして下さる方、広く募集いたします。

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◆ 海外特派員: Malka


外大在学中にテュニジアに留学され、、現在2年目(1999/11現在)。一年目はアラビア語、
2年目はフランス語をメインに勉強されています。現在のところ、テュニジア方言で
生活しておられるようです。「フランス語の道は遠いです。」とのこと。(^^)

 HPではテュニジアの生活情報、観光情報、暮らしの日記、エッセイなどを公開
されてます。

2000年7月現在、日本に在住されています。
 

Homepage:Malkaさんのテュニジア生活 を綴っておられるホームページ
       http://malka.s21.xrea.com/
     
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お掃除しましょ
テュニジアのアイデンティティ


(2000/02/27  アラブ・イスラムの国・テュニジアからの便り)

◆ ラマダーンが明けると(ラマダーンシリーズ・6)
 

 
ラマダーンが明けるのは、三日月が見えるか見えないかで決まる。その三日月を見る日のことをルウヤという。ラマダーンが始まるのもこれで決める。だから、 このルウヤが終わらないことにはいつ始まるか、いつ終わるかというのは分からないのだ。
(イスラム諸国の中にはルウヤを行わずに決定するところもあるとか。インドネシアとかはこの類らしい)

 ラマダーンが明けると、人々はウキウキ。ラマダーン中に買っておいた新品の服に身を包み、新年のご挨拶さながらに親戚回りをする。だから、ラ マダーンが終わる頃になると、あちこちで帰省ラッシュが発生するのだ。
 ラマダーン明けの休みは2日間あるが、その間、お店は閉まってしまう。開いてる店もあるけど少数派だ。大抵は里帰りしてしまうからだ。(休みが明けた後 もまだ帰ってきてない人が多いらしく、店は結構閉まってる)

 そして人々は朝から食べる。ほとんど一日中食べてるような感じも受けるが、実際どうなのか私は知らない。とにかく、山のようにお菓子を買う。 食事以外はお菓子を食べるのだ。
 だから、このラマダーン明けの休み(イード・ル・フィトル)のときのラジオ番組は凄い。単純な、電話を使った番組なのだが、こんなの聴いてる人いるのか な・・と思う内容なのだ(まあアラビア語の番組を回すとこれしかないけどね)。

「イード・マブルーク(おめでとう)!」
「イード・マブルーク!」
 ここまではいい。しかし、
「今お父さんはクスクスを食べてるわ。お母さんは今朝モロヘイヤを作ったのよ。妹は友達の家に遊びに行ってる。私? 私はブリックを食べたわ」と、延々食 べ物の話なのだ。誰が何を食べようと、知ったことじゃないのだが、司会者もよくやる・・・

 去年もこの番組を耳にしたから、毎年やってるんだろう、おそろしいことだ。

※ 私はこのラジオ番組をずっと聴いていたわけではありません。

(2000/01/11公開分)



(2000/02/20  アラブ・イスラムの国・テュニジアからの便り)

◆ ラマダーンの醍醐味(ラマダーンシリーズ・5)

 

 バスはゆっくり走るし、車は急ぎ足で運転は荒くなるし(見た目には変わらなくても、日頃運転してる人からすれば違うみたい)、 お買い物時間は変わるし、授業時間も変わって、いやだなぁと思うことも多いラマダーン。けど、やっぱりいいことも多いのです。

 ラマダーンといえば、日本の正月のようなもの。となると、もちろん各地方に散らばった親戚たちが一堂に会する。となると、各地の料理が勢揃い するわけです。テュニスにいては滅多に食べられない代物、地方によって違う味付け、これらを一つところで堪能できる、これこそラマダーンの醍醐味!
 というわけで、お隣の大家の親族が持ってきたものをお裾分けしてもらった、幸福な私。

 まずは、タタウィンなどの南部地方、ベルベル人のお菓子♪ 見た目がどこか、スイートポテトみたいなのですが、「ガゼルの角」(*)という名前を持っています。
マクルード(*)と同じく揚げてあって、外側の皮がからり、さくっとしています。
かりっと噛むと、中から香ばしいゴマの風味がいっぱいに広がります。中身までえいっと噛むと、口の中に大きなアーモンドが転がり込んできます。それらが、 砂糖と蜜でミックスされていて、何より歯触りがよい。甘いから多くは食べられないけれども、ゴマやナッツ好きの人なら病みつきになりそうなこのお 味・・・。これも、現地に行かないと食べられないのです、普通なら! ああ、ラマダーンって素敵。

 そして、大家の奥さん・ライラの姉妹の住んでる、テュニスから100キロ離れた地域で作られるという、ハラーラなるスープ。ライラのご家族が 作ったからかどうなのか、辛さはほんのり、2種類のパスタ(細くて細切れのものと、平べったくて小さい正方形をしたもの)、空豆・グリンピース・インゲン と豆づくし、そして牛肉を小さく切ったものが入っていました。
みなさんご存じないかも知れませんが、牛肉って短時間じゃ柔らかくならないんです。なんで日本の牛肉はあんなにすぐに柔らかくなるんでしょうね。使う部分 が違うんでしょうか。
血抜きの問題? とにかく、そのスープはコトコト長時間煮込まれた筈です。そのおかげで、牛肉も魚の身かと思ったくらいの柔らかさで、するっと喉の奥へ流 れていくのです。テュニスの魚を出汁にした、菜っぱと粒状パスタのスープとは違ったお味が、なんとも美味でした。

 テュニジア全土、一体どんな料理を皆さん食べてるんでしょうねぇ。あちこち食べ歩きをしたくなってしまいました。
 ラマダーンって、家族みんなが出会い、団らんのひとときを過ごす、そういう意味ではとってもいいんですよ。ただ、不健康なだけで・・・

 
*ガゼルの角

テュニジア菓子

 一番大きいのが「ガゼルの角」とかいうやつで、テュニジア南部のベルベルの村でないと食べれな い一品。アーモンドとゴマが香ばしくておいしかった。3つあるのが「バクラワ」。トルコが発祥の地らしいけど、アラブどこへ行っても多分存在する。ピスタ チオが入ってる。4つあるのが、ラマダーンに欠かせない「グライバ」。これは上品に赤い点を付けてある。家庭で作ったものをパン屋に持っていって、焼いて もらう人も多い。
 

*マクルード

世界遺産都市・カイラワーンの名物菓子で、この町が発祥。ナツメヤシのあんを生地でくるんで揚げて、蜜をたっぷりしみこませたもの。ゴマがか かっていたりもする。

(1999/12/28公開分)
 
 



(2000/02/18  アラブ・イスラムの国・テュニジアからの便り)

◆ ラマダーン時間(ラマダーンシリーズ・4)

 

アラブで郵便局や銀行なんかへ行くと、営業時間表に、平日・土日祝日の記述に混ざって、必ずと言っていいほどラマダーン時間が併 記されている。
 観光地などでは、もちろん観光可能時間も異なってくる。日没前にはみんな閉まってしまうのだ。当然、トータルの営業時間は短くなる。

 テュニジアなんか、日頃からシエスタというお昼寝時間も採っているものだから、ラマダーンになると営業時間がまた短くなる。
 平常、8時から12時と3時から6時なんて営業をしているところなら、8時から2時まで、なんてことになる。大体が1時半とか2時とかに閉まってしまう のだ。
 その辺にたくさんある食糧雑貨屋さんは、ご近所の強い見方だから、結構ぎりぎりの時間までやってる。市場でも、日頃一日中開いてるところは、日没前まで やるし、午前中で終わるところは、ちょっと時間を後ろにずらす。でも、ほんとに時間にきっちりしてて、いつもなら余裕で売ってくれるものも、「もう時間だ から駄目、駄目、駄目!」と、問答無用で店終いをする。みんな食事に向けて必死なのだ。

 学校だって同じだ。8時から12時、2時から4時、4時から6時、6時半から8時半という時間割がある中、休憩時間が短くなり、昼休憩はなく なり、結局8時から11時45分、11時50分から1時15分・・・というように大幅にずれる。断食しない人にとっては、お昼の時間がずれ込むから、結構 苦しい。

 ラマダーン中の楽しみ、ハンマーム(公衆浴場)の時間帯も変わる。女性時間と男性時間が入れ替わるのだ。いつも、午前中と夜の部が男性で、午 後からが女性になっているのだが、これが見事に入れ替わる。女性でもラマダーン中は夜遊びの許可が出るし、男でも午後はお休みになるから、こういうことに なるみたいだ。

 そうそう、たとえ日本大使館であろうと、テュニジア人だって働いてるから、やっぱりラマダーン時間・・・。
 ラマダーンになると、生活のリズムが、どうあっても狂うものなのだ。

(1999/12/18公開分)
 
 



(2000/02/10  アラブ・イスラムの国・テュニジアからの便り)

◆ ラマダーンのナツメヤシ(ラマダーンシリーズ・3)

 

ラマダーンのとき、何故かは私は知らないけど、ナツメヤシを食べる習慣がある。エジプトに行ったときはナツメヤシはそのまま水洗 いして食べていたが、どうもテュニジアは違うらしい・・・

 今日大家の家に行ったときの話だ。奥さんが台所で調理している間、テュニジア人の男としては珍しいことに、ヌール(一家の長・60歳)が何や ら手伝っていた。ここの家は小さい息子がいるだけの3人家族だから、彼も人出に回るのか。
 で、ヌールが一生懸命作っていたのは、ナツメヤシの種を取って、その中に適当に切ったバターを入れるというものだった。聞けば伝統的な食べ方なんだそう だが、中に入れるものが色々なのだとか。例えば何を入れるの?と訊いたら、アーモンドとかピスタチオを入れてくれた。
 さてお味は・・・。濃厚なナツメヤシの甘さに(っていっても甘すぎないんだけど)塩気のないテュニジアバター。これが日本のバターだったりしたら凄く気 持ち悪い代物なんだけど、つるんと口に入って、抵抗なく食べられた。確かにバターの油が舌に残るんだけど、ナツメヤシが甘いから、それをうまく緩和してる 感じ・・。ナツメヤシの甘さにバターの味を加えただけ。うん、ほんとに味付けって感じ。他にどう言えばいいんだろう、料理漫画じゃないからな・・・

 そういえば、後輩Aちゃんが引っ越しする前、大家の家でナツメヤシにオリーブオイルを付けて食べたと言っていた。ナツメヤシと油というのは、 親しまれている組み合わせなのかも知れない。

(1999/12/13公開分)
 



(2000/02/05  アラブ・イスラムの国・テュニジアからの便り)

◆ ラマダーンのお菓子・ラマダーンシリーズ・2

 

東の方へ行くと、ラマダーン中の菓子は「クナーファ」が多いようですけど、テュニジアは「グライバ」。 さて、これは何なんで しょう?

 グライバは、ひよこ豆(エジプト豆)から作ったお菓子です。粉をひいて作ってあるので、食感は非常に滑らか。歯に当てるとほろっと崩れて、舌 の上でとろけるていきます。親指ほどの大きさで、形は青竹を上からちょっと潰した感じ。色は、白っぽいのですが、他の豆を使うと緑色に濁っていたりしま す。甘さはそんなに多くありませんので、抵抗なく食べることができます。

 ラマダーンの間に食べるお菓子は実は色々他にもあるんですけど、特別なのはどうもこれだけらしいです。普通、グライバは各家庭で手作りして蓄 えておくものなのだそうです。そして特別なときに出して食べるのだとか。中流階級以下の家庭では特にそうだと思われます。珍しいお客があったときなどに、 こっそり出していたりします。

 ついでだから「クナーファ」の方の説明もしましょうか。
 エジプトで言う「クナーファ」は、ココナツミルクを、熱した鉄板の上にほそーくほそーく垂らして、ココナツの糸を作り、それを蜜で固めてできたケーキで す。中にいろいろな乾燥フルーツやナッツが入ります。甘いんですけど、ココナツのカリッとした歯触りがとてもおいしいケーキです。
 「クナーファ」は国ごとにどうも違うものらしいので、今のところ私に分かるのはこのくらいです。

 ラマダーン料理の話は機会があればまた。

(1999/12/03公開分)
 
 
 


  (2000/02/04アラブ・イスラムの国・テュニジアからの便り)

◆  ラマダーンの話 ・ ラマダーンシリーズ・1

 

 もうすぐラマダーンになるし、この話はしておかねばならないだろう。
 大体、変な認識をしてる人が多いのだ。まるまる1ヶ月も飲まず食わずでいたら死
んじゃうじゃないか。なのに、ほんとに何も食べないと思ってる人がいたりする。は
たまた、健康にいいからというアラブ人の言を鵜呑みにしてる人がいたり。
 そういう訳だから、イスラムを知らない人のために、ちょこっとだけラマダーンの
話をすることにしよう。

 そもそもラマダーンとは何か。まず、日本語では断食月と訳される。イスラムで使
われる太陰暦・ヒジュラ歴で、第9月に当たるのが、このラマダーンだ。この期間
中、敬虔なイスラム教徒がコーランの教えに従って断食をする。コーランによると、
妊娠中の者・病気の者・年若き者・旅の途にある者は断食をしなくてよいが、その代
わりに別の機会に断食をしなくてはならない(子供は別だろう)。
 イスラムにおける断食とは、日の出ている間、飲食をしないということ。だから
人々は日の出前に食事をし、日が沈めばまた食べる。

 コーランの書かれた時代においては、貧富の差も激しく、食べ物が手に入らない人
もいた。だからその食べ物の大切さを理解し、共に苦しみを分かち合うため、断食が
行われたのだという。実際、ラマダーン時の食事は貧乏人や旅行者にまで無料で御馳
走が振る舞われる(ところもある)。適度な断食は健康にも良いとされるから、ラマ
ダーンは健康だと主張する意見もある。
 しかし、それは飽くまで昔の話だ。
 現在のラマダーンは、単なるお祭りだ。子供たちはラマダーンが来るのを本当に楽
しみにして、指折り数えて待っている。日本のお正月みたいなものだ。ラマダーンに
なると新しい服を買ってもらえるし、昼間ご飯を我慢すれば、夜には御馳走が待って
いる。普段は夜の外出禁止を言い渡されている女子も、ラマダーンの時ばかりは許さ
れて夜の町へと繰り出すことができる。テレビ番組だって、ラマダーン特別番組が編
成され、笑いが絶えない。
 ラマダーンの御馳走というのも、ただごとじゃない。もちろん家による格差はある
が、とにかく食べる。日の入り(マグリブ)と同時に食べ始め、デザートまでを一気
に食べる。そして、しばらくするとまた食べる。ひどいところでは夜通し食べている
とか。
 夜に起きているものだから昼間は寝る。仕事だって学校だって、ラマダーン時間と
いうのがあって、普段より早く終わるから寝る時間はある。昼間に公園なんかを覗く
と、みんなして伸びているのだ。
 こんな具合だから、人はこの間に太る。これのどこが健康的だというのだろう? 
そう、健康的だったのは飽くまで昔の話なのだ。

 ところで、ラマダーンが始まるのは、太陰暦(*1)なので、日が沈み終わったと きに三日
月が見えるか否かで決まる。ラマダーンの終わりもそう。三日月が見えたら明日から
ラマダーン、三日月が見えなかったら明後日から。三日月が見えたら今日終わり、見
えなかったら明日で終わり。というわけで、ちゃんと三日月を見る日(ルウヤ)とい
うのがある。地方によっては、その日だけですごいお祭り騒ぎになったりする。何に
せよ、その日にならないと分からない。時間にうるさい日本人にとっては困りものな
のだ。

 機会があれば、また別の話をすることにして、今回はこれまで。

(1999/12/03公開分)
 
 

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<注釈>
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太陰暦(*1)

太陰暦のヒジュラ歴は、西暦622年を元年としています。これは、ヒジュラ(ムハ
ンマドとその教友の、メッカからメディナへの移住を指す)の起こった年です。。
一ヶ月は29−30日で、月の数は12。1月1日は、ヒジュラの起こったことを記
念した祭日です。3月12日が預言者であるムハンマドの生誕の祭日、10月1−3
日が断食明けの祭日、12月10−13日が犠牲祭です。12月はメッカ巡礼の「巡
礼月」ですので、それに合わせて羊などを神に捧げる意味で屠るのだそうです。